人気アニメ『ONE PIECE』(ワンピース)の劇場版の最新作で、シリーズ歴代最高興収を公開わずか10日で突破するなど、『ONE PIECE FILM RED』の人気が止まらない。作中屈指の人気キャラ・赤髪のシャンクスの“娘”・ウタが登場するなど、公開前から話題に事欠かなかった本作の封切りから約1ヶ月、ウタ役の名塚佳織とシャンクス役の池田秀一に“ネタバレあり”でインタビュー。ウタというキャラクターについて、あの名シーンの舞台裏や『ONE PIECE』が支持され続ける理由、ウタとシャンクスの“父娘”関係などを聞いた。
■「人を愛するって何なんだろう」ウタとシャンクスの“すれ違い”…人を愛する難しさ
――「シャンクスに娘がいた」というトピックスは、ファンはもちろん、名塚さんや池田さんも聞いたときは驚かれたと思います。お二人はウタというキャラクターをどう見られ、どのような変化を感じましたか。
【名塚】 最初はかわいくて明るい印象とともに大人っぽさを感じていましたが、演じていくにつれて、逆に子どもっぽさが見えてきました。映画でのウタはやらなきゃいけないことに向かっていて強い芯があり、信念を貫き通す意思の強さが見えますが、テレビシリーズでの映画連動回やウタ日記では、愛らしい部分や無邪気な感じなど幼さみたいなものが見えてきた印象があります。
――“父”であるシャンクスを演じている池田さんから見て、ウタはどのような“娘”でしょうか?どのようにシャンクスを演じられましたか?
【池田】 ルフィとウタ、2人の幼い時代も描かれていて、それからいろいろあったというわけですから(笑)。10何年ぶりにウタと再会する時との対比を出すため、その無邪気な時代のウタの印象も大事にしたいと思って演じていました。
――シャンクスからすると難しい面もありますよね。ウタにとって良かれと思ってしたことが、ウタからすると…といった部分もあるのかなと思いますが、そのあたりはどう受け止められたのでしょうか。
【池田】 良かれと思ってというのはそうですが、そのすれ違いというか、ウタはウタなりにという部分もあり、映画を最後まで見ると何とも言えない。そういったある種の誤解のようなものもあり、結局「人を愛するって何なんだろう」って。誤解を乗り越えて何か一つの結末に向かって行くみたいなものが、皆さんに伝わるといいなと思っていました。
■ルフィとシャンクスのバトルシーン、ウタとしては「複雑な気持ち」
――本作には感動的なシーンや印象的な場面がたくさんありますが、なかでもシャンクスとルフィのバトルシーンは胸アツでした。池田さん自身、あのシーンは力が入ったと思いますが、収録時はどのような気持ちで臨んだのでしょうか?
【池田】 アフレコは完璧に画ができている段階ではなかったのですが、絵コンテやカット割を見せていただき、久しぶりのウタとの再会、ウタの暴走を止めているというシーンも雰囲気は把握していました。収録中はルフィ役の田中真弓さんと「完成するとどうなるんだろうね」という感じでしたが、完成した作品を見て「なるほど。こうなるのか」と腑に落ちました(笑)。うまくできているなって。自分で感心しちゃいかんですけどね(苦笑)。
――バトルシーンについて名塚さんも心が揺さぶられたと思いますが、感想を教えてください。
【名塚】 (田中さんと池田さん)お二人の力強さといいますか、迫力がすごい。見ている私からすると、(映画を)ご覧いただいた皆さんと同じようにものすごく熱い瞬間でしたし、とってもカッコよかったです!
――ファンならずとも興奮間違いなしですよね。ただウタ的な目線でいうと、また違った感じ方になると思いますが。
【名塚】 それはもう複雑な気持ちでした。自分のために戦ってくれる、自分のために向き合ってくれるうれしさと、自分ではもうどうしていいかわからないもどかしさみたいな両方があって。2人が歩み寄ってくれればくれるほど少し意固地になってしまい、もどかしい気持ちでしたね。
■ウタを止めに来たシーンで「シャンクスの手のぬくもりを感じた」
――ウタの立場からすると、そういう想いになってしまうのは想像に難くありません。そんなウタは、歌唱やシャンクスとの対峙ほか喜怒哀楽の激しさも印象的ですが、改めて注目して見てもらいたいシーンは?
【名塚】 シャンクスが来て手を止めてくれたシーン。シャンクスの優しさと、ウタの本当はうれしくて抱きつきたい気持ちでいっぱいだけど、もう後戻りできなくて素直になれず、自分の意思を貫きたい気持ちと「なんで今さら」という想いで訳が分からなくなってしまっているあのシーンは、印象に残っています。実際に自分自身が手をつかまれたわけじゃないけど、シャンクスの手のぬくもりを感じたシーンだと思っていて、とても好きです。
――たしかに何度も見たくなる名シーンの一つですね。池田さんとしては、娘のピンチにかけつけ海軍から守るシーンでは、シャンクスが“父親の顔”を見せていて新鮮でしたが、演じてみていかがでしたか。
【池田】 あの場面は「久しぶりに聴きに来た お前の歌を」という言葉で返すのですが、シャンクスの余裕感も見せたかったので、あまり切羽詰まっていない言い方をしました。計算したわけではありませんが、上手くいきましたね(笑)。実はああいうシーンは出来上がって見ないとわからない部分もあり、もう一回やってほしいと言われてもできないかもしれません。
――シャンクスの“父親”ぶりはどう感じられましたか?
【池田】 う~ん…シャンクスに娘がいるのは似合わない。僕も経験がないので、そういう意味では良かったのかなとも思います。僕自身、似合わないから(笑)。
【名塚】 同じ感覚だったのですね。シャンクスのちょっとぎこちない感じもよくて、特にウタとの出会いのシーンもどうしていいかわからずワタワタするのがかわいい(笑)。ルフィに対する向き合い方も幼いころのウタに対する向き合い方も、お父さんとはまたちょっと違う。ウタはお父さんのように慕っているけど、シャンクスからすると育ての親というか。いろんなことを教えてくれるけど「自分たちで歩んで行けよ」という感じもして、そこも良い距離感だなと思います。
■シャンクスの新たな一面は「割りと気に入っている」
――映画も大ヒット上映中で、原作も「最終章」に突入して話題になっていますが、世界中の方から愛されている作品の魅力はどこだと思われますか。
【名塚】 キャラクター1人1人がしっかり描かれていて、生き様がカッコいい。それぞれ悩みを抱えつつも信念を貫き通すところや、仲間を大切にするところは憧れる世界だなって。私もこの一味の一員になりたいと思わせてくれる作品です。
――どのキャラクターにも、しっかりバックボーンが用意されているのがいいですね。
【名塚】 いろんな面で自分と重なる部分があって、キャラクターたちがそれをみんなで乗り越えていく姿を見ると「自分も頑張らなきゃ」と思わせてくれる。誰か困っている人がいたら手を差し伸べたいと自然に思わせてくれるし、自然に気持ちを熱くしてくれるところが素敵だなって思います。
――長年、作品が支持され続けることに驚きもありますよね。
【池田】 テレビアニメが始まった時、23年後にこういうふうになっているとは想像していませんでした。最近、初期のころのものを見たら(アニメで)シャンクスは4話に出てくるのですが、今回『FILM RED』をやらせていただき、ずいぶん年月を感じました。
――クライマックスに向けてシャンクスの出番も増えてきそうですね。
【池田】 劇場版が15作目で僕も何回か出ましたが、実は舞台あいさつは今回の映画が初めて。こんな晴れ舞台を迎えるのは20何年経って初めてです。思いがけずシャンクスも活躍の場をいただいて恐縮していますが、劇場版に出てくるのはこれが“最後”でしょうね!という気も(笑)。“最初で最後”みたいな思いでやらせていただきました。
――ファンはまだまだシャンクスの活躍に期待していると思います!
【池田】 ウタを通して新しいシャンクスの一面も見ていただけたら、皆さんにそのメッセージが伝われば、それが幸いだと思います。今作のシャンクスの姿は、とても気に入っています。
■映画情報
シリーズ15作目、原作者・尾田栄一郎氏が総合プロデューサーを務める『ONE PIECE FILM RED』は、世界中が熱狂する歌姫・ウタが初めて公の前に姿を現すライブが行われる、とある島が物語の舞台。素性を隠したまま発信するウタの歌声は“別次元”と評されるほどで、そんな彼女の歌声を楽しみにきたルフィ率いる麦わらの一味たち、海賊、海軍、ありとあらゆる世界中のファンが会場を埋め尽くす中、ウタが“シャンクスの娘”という衝撃的な事実の発覚で物語の幕が上がるストーリー。
取材・文:遠藤政樹/編集:櫻井偉明
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