何と「パリの恋人」お相手はオードリー・ヘップバーンでした。
オードリーの父親はヒトラー台頭時、ファシズムに共鳴して離婚、10歳のときに祖父のいるオランダへ移住し、6年間バレエの特訓を受け15歳のときには有能なバレリーナになっていたそうです。叔父や従兄弟が目の前で銃殺されたり、オードリーも栄養失調、貧血症、呼吸困難になるなど重体で入院するなど、その清楚なイメージからは想像もできないほど厳しい青春時代を送っていたとは、意外ですねえ。しかもオランダの病院でボランティアで看護婦をしていたなんて知りませんでした。
そう言われてみると、ファッショナブルでロマンティックなオードリーからは、何故か他の女優さんにはない慈愛の眼差しを感じることがあるのは、青年期の辛く苦しい経験が大きく影響しているのでしょうか…?。それとも私の考え過ぎか…?。晩年、飢えに苦しむアフリカの難民支援活動に精を出してしたのも、自身の苦しい飢えの経験があったからこそ、他人事として放っておけなかったのでしょうね。
1981年、82歳のフレッド・アステアにアメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI)の生涯功績賞が贈られたけれど、その授賞式で挨拶に立ったオードリーはアステアへの尊敬の念を隠しませんでした。アステアと踊ることは全ての女性の憧れでした、自分もその一人になれて幸せだった、ピンク・ソックスをはいたお洒落なアステアの手が私を優しく導いてくれた…、と絶賛していました(確かそんな内容の挨拶だった記憶が…?)。
アステアとオードリー、ダンサーや女優としての美意識もさることながら、厳しい経験を乗り越えて人にやさしい心を常に持っていた、とんでもない人格者のように見えて仕方ありません。
この「He Loves and She Loves」が歌われるシーン、おとぎ話のような色彩と景色の中での歌と踊り、美しいですねえ。スタンリー・ドーネン監督、実にセンスがいいですね。「恋愛準決勝戦 」も「雨に唄えば」もこの監督さんでした。「シャレード」でもオードリーを綺麗に撮っていましたねえ…。
ところで、この映画でもジョージ・ガーシュインが音楽でした。20年も前に亡くなっているのに、やはり、いいものはいいから使わずにはおれないんですね。
WACOCA: People, Life, Style.