紀伊田辺駅から蟻通宮(ありとおしのみや)まで #和歌山 #神社 #田辺市
紀伊田辺の駅を出ますとね、町の空気がもう、夕暮れに染まっております。西の空に陽が落ちかけて、町家の瓦屋根まで赤うすく照らしている。
その道を、そぞろ歩きますと、やがて現れるのが小ぶりながらも姿のよろしい、蟻通神社でございます。
鳥居をくぐりますと、柱の影が長うのびて、まるで参る人を奥へ奥へと誘うよう。石段は決して高うないのですが、踏むたびに、かすかな夕風が衣の裾を揺らす。
境内に入れば、社殿の屋根にあたる斜陽が、朱と金とをほどよく混ぜて、そこに漂うのは、どこか懐かしき秋の気配。小さき社でありながら、品があり、ひとつひとつが、しんと澄んだ趣を見せるのでございます。
町のざわめきは遠のき、ただ蝉の声が間遠になって、代わって虫の音が静かにあたりを満たす。――こうなりますと、まるで神さまにだけ残していただいた、ひとときの夕暮れでございましょう。