【秘境:タウシュベツ川橋梁】十勝山中糠平湖畔に浮きつ沈みつ儚さを醸し出す旧国鉄のアーチ
本日は、滅びゆく運命が決定づけられている タウシュベツ川橋梁を訪れます。 元国鉄士幌線が帯広と十勝三俣を 結んでいた時代の遺構です。 古代ローマ遺跡を連想させるような 美しいアーチの連続が魅力です。 場所は北海道十勝地方の北端近く、 深い森に抱かれた糠平湖畔にあります。 一年の半分が水没し、真冬には氷漬けと なる過酷な地です。 そのため、年々確実に崩壊が進んでおり、 保存措置も行われておりません。 時を待たず、アーチ部分が崩れて なくなる可能性が高いと言われています。 どうしても間近で目に焼き付けて おきたいと思い、訪れることにしました。 糠平温泉に来ております。 今こちらです。 そして糠平湖があります。 今日の目的はタウシュベツ川橋梁というところです。 かつてここに国鉄が走っておりまして、 このような感じで そして橋梁の跡がですね、 ここに残っているということなんですね。 この橋梁ですね、実は個人でも 行けないことはないんです。 タウシュベツに行くためには、閉鎖された 林道を、鍵を開けていかないといけなくて、 その鍵の貸し出しっていうのが、 されているんですね。 で、それがかなり南側に下った、 上士幌町の道の駅まで行って、鍵を借りて、 その林道がですね、糠平湖の北の端から 回り込んでるんですね。 タウシュベツの方に。 なので、かなり往復でロスが出てしまうというのと、 そもそもその鍵の貸し出しがですね、 1日の数量が限定されておりまして、 特にこの夏場にはかなり前から鍵を 借りるための予約をして おかないとですね、いけないと。 夏の間はすぐ予約がいっぱいになって しまうということで、かなりハードルが、 高いということになります。 そして本日、実はこちらのツアーですね、 タウシュベツ川橋梁見学ツアーというのに 申し込んでおります。 こちらはNPO法人東大雪自然ガイドセンター というところが主催しているツアーです。 あちらにですね、建物が見えますが、 糠平温泉文化センターという建物の中に、 先ほど申し上げた東大雪自然ガイドセンターという NPO法人さんが入っておりまして、 ここからツアーが出発ということです。 実はもう一つの難関があったんです。 毎年この夏の時期というのは、 糠平湖の水の水位がかなり上がってですね、 旧タウシュベツ川の橋梁が、 水没してしまっていることが、多いらしいんですね。 今年は幸いのことに水位が上がってなくてですね、 橋梁が水没してしまうという状況は ないということですね。 視聴者の皆様、前置きが長くなって しまいすみません。 ツアー出発前後に、このすぐ近くにある 上士幌鉄道資料館に立ち寄ってみることを お勧めします。 こちらは数年前に訪問した際に、敷地内の 旧国鉄の遺構を利用して復元された 線路や、当時使われた貨物列車の展示が ありましたので撮影したものです。 麓の上士幌駅から糠平湖のさらに先の 十勝三俣駅までは、 1939年昭和14年に開通し、この時に タウシュベツ川橋梁も完成しています。 糠平ダムが1955年昭和30年に完成した際、 タウシュベツ川橋梁の前後の区間が、 水没することになり、 代わりに糠平湖の西側に線路が付け替えられました。 タウシュベツ川橋梁が使われたのは、 わずか16年の短い間となりました。 こんにちわ。 ここではトロッコ乗車体験もできます。 東大雪高原鉄道と名付けられているようです。 出発前に長靴をお借りします。 北側から糠平三俣林道に入り、 こちらのゲートの鍵をNPO法人の ガイドの方に開けていただきます。 ヒグマの出没情報は、NPO法人、地元警察、 上士幌町役場で共有し、この掲示板で 公開されています。 ちょうど訪れた4日前にもヒグマが目撃されていました。 林道の右手に、かつての士幌線の跡が 並行して走っています。 その跡には、白い布が結ばれた棒が 点々と立てられています。 士幌線は人の輸送というよりは、 木材の輸送のために敷設されたそうです。 主にエゾマツ、トドマツが運ばれました。 当時の終点、十勝三俣には、 1000人もの林業従事者とその家族が 住んでいたといいます。 終戦前までは軍需産業に、その後は 復興のための資材として需要が高かったそうです。 しかし、その後、カナダなどの木材が 輸入されるようになると、価格面での対抗は、 難しく、林業は急激に衰退してしまいました。 駐車場からはタウシュベツ川橋梁まで 約200mほど旧士幌線の線路跡を歩きます。 ここは2008年にJRのポスターで タウシュベツ川橋梁が紹介されたことから 人気に火がつきました。 かつてはこの林道にはゲートがなく、 誰もが車で自由に入れたそうです。 この狭い林道に車が押し寄せ、脱輪などの 事故が多発したそうです。 ピーク時には1日に500台という記録が 残っているそうです。 そのため林道は施錠され、許可車だけが 通れるようになりました。 これらの木は、過去の台風などの時に 運ばれてきた流木です。 糠平湖の水位がここまで上昇した証拠です。 着きました。 約一時間、自由行動ですが、ガイドの方の 近くを歩いた方が様々な情報を お聞きすることができ、 より充実感が得られると思います。 ダム湖を作る際に50万本の木を伐採したそうです。 今も無数の切り株を 渇水時には見ることができます。 対岸にはタウシュベツ展望台があります。 林道への侵入が規制されたことの 代替として、対岸にタウシュベツ展望台が 築かれることになりました。 この展望台は、糠平湖の西側を通る 国道273号線から手軽に行くことができます。 視聴者の皆様の中には、名前は聞かれたことの ある方、あるいはこの橋梁の姿を どこかで見た記憶のある方が多いと思います。 実際に訪問された方もいらっしゃると思います。 このタウシュベツ川は、標高差600mを 一気に流れ下ってくる急流で、この地域では 暴れ川として知られているそうです。 NPO法人さんが自然木を利用した杖を 用意してくれていました。 一本拝借して橋梁の周りを一周します。 まずは右手の湖側に降りて、 二手に分かれた川を渡ります。 対岸の土手を登り、今度は川の上流側に 降りてこちらに戻ってきます。 かつてはこの上に線路が敷かれていました。 このような心もとない橋の上を、超重量級の SLが満杯の木材の積まれた貨車を 引いて行き来していたとは想像しがたいですよね。 橋梁のアーチ部分は、 いつ崩れてもおかしくない状態なので、 アーチをくぐり抜けることは禁止されています。 通行禁止区域にはロープが張られていました。 歩きやすい場所には、 要所要所にピンクテープの目印がありました。 奥に見えるのは、名峰ニペソツ山。 大雪山の中の一峰ですね。 岳人憧れの山ですが、 日帰り登山は困難を伴います。 これらの切り株はミズナラの木が多いようです。 こうして見ると、この橋の儚い運命が ひしひしと感じられます。 特に中央部のアーチ部分だけが残っている 箇所は、いつ崩れてもおかしくない状況です。 残念ながら、このタウシュベ川橋梁上を 走る車両の写った写真や映像は 今のところ見つかっていないそうです。 もし万一、視聴者の皆様の中に フィルムが残っている方がいらっしゃったら、 それは大スクープです。 川床は一部深い泥が溜まっており、 長靴が必要である理由がここでよくわかりました。 水位が橋梁の麓まであれば、 現物のアーチと水面に映し出されたアーチとが 円を描くように撮影できます。 ガイドの方にこのような状況でも水たまりを 利用して撮影できると指南いただきましたが、 うまく撮れませんでした。 もともと木材を切り尽くすまでの短い期間の 利用が想定されていたため、設計段階から 数十年程度の耐用年数を前提に 作られたようです。 この土台の柱部分には鉄筋は入っていないとのこと。 国家総動員法施行前後で、鉄は軍備に 優先して回されたため、鉄筋は上部両側の 壁部分にのみ使用されていました。 使用されたコンクリートも質は良いものではなく、 砂利もこの周辺で現地調達されたものだとのこと。 したがって雨水が染み込みやすく、 冬季にはそれが誇張して劣化を早めているそうです。 2003年に起きた十勝沖地震で、 このアーチ橋も大打撃を受け、橋梁上の両側を 覆っていたコンクリートの壁が何箇所か崩れ、 中に敷き詰められていた丸石が大量に 落ちてしまったようです。 湖水近くには水鳥の大きな足跡。 何の鳥でしょう。 視聴者の皆様で野鳥に詳しい方が いらっしゃったら教えてください。 川魚が群れて泳いでいました。 ガイドの方によると、ワカサギ、ウグイ、コイなどの魚が 生態調査のために放たれているそうです。 冬に湖面が凍結すると、対岸の南側に ワカサギ釣りのテント村ができるそうです。 冬であればヒグマに襲われる心配もなく、 誰でも無料で釣りが楽しめるようです。 このような流れも、長靴で容易に バシャバシャと渡ることができました。 滑るようなことはなかったです。 人が多く訪れる時期で、水量も多くは なかったので、条件が良かったのかもしれません。 よく見ると、橋脚の足元には崩れた コンクリートの破片がうず高く積もっています。 南側の土手に登ります。 踏み跡がありますが、結構この斜面は 滑りやすかったです。 石垣の崩壊した後でしょうか。 これらの石もこの周辺で採石したものが、 利用されているそうです。 この橋は、北海道遺産の 「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」のうちの 一つに数えられていますが、その他には公式に 文化財や史跡に指定されているわけではなく、 単に旧国鉄が所有を放棄した廃墟という 位置づけだそうで、 保存の対象とはなっていません。 橋の南端です。 当然渡れません。 上部だけこのように鉄筋が使われています。 先端が折り曲がっていますが、冬季には 氷の下に沈んでいることが多く、 水と氷の作用によって自然と このような形になっているのだそうです。 この糠平湖を管理している電源開発さん、 上士幌町役場、地元民の合意として、 将来へ向けての維持管理は行わないことに 決定しているとのことです。 その決定に至った背景には、安全確保の 観点や立地、維持管理の困難さ、地権者の 意向など、さまざまな要素が絡んだと思います。 今度はタウシュベツ川の上流側に降りてきました。 こちら側からは、先ほどの西側から眺めるよりは、 はるかに崩壊が進んでいるように見えます。 橋の上には小さな木が生えていますが、 白樺の木です。 白樺は、荒れ地にいち早く芽生え、 成長が早いことで知られています。 このタウシュベツは、奇しくもアイヌ語で、 「カバの木の多い川」という意味です。 「ベツ」はアイヌ語で「川」の意味なので、 タウシュベツ川というのは、本来であれば、 「川」が余計ですよね。 この川の上流数十メートルのところで、 今年に入ってヒグマが川を横断するのが 目撃されているそうで、あまり川上には 踏み込まないよう、ガイドさんから 注意喚起がありました。 画像ではかなり急流で、瀬音も激しく 感じられるかもしれませんが、長靴で楽々 渡ることができます。 激しく上部の壁や詰石が崩落しているのがわかります。 最も崩落が激しい中央部のアーチ状の 構造物だけが残るこの部分を眺めると、 余命いくばくもない儚さを嫌が上にも感じます。 近い将来朽ち果てるであろうことを 認識した上で、あえて自然に任せているということです。 したがって、将来ここへのアクセスを 整備したり、駐車場を設置したりすることは、 行われる見込みはありません。 電源開発さんは、本州の他のダムを建設する際に、 地元の意向を聞き入れ、水没予定地に あった銘木の桜の木の植え替えを 費用負担を惜しまず実施した実績があるそうです。 ガイドさんは、地元の意向に寄り添う 姿勢のある企業であると強調されておりました。 一方で上士幌町は、この糠平湖周辺に 数多く残る他の旧国鉄橋梁を十個以上 買い取って維持管理しているそうです。 それらの場所には国道273号線沿いに 案内板が設置され、駐車場も設けられて いるので見学することができます。 中央の黒い石は黒曜石です。 鋭い刃物のように割れるので、旧石器時代には 鏃などに加工され、狩猟に利用されました。 この地では別名十勝石と呼ばれるそうです。 一周して戻ってきました。 一年でも長く、耐えてほしい。 さて、ここからは数年前に撮影した 東大雪の道の写真を紹介します。 1930年に糠平ダム建設後に付け替えられた 旧士幌線の跡地を利用した歩道です。 視聴者の皆様、今はかろうじて 繋がっていますが、明日にも崩落するかもしれません。 専門家によると、一箇所でもアーチが 崩れると、連続して複数箇所が一気に 崩れる可能性もあるようです。 訪れるなら、今。 善は急げ。
タウシュベツ川橋梁は、旧国鉄士幌線の遺構です。1939年から1955年までの間、主に木材輸送に使われました。
現在は、自然の成り行きに任せ、かろうじて原型を留めているアーチ型が、いつ崩れてもおかしくない状況となっています。
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【タイムコード】
◆上士幌鉄道資料館 : 3:21
◆タウシュベツ川橋梁 : 7:17
◆東大雪の道 : 17:35
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【秘境:タウシュベツ川橋梁】
◆古代ローマ遺跡を彷彿とさせる雰囲気のある、アーチ橋です。帯広と十勝三俣を結んだ旧国鉄士幌線は、この他にも数多くのアーチ橋を残しておりますが、その中でも、この橋梁の美しさは際立っています。
◆糠平湖は、1955年に完成したダム湖です。水位の変化が激しく、真夏のこの時期以降は、水没していることが多いようです。冬の間は、湖面が凍結し、この橋梁も氷漬けになることもしばしばだそうです。
橋の建設に使われたコンクリートは、質が決して高くはなく、水が沁み込みやすいため、氷結すると膨張により、内部から崩壊しやすくなるようです。
立地の悪さや、水没を繰り返す環境条件などから、特別な保存措置は行われておりません。
◆この場所に行く方法は、動画で紹介したNPO法人のツアーに参加する他、車の場合には、自ら林道ゲートの鍵を借りて、向かう方法もあります。なお、ヒグマ出没の危険があるため、徒歩での通行は禁止されております。
動画で紹介している糠平湖対岸の展望台は、西側を走る国道273号線の駐車場から徒歩数分で行くことができます。
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【チャンネル】
@歩いて旅するにっぽん
・有名ではない
・人里から離れている
・体力も必要
・情報も少ない
それでも、その場所を訪れれば、
有名観光地に匹敵する、あるいはそれ以上の感動が得られる場所を
徹底リサーチして厳選の上紹介しています。
◆運営会社:アスタービジョン株式会社
ウェブサイトはこちら
https://astervision.co.jp/
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【撮影機材】
◆GoPro HERO10 Black
◆iphone13Pro
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【編集ソフト】
◆PowerDirector 365
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動画の一部で、地理院タイルに地名・アイコン等を追記した画像を利用して配信しています。
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1 Comment
薄皮一枚とアーチだけが一応鉄筋コンクリートで中に栗石を詰めた、モナカみたいなつくりなんですね。厳しい時代の要請を感じます。逆に軍遺構だとみっしり頑丈すぎるコンクリの質感だったりして、それはそれで感じ入るものがあります。