ボイスドラマ「美女と天狗〜奥飛騨温泉郷・上宝の平湯温泉にある天狗橋と天狗岩の伝説?」
昔昔君が生まれるよりずっとずっとずっと昔この奥田門戦号上宝には天狗が住んでいました。天狗って知ってるか? [音楽] うん、知ってるよ。 顔が赤くて鼻がこんなに長い妖怪でしょ。 妖怪?今間違ってはいないけど。 妖怪じゃないの? 妖怪っていうよりもどっちかって言うと神様に近いかな? 神様?ああ、だから神隠しとかするんだ。 なあ、そうかもね。でもほら都のクラマ寺とか栃木の古神社とかは有名でしょ。 ふーん。知らないけど。 天狗って元々は中国から伝わった言葉なんだよ。天かける犬と書いて隕石や流れ星のことだったんだ。 すごいしずるさんもしり 大人を馬鹿にするんじゃないの?今日はね、天狗の嫁入りというお話だよ。 やった。 道の駅奥田温泉号上で毎月1回開催される 昔話の読み聞かせ。奥田温泉号上の施設が 持ち回りで担当している。今月は新た温泉 のうちの施設がストーリーテラーで私が 読み聞かせするってわけ。 昔仕事でよくプレゼンをしてたから人前で 喋るってのは嫌いじゃないんだけど。 今日は初日で平日だから第1部のお客さん はたった1人。高値村から来た17歳の 高校生、ま君なんでも共同試験研究部の 部長なんだって。部員は1人だけど。あー 、そうですか。 今日の話実は私の捜作フィクションなんだ 。平温泉にある天狗岩や天橋に インスパイアされて作った物語。ほら、 さっきも誠君が言ってたじゃない。天狗 って妖怪だって。神隠しとかあまりいい イメージじゃないよね。私が天の弱だ からってわけじゃないけどストーリーは そんなイメージを払拭するもの。 なんとファンタジー作品なんですが、 ちょっとしずるさん早く続き教えてよ。 ああ、ごめん、ごめん。じゃあ続きね。その村には 20 年前から天狗が住んでいました。天狗に対して村人たちが 1番恐れるのは神隠し。 今まで何度も子供や娘が天狗にさらわれて いたのです。そのため毎年1回秋祭りの時 に天狗に一柱を1人捧げていました。人柱 となるのは村の最高例の老人。娘や子供の 格好をして人柱になっていたのです。 心が今年人柱になるのは17歳の少女 この春ことの両親は山崩れに巻き込まれて 命を落としました。それからは天外孤独に 自望時期となり人柱として名乗り出ました 。 村人たちはことを一生懸命説得しますが 無駄でした。 は人柱として関冷通り天狗橋を渡り、天狗 岩へ登っていきます。 岩の上に寝転ぶと目を閉じました。 横になったことを包み込むようにいきなり 風が吹きました。 目を開けるとそこは空の上。 天狗岩は傘ヶの雲の上に浮かんでいました。 何これ? その時また強い風が吹いてことを吹き飛ばします。 あまりの衝撃にことは気を失いました。それからどのくらいの時間が経ったのでしょう?どこかから声が聞こえてきます。 うん。情けない。 え、 驚いて目を開けるとそこには今まで見たこともない怪物が。ミたは 2 軒近くあり赤い顔点まで届きそうな長い花。ああ、 2件というのは大体34mくらいね。 うわ、 またかよ。 3 回目に気づいた時、こは布団の上に寝かされていました。 ここはどこ? 展開です。 え?あなた誰?透明人間?どこにいるの? 目の前にいますよ。姿を見せてもいいけど、また気絶しないでくださいね。 そう姿を表したのは何人?え、 何ものカラス天狗。山節の姿にカラスの口ばを持つ天狗の眷属です。 [音楽] 気絶したいけど何なの?一体 [音楽] 私たちはオー天ングの眷属カラス天狗です。 私はどうなるの? まあ、オーケングの飯使いってところでしょうか。何それ?冗談じゃない?飯使い?掃除とか選択とかするの?私 [音楽] 1人ぼっちになって1 人で水選択するのが虚しくて、こんな生活もう嫌って思って読の国に行くつもりだったのに。 そんなこと言われましてもあなた自身で選んだことですし、 あんたはなんでそんな姿をしているの?なんでって言われましても山の神様のバというかなんというか 山の神様 はい。大天狗も我らカラス天狗も山の神様の罰でこんな姿になりまして めんどくさそう。 とにかくあなたも運命だと思ってお仕事に専念してください。 イエーイよ。つまないから帰る。 そんな無理ですって。 いいわ。その大天狗にかけ合ってみるから。 またそんなたいな。 なんていうやり取りをしていると山の上の空が一点にわかに書きくもり、辺り一面が夜の闇に。 ちょっと何すんのよ。 いや、これは私どもではありません。 じゃあ大天狗の仕業。 いえ、大天狗でもありません。 [音楽] じゃあ何? アラブル山の神奇です。 奇神。私たちどうなるの? 体をバラバラにされますね。 う、冗談じゃないわ。 運が良ければ腕の 1本2本くらいで済むかも。 勘弁してよ。 いやあ、もう遅いし。うわ、 お先に失礼い。 ちょっと、ちょっと逃げないでよ。 頑張ってください。もうまいっか。これでこの世とおさばできるんならなんかつまんない人生だったな。 ことが諦めて目をつった時、雲の中から大天狗が現れます。大天狗? 天狗は奇心に向かって立ち肌かった後、この方を振り返りました。 あ、 大きな2 本の腕でこを包み込み、奇心の攻撃を背中で受けます。背中からは知武器が飛び散る。雲の表情。 [音楽] それでも美田にしません。 なんかそんなに怖い顔じゃないかも。 まるでバリアのように天狗の周りの空気が歪んで見えます。知らず知らず。でもまともやことは気を失っていました。気がついたのはだいぶ後になった頃。 [音楽] あれ?あれ? は今回も布団に寝かされていました。ただ 1 つ違ったのは目の前で大天狗がこちらを向いて座っていること。でも目は開いていません。あを組み大きな体から覗き込むような格好で目を閉じています。 [音楽] 眠ってる ことはそっと起き上がり布団から抜け出して雲の上を歩き出します。 もう起きて大丈夫なんですか? てめカラス1人だけ逃げ上がって。 いやいやいやだって私カラスなんですから。 意味わかんないこの卑怯者。 しょうがないでしょう。私は騎士には叶わないんだから。 いつか地獄に送ってやる。 まあまあ、そう興奮なさらずに。 まあいいわ。いいけど 1つ教えなさい。 何ですか? 天狗って一体何者? そ、それはな んで言えないの? だって天狗に怒られるから。 じゃあんが天狗を裏切って逃げたってちくってやるから。 そんな別に天狗裏切ってなどいませんよ。 [音楽] 逃げたでしょ。眷属のくせに。 天狗がどう思うか私の話次第かもね。 わ、性格悪 そうよ。悪い。 でもなんで天狗のことを知りたいんですか? なんか天狗が私のことを守ってくれたみたいだったから。 そりゃそうでしょうよ。 だからなんでよ。 はあ。もう仕方がない。言いますよ。天狗はね、元々人間だったんです。 [音楽] え、 それはもう優秀な主元者、業者とも言うんですがね。 行者、行人関係ないか? いや、関係あるでしょう。あそこは遠の業者の関係だから。 ま、そんなことどうでもいいけど、あのですね、天狗の場は上の傘ヶ食瞑想といった過酷な修行を積んで促進物を目指していたんです。 [音楽] なんとストイックな ところが天狗は優秀であるがために己の力をかしんで山の神を侮辱する言葉を口にしてしまいました。 [音楽] それで山の神の怒りを買い世にも不気味な姿に変えられてしまったのです。 [音楽] そこまで不気味じゃないと思うけど。 え、そうですか? いやいや、そこ重要じゃないから続けて。 はい。山の神の祟にあったのは天狗だけではありません。仲間の主元者たちもカラスに変えられてしまい、天狗の眷属として生きるしかなくなりました。 [音楽] それが私たちカラス天狗です。 呪いを解く方法はないの? あることはあるんですが、 何を? なかなかに難しくて。 だから何なの? 呪いを解くには天狗が誰か 1 人の人間を心から愛し、その愛を受け入れてもらうこと。 [音楽] ああ、そりゃ でしょ。 己の姿を弾ている天狗は人から愛されることなどありえないと考えちゃってるんだす。 別にはじることないのに。 え、本当にそう思ってるんですか? だって眠ってる顔じっくり見たけどうん。結構整ってる。イケメンじゃない? [音楽] これはいけるかも。ですね。 だからどうすればいいの? 天狗に愛を伝えてください。 それは無理。 え、どうして? だって別にまだ愛してるわけじゃないもの。 なんかよくわかんないです。 私もよくわかんない。 そんな拉チのあかない話を続けているうちにまたしても黒く雲が現れました。 きき来た。自信だ。 [音楽] ちょっとまた逃げるつもり? はい。さよなら。 こんば。まあいいわ。私 [音楽] 1 人でも戦ってやる。バラバラになんてされてたまるもんか。 しかし人間の力で騎士に叶うはずはありません。ことの体は金縛りに会い動けなくなりました。再びモードが支配し始めた時逃げろ。 天狗がまたの前に立ち肌かります。こは全身の力を振り絞って金縛りに荒がいました。 [音楽] 嫌だ。逃げない。 なんだと?天狗の前に回り込み騎士の力を受け止めようとします。バカか。お前は [音楽] バカで結構。 何? 村にいる時は生きていても仕方ないって思ってた。 でもあんた天に助けられてそんな考え吹き飛んだわ。私やっぱり行きたい。もう一度人間の世界に戻って人生をやり直したい。 そうか。天狗はことを抑え込み自分が奇心の的になります。それでも前のように普通の表情ではなく穏やかな顔でした。 [音楽] まるで小さく微笑んでいるように少しだけ 広角を上げてそのまま消えていったのです 。 ことが気がついた時、そこは天狗岩の上、 何人かの主元者たちが顔を覗き込んでい ました。え、ひょっとしてあんたたち はい。 とカラス天狗です。見渡すと主元者の横には笑と今まで人柱になっていた老人たちもいます。 [音楽] なんで山の神の呪いが解けたってこと? その世ですね。 じゃあ天狗は バラバラになって消えていくのを見届けました。 そんなどうして 愛していたのは天狗の方だけであなたはそうでもなかったってことじゃないでしょうか? [音楽] 嘘?そんなことない。絶対違う ことは天狗岩から降りて天狗橋の方へ走り出しました。すると橋の向こう岸に誰かが立っています。 ことが駆け出すと同じ速度で向こうもかけてきます。橋の真ん中で出会った。 生きてたのね。 ああ、そのようだ。 これからどうするの? 分からない。 20年ぶりにこの世界に戻ったから。 とにかく行きましょう。 どこへ? 私の家。それでこれからどうするか考えればいいじゃない? [音楽] そうだな。 手をついで。 ああ、 もう話さないで。 分かった。 こうして天狗とことは末え長く結ばれたのでした。おしまい。 どうだった?ま君。 うん。まあまあ面白かったかな? [音楽] そりゃよかった。 どこかで聞いたような話だけど。 え、ねえ、しずさんに聞きたいことがあるんだけど、 なんだ? 天狗って人間になる前も人間に戻った後も名前はないの? あるよ。 え、な、何ていう名前? 聞きたい。 うん。 しずって言うんだ。 え、じゃあシルさんって天軍なの? さあ、どうかな? もうまた来るからそん時本当のこと教えて。 いいよ。 今度はいつ? そうだな。冬な。 絶対また来るからね。 ああ、おいでおいで。冬の奥田温泉上も最高に素敵だから。 ずるいなあ。 の奥日だばっかり。高値にも来てよ。 なあ、行くよ。 約束だよ。 なあ、約束だ。 指切った。 [音楽] 自分より人回り小さな少年の指と約束をして私たちは別れた。うん。確かに冬の高値も行ってみたいかな。初下の空は少しだけ高い雲が傘ヶにかかっていた。 [音楽]
愛は呪いを解く鍵となるのか。
奥飛騨の伝承「天狗岩」と「天狗橋」をモチーフに描かれる、幻想的で切なくも温かい“嫁入り譚”。
親を亡くし、絶望の中で人柱となった少女・箏と、山の神の怒りによって姿を変えられた大天狗。二人の出会いは、呪いと運命を変える大きな転機となる──。
現代の高校生・マコトとストーリーテラー・シズルの会話を通じて語られる、どこか懐かしくて、新しいファンタジー。終盤に訪れる“静かな奇跡”に、あなたもきっと心を奪われることでしょう。
【ペルソナ】
・シズル(35歳)=道の駅 奥飛騨温泉郷上宝のストーリーテラー(CV=日比野正裕)
・マコト(17歳)=高根町の高校生。郷土史研究部=部員1名の部長(CV=山﨑るい)
・箏(こと=17歳)=伝承の中で天狗に嫁入りする美女(CV=山﨑るい)
・天狗(年齢不詳=35歳)=奥飛騨温泉郷上宝に住む天狗=もののけ(CV=日比野正裕)
【参照:天狗岩/奥飛騨温泉観光協会】
https://www.hirayuonsen.or.jp/article.php?id=10170
<プロローグ/道の駅 奥飛騨温泉郷上宝>
◾️SE/奥飛騨温泉郷の環境音
「むかぁし、むかし。
君が生まれるより、ずう〜っとずっとずっとむかし。
この奥飛騨温泉郷・上宝には天狗が住んでいました」
「(ゴクッ)」※唾を飲み込む音
「天狗って知ってるかい?」
「うん。知ってるよ。
顔が赤くて、鼻がこ〜んなに長い妖怪でしょ」
「妖怪?
まあ、間違ってはいないけど・・」
「妖怪じゃないの?」
「妖怪、っていうよりも
どっちかって言うと、神様に近いかな」
「神様!?だから神隠しとかするんだ」
「ああ〜。そうかもね。
でもほら、京都の鞍馬寺とか栃木の古峯神社(こぶじんじゃ)とかは有名でしょ」
「ふうん。知らないけど」
「『天狗』って、元々は中国から伝わった言葉なんだよ。
天(あま)かける狗(いぬ)と書いて、隕石や流れ星のことだったんだ」
「すご〜い!シズルさん物知り〜」
「大人をばかにするんじゃないの。
今日はね、『天狗の嫁入り』というお話だよ」
「やった!」
道の駅 奥飛騨温泉郷・上宝で毎月1回開催される「昔話の読み聞かせ」。
奥飛騨温泉郷・上宝の施設が持ち回りで担当している。
今月は、新穂高温泉の、うちの施設がストーリーテラー。
で、私が、読み聞かせするってわけ。
まあ、昔、仕事でよくプレゼンをしてたから、
人前でしゃべる、ってのは嫌いじゃないんだけど。
今日は初日で平日だから、第一部のお客さんはたった1人。
高根村から来た17歳の高校生マコトくん。
なんでも、郷土史研究部の部長なんだって。
部員は一人だけど?
そうですか〜。
今日の話、実は私の創作、フィクションなんだ。
平湯温泉にある、天狗岩や天狗橋にインスパイアされて作った物語。
ほら、さっきもマコトくんが言ってたじゃない。
天狗って妖怪だって。
神隠しとか、あまりいいイメージじゃないよね。
私が天邪鬼だから、ってわけじゃないけど、
ストーリーはそんなイメージを払拭するもの。
なんとファンタジー作品なんですが・・
「ちょっとシズルさん。早く続き、教えてよ」
「ああ、ごめんごめん。じゃあ続きね」
<『天狗の嫁入り』シーン1/人柱>
◾️SE/村の雑踏
「その村には20年前から天狗が住んでいました。
天狗に対して村人たちが一番恐れるのは、神隠し。
今まで何度も子供や娘が天狗にさらわれていたのです。
そのため、毎年1回、秋祭りのときに、天狗に人柱をひとり捧げていました。
人柱となるのは、村の最高齢の老人。
娘や子供の格好をして、人柱になっていたのです。
ところが今年、人柱になるのは、17歳の少女、箏(こと)。
この春、箏の両親は山崩れに巻き込まれて命を落としました。
それから箏は天涯孤独に。
自暴自棄となり人柱として名乗り出ました。
村人たちは箏を一生懸命説得しますが、無駄でした。
箏は、人柱として慣例通り天狗橋を渡り、天狗岩へ登っていきます。
岩の上に寝転ぶと、目を閉じました。
<『天狗の嫁入り』シーン2/箏と天狗>
◾️SE/深い山中のイメージ
横になった箏を包み込むように、いきなり風が吹きました。
目をあけると、そこは空の上。
天狗岩は笠ヶ岳の雲の上に浮かんでいました。
「なにこれ?」
そのときまた強い風が吹いて箏を吹き飛ばします。
「きゃあ〜!」
あまりの衝撃に、箏は気を失いました。
それからどのくらいの時間が経ったのでしょう。
どこかから声が聞こえてきます。
「ふん。情けない」
「え?」
驚いて目を開けると、そこには今までみたこともない怪物が。
身の丈は二間(にけん)近くあり、
赤い顔。天まで届きそうな長い鼻。
あ、二間というのはだいたい3〜4メートルくらいね。
「うわぁ!」
「またかよ」
3回目に気づいたとき、箏は布団の上に寝かされていました。
「ここは・・・どこ?」
「天界です」
「え?えっ!あなただれ?透明人間?どこにいるの?」
「目の前にいますよ。
姿を見せてもいいけど、また気絶しないでくださいね」
そういって姿を現したのは、何人、いえ何羽ものカラス天狗。
山伏の姿にカラスの嘴を持つ天狗の眷属です。
「うっ。気絶したい・・・けど、なんなの?一体」
「私たちは大天狗の眷属。カラス天狗です」
「私は・・・どうなるの?」
「まあ、大天狗の召使、ってところでしょうか」
「なにそれ?冗談じゃない。召使?掃除とか洗濯とかするの?
私、ひとりぼっちになって、一人で炊事洗濯するのが虚しくて、
こんな生活もういや!
って思って、黄泉の国へ行くつもりだったのに」
「そんなこと言われましても、あなた自身で選んだことですし」
「あんたはなんでそんな姿をしているの?」
「なんで、って言われましても。山の神様の罰というか、なんというか」
「山の神様?」
「はい。大天狗も我らカラス天狗も山の神さまの罰でこんな姿になりまして」
「めんどくさそう」
「とにかく、あなたも運命だと思ってお仕事に専念してください」
「やあよ。つまんないから帰る」
「え?え?そんな。無理ですって」
「いいわ、その大天狗にかけあってみるから」
「また、そんな、ご無体な」
なんていうやりとりをしていると、
山の上の空が一転俄かにかき曇り、あたり一面が夜の闇に。
「ちょっと。なにすんのよ」
「いや、これは私どもではありません」
「じゃあ大天狗の仕業?」
「いえ。大天狗でもありません」
「じゃあなに?」
「荒ぶる山の神。鬼神です」
「鬼神〜?私たちどうなるの?」
「体をバラバラにされますね」
「うっそぉ!冗談じゃないわ」
「運がよければ、腕の1本2本くらいで済むかも」
「勘弁してよ」
「いや、もう遅いし。
うわ!お先に失礼」
「ちょっとちょっと!逃げないでよ」
「がんばってください」
「このお・・・
はあ〜。ま、いっか。
これでこの世とおさらばできるんなら。
なんか、つまんない人生だったな」
箏があきらめて、目を瞑ったとき。
雲の中から大天狗が現れます。
「大天狗・・・」
天狗は鬼神に向かって立ちはだかったあと、箏の方を振り返りました。
「あ・・・」
大きな2本の腕で箏を包み込み、鬼神の攻撃を背中で受けます。
背中からは血飛沫が飛び散り、苦悶の表情。
それでも、微動だにしません。
「なんか・・そんなに怖い顔じゃない・・・かも・・」
まるでバリアーのように天狗の周りの空気が歪んで見えます。
知らず知らず、でもまたもや、箏は気を失っていました。
気がついたのは、だいぶんあとになった頃。
「あ・・・れ?」
箏は今回も布団に寝かされていました。
ただ、ひとつ違ったのは、目の前で大天狗がこちらを向いて座っていること。
でも、目は開いていません。
あぐらを組み、大きな体躯から覗き込むような格好で目を閉じています。
「眠ってる・・・?」
※続きは音声でご確認ください。