能楽 金春流 素謡「 鵜祭(うのまつり)」 〜能の曲「鵜祭」の謡曲部分のみを謡う(素謡)〜
明治維新に多くの日本文化が失われる中、能楽が存続し復興できた背景には、江戸時代に謡が寺子屋などで教えられていたことで、身分にかかわらず多くの日本人が各地の物語を綴った能の内容を知るものであった事がありました。
能は地域に密着した、人の想いを伝えるものです。能登半島地震から1年経ちましたが、まだなお災害の爪痕の残る能登の復興を祈り、こちらの動画を配信いたします。
【能楽 金春流 素謡「鵜祭(うのまつり」】
ワキ(勅使) 金春 安明(金春流八十世)
ワキツレ(従者) 金春 安明(金春流八十世)
前シテ(海女) 金春 憲和(金春流八十一世宗家)
後シテ(気多明神) 金春 憲和(金春流八十一世宗家)
前ツレ(海女) 杉田 浩庸(金春流シテ方)
金春 政和(宗家弟)
後ツレ(八尋玉殿神) 金春 政和(宗家弟
金春 政和(宗家弟)
企画 金春 安明(金春流八十世)
撮影・編集 金春 政和(金春流宗家弟)
協力 金春 牧子(金春流宗家姉)
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能「鵜祭(うのまつり)」
金春流にのみ残る稀曲(珍しい演目)
【能「鵜祭」の背景】
能「鵜祭(うのまつり)」の元となった神事「鵜祭(うまつり)」は、奇祭の多いと言われる能登でも奇祭中の奇祭と言われています。
石川県の一ノ宮である氣多(けた)大社を中心に行われている重要無形民俗文化財であり、500年以上続く伝統行事です。現在の石川県七尾市と羽咋(はくい)市にまたがる地域で行われています。
鵜祭はもとは旧暦の11月に行われていました。現在ではメインとなる氣多大社の神事は日付固定で12月16日未明(午前3時ごろ)に行われています。神事はその数日前、七尾市の鵜浦町で鵜を捕まえるところから始まります。先祖代々、役をされている鵜捕部の方々によって一子相伝の手法で捕えられます。鵜は鵜捕部により、鵜籠に入れられ氣多大社に向かいます。道中、鵜は「鵜様」と敬われ地域の方が手を合わせて拝みます。氣多大社で神事が始まると、鵜捕部は鵜籠を本殿前に運び、神職との間で問答が交わされ、その後鵜が放たれます。
神事の由来は明確ではありませんが、神社の伝承によると、祭神である大国主神が神代の昔、七尾市の鵜浦町の鹿渡島に到達した際、地元の神である御門主比古神が鵜を捕らえて捧げた事に由来する説や、櫛八玉神が鵜に化けて魚を捕まえ、それを献上したという伝説に由来するという説もありますが、大きくは新嘗祭(旧暦11月23日)に行われており、いずれにしても、この神事は神々と自然との深い結びつきを象徴しています。
【能「鵜祭」と神事「鵜祭」】
神事と能では鵜祭の読み方が異なり、能は「うのまつり」ですが神事は「うまつり」と呼びます。(能には「の」が入ります。)
このように音が多少違ったり、漢字表記が異なったりする事は、日本の古来から伝わっているものだとよくあることですが、この神事も起源は詳しくはわかっておらず、一説には奈良時代まで遡るのではないかとも言われているそうです。
戦国時代から安土桃山時代に活躍した、加賀藩の藩祖である前田利家は、豊臣秀吉の影響で、金春流を贔屓にしていました。それもあり、能「鵜祭(うのまつり)」は、金春流よって演じられることが多く、現在では金春流にのみ伝わる能となっています。
能楽を愛した前田利家。地域文化と密接に結びついている能楽がは武将の庇護のもと、明治維新の危機を乗り越え、今なお伝えられています。
【能「鵜祭」のあらすじ】
能「鵜祭(うのまつり)」のストーリーは、勅使である大臣たちが氣多明神(けたみょうじん)に参詣する場面から始まります。雪の降る中、海女たちが登場し、鵜を供える神秘な神事や、昔から神社によって天下安全が守られている事などを神でなければ知らないのではないかと思われるほど、不思議なほどに詳細に語り、月の光と共に消え去ります。
実は海女たちは神様でした。その後、気多明神(けたみょうじん)と八尋玉殿(はちじんぎょくでん)が神の姿となって現れ、勅使たちに舞を舞い、鵜を海上に向かって放つ神事を通じて神徳を示し去っていきます。
重要な見どころは、前半で気多明神の縁起や神徳を謡う部分、後半で神々が舞を舞う場面です。特に金春流の能では、これらの神々の舞や神話的な要素が印象的に表現されています。
【能「鵜祭(うのまつり)」の見どころと特色】
この「鵜祭」は、氣多大社の非常に神秘的な神事を題材としている、金春流の能楽においてのみ見ることができる稀曲です。前半の謡では氣多明神の由来とその神徳が語られ、後半では後シテの気多明神(けたみょうじん)と後ツレの八尋玉殿(はちじんぎょくでん)の神が登場し、鵜を神前に供え、神々の舞や神々の力を示すシーンが展開されます。素謡では謡がないため登場しませんが、能では登場する子方は鵜を演じます。子供の鵜の舞や舞働も観客を魅了するポイントとなります。特に、この演目が持つ神秘性と、鵜を生け捕りにし神前に供えるという神聖な儀式が舞台で再現されることは、非常に感動的であり、観る人々に深い印象を与えます。
神事の「鵜祭(うまつり)」は数ある伝統的な祭りや神事の中でも、特に地域の人々の信仰や文化、そして神々との関係を象徴する深い意味を持つものです。それを題材にした能「鵜祭(うのまつり)」は、金春流ならではの演技と謡で、この神事の神聖さと神秘を伝えています。
能楽は古来から続く神事の背景や意味を現代の私たちが学び、感じるために昔も今も人の心に語りかけます。
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1 Comment
なぜ見本で謡っているのでしょうか
素人ではないのですから、無本が常 6と思いますが