今回は、山中温泉 菊の湯からゆげ街道のご案内と、浴衣娘(ゆかたべ)たちにより、湯座屋で生まれた、山中節のご紹介になります。

山中温泉街は文字通りに、山々に囲まれた街になります。近くには、自然豊かな山々と鶴仙渓、大聖寺川なが織りなす景観を楽しむことが出来ます。
温泉街は大聖寺川の渓谷沿いなどに旅館が立ち並ぶ大自然の中にひっそりとございます。

付近には、山中温泉のシンボルでもある、こおろぎ橋や草月流家元 勅使川原氏がデザインしたユニークな形のあやとり橋(はし)があります。

日帰り入浴施設も多数ございますが、おすすめはやはり、山中温泉の総湯(湯座屋)の菊の湯になります。

近代以前は、山中温泉と言えば、総湯(菊の湯/芭蕉由来の前は特に名前はない)方式になり、昔はどこもそうでしたが、総湯の(湯座屋)の周りに何軒かの温泉宿があり、宿泊客は、皆、その総湯まで来て温泉に入っておりました。
当時の菊の湯は、湯座屋、総湯とも言われていたころ、温泉宿の奉公の見習いとして働きにきていた、当時、14-5歳の若い娘たち、ゆかたべ(浴衣娘)との深いつながりがありました。

共同浴場は総湯「菊の湯」となります。
菊の湯の下には源泉が存在します。
(おとこ湯は重厚な天平風の建物で、腰まである深い浴槽が特徴。おんな湯は華麗で優雅な曲線美をなす造り。泉質は、カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉)

松尾芭蕉が、この山中温泉を大変気に入り、扶桑三の名湯、いわゆる日本の三名湯とほめたたえ、その総湯(菊の湯)について、「山中や 菊はたおらぬ 湯のにおい」と詠ったことから菊の湯と名付けられたそうです。
この句の意味は、
中国には昔、周の国に700歳にもなる「菊滋童」がおりました。
長寿の秘訣は、菊の茎を手で折って(たおる/手折る)その露を飲んでいたからだそうです。

しかし、この山中では菊の茎をわざわざ折って、その露を飲むことなどをしなくても、薬効もある、山中温泉の湯の花(湯のにおい)を嗅ぐだけで、十分健康で長寿になれる。そう芭蕉が評した湯になります。

先ほど、説明しました通り、温泉客は皆、湯宿に宿泊をし、総湯(菊の湯)に来るのですが、その道案内を兼ねゆかたべ(浴衣娘)がお客の浴衣持ちを兼ねていました。
そのお客の中には、付近の北前船の船員も多く来たそうです。
特に、付近の橋立の北前船の船乗りの村が、現在の日本一の長者村として有名ですが、命懸けの航行の対価として、当時は相当高額な給金が支払われていたそうです。

逞しい、船乗りたち、ましてはびっくりする程稼いでいたその高収入の男たちは、当時の年頃の女性の憧れの的だったようです。

その北前船の船乗りは、命を懸けて船を航行していましたが、その目的地の1つでもあった、北海道 松前地区で覚えた、松前追分を温泉で歌っていたそうです。

その唄を聞いていた浴衣娘が、淡い想いを抱きながら、山中訛で真似をして、歌い継がれてきたものが、いまの山中節になります。

山中節は、その長い歴史から、数多くの歌詞が誕生しました。
江戸時代から、明治、大正・昭和の頃と、山名温泉は歓楽街として変遷てきた側面もございます。
湯座やのゆかたべから、お座敷芸子に受け継がれてきたものには、曲調も賑やかで、楽しそうに歌うバージョンもあります。

しかし、私は、北前船の若い船乗りと、ゆかたべとのほろ苦い心情を唄ったものの方が
好きです。

山中温泉の、現在の医王寺のご住職も、山中節が非常にお好きとのことで、医王寺の門をくぐると、自動的に山中節が流れる仕掛けをしているほどです。
(いくつものバージョンが代わる代わる交代で流れます=ご住職の好みの曲調ばかり)

その山中節は、日本三大民謡の一つでもあります。現在まで受け継がれたこの唄を、千年先までも残していければと思います。
この動画は、そのわずかでも一助になればと思っています。

エピソードとしては、女優の森光子さんは、存命のころ、ラジオ番組で(日本の民謡の中では、山中節が一番好き)と発言したことが縁で、山中座の初代の名誉座長となって頂いた経由がございます。

ゆげ街道は、菊の湯からこおろぎ橋までの、およそ900mに至る商店街・街道になります。
2003年(平成15年)に全店舗を再構築と大改修を行い、温泉情緒ある街並みに変貌させ「ゆげ街道」と名付けられました。
ゆげ街道の名前の由来は、ゆげ地蔵から来ているものと思われますが、微笑ましい昔話ですよ。お話は、ゆげ地蔵脇の立て看板に記述されていますので、お越しの際にはお立ち寄りください。
また、その隣には、福の鐘もございます。ぜひ、鳴らしてみてください。

このゆげ街道ですが、2009年(平成21年)3月には全国の中で「新・がんばる商店街77選」に選ばれました。

*(注)本編中後半のゆかたべと北前船若者の物語、山中節の歌詞解説は、史実に基づいての解釈ですが投稿者の主観によるもので、オフィシャルなものではございません。
ご了承願います。

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