【徹底解説】最短コースで登る御嶽山(被害最多の王滝口ルート、噴火10年後の現状をお伝えします) Course Guide of Mt.Ontakesan.
【はじめに】
今回の動画には、噴火の被害についての表現が多数含まれます。過去から目を背けず、教訓として学ぶことが大切だと思い、率直に表現しました。ご承知おきください。
2024年9月25日(水)、長野県と岐阜県にまたがる高峰「御嶽山(3067m)」に登りました。御嶽山は日本で14番目、独立峰としては富士山に次いで2番目に高い山で、日本百名山にも選定されている、古くから信仰の対象になっていた山です。
2014年9月27日11時52分、多くの方が登山されている中、御岳山は噴火しました。死者58名、行方不明者5名という、日本における戦後最悪の火山災害となりました。その被害に合われた方の8割が登られていたのが、今回登る「王滝口ルート」。長い間立入禁止となっていたルートでしたが、2023年7月末、9年ぶりに頂上まで上れるようになりました。
自然の恐ろしさを忘れないため、被害に遭われた方への慰霊のため、事故からちょうど10年が経った今、登ることにしました。
今回は、山頂の剣ヶ峰への最短コースであり、多くの被害が出た「王滝口ルート」で最高峰剣ヶ峰へ登頂、二ノ池山荘へ寄り道してから王滝口ルートで下ります。コースタイム約6時間の日帰り登山です。
【ご注意】
・必ずヘルメットを持参し、八合目からは着用しましょう。
・山行前には噴火情報の確認と登山届の提出を行ってください。
・王滝口ルートの2024年の開放は終了しております。2025年以降のルート開放期間については事前に確認をお願いします。
【アクセス】
中央高速を伊那ICから、大滝村に向けて国道361号や19号を走り、県道256号、御岳スカイラインで御嶽山中腹に向けて登ります。伊那ICから一般道を走ること1時間半、登山口付近の「田の原駐車場」に到着します。
【駐車場情報】
田の原駐車場…200台以上(近年満車になることはなかったそう) 無料 標高2180m 携帯電波・トイレ・売店・食堂あり 御嶽山の歴史や噴火について学べる「やまテラス王滝(9:00~16:00 無料)」あり
【ルート概要】
①田ノ原駐車場~八合目避難小屋(CT:1時間15分)
田ノ原の「やまテラス王滝」の正面にある大きな鳥居から山に入っていきます。しばらくの間は傾斜のほとんどない砂利道。左右には東屋や展望台、木道を散策できる遊歩道、巨大な五円玉が楽しい「田の原大黒天」などがあります。右に「遥拝所」への分岐が現れてから徐々に階段になり、鳥居のある「大江権現」を過ぎると細い山道が始まり、傾斜の急になっていきます。そこからしばらくの間は展望の利かない樹林帯の中の道ですが、20分も登ると森林限界を越え、背の低いハイマツに囲まれた道になります。
登山道から後ろを振り向けば、すでに大展望が広がっています。足元には小さく形の良い三笠山とその麓にある田の原駐車場、その先には雲海に沈む木曽の谷と壁のような中央アルプス。そのさらに奥には南アルプスや八ヶ岳などが見渡せます。
石碑や仏像が立ち並ぶ八合目を過ぎ、ひと登りすると八合目避難小屋に到着します。八合目と九合目の避難小屋のどちらも木造の小さな避難小屋ですが、噴火の際には各20名ほど収容することができ、屋根をアラミド繊維(防弾チョッキにも使われている高機能繊維)で補強されています。中にはヘルメットが備え付けられているほか、九合目には無線設備や携帯電話の充電器(USBケーブルも)なども備え付けられていました。
②八合目避難小屋~王滝口頂上(CT:1時間10分)
八合目の避難小屋から先も、ハイマツに囲まれた展望の良い道が続きます。傾斜はかなり急ですが、石や木材でしっかり整備されており、1段1段はそれほど高くありません。富士見石や九合目の石碑、一口水(少量の水が湧き出ているポイント。飲料水にできるほどではない)などを過ぎ、急傾斜の登り続けると、八合目避難小屋から50分、九合目避難小屋に到着します。
九合目避難小屋から先、所々に祀られた銅像や祠を通過しながら20分ほど登ると、十合目「王滝頂上」に到着します。
王滝頂上には、2階建てでかなりの人数が収容できる「王滝頂上避難施設」があります。噴火前には「王滝頂上山荘」がありましたが、ここに登山者を長時間滞在させないという方針のもとに「山荘」は解体され、通過型の「避難小屋」を建設したそうです。避難小屋の脇を奥に進むとトイレがあり、「地獄台展望台」へ稜線が続いていますが、こちらは現在立入り禁止になっています。
そして、避難小屋のすぐ上には立派な「御嶽神社頂上奥社本宮」があります。神社境内向かって左の石壁の間を抜けると、最高峰剣ヶ峰と、そこへ続く道が視界に飛び込んできます。左の尾根の奥には10年前噴火した火口が噴煙を上げているのが見えます。ここから山頂の剣ヶ峰までの間が、特に多くの方が亡くなられた区間ということもあり、ダイナミックな景観ながら、神妙な気持ちになります。また、登山道脇のロープには素早く通過するよう警告するプレートが多数設置されており、とても危険な場所にいるのだというピリピリした感覚になります。
③王滝口頂上~八丁ダルミ~剣ヶ峰(CT:25分)
大滝口頂上から「八丁ダルミ」というポイントへ緩やかに下ると、山頂への登りが始まります。火山ガスで真黒く変色した「まごごろの塔」や銅像などを見ながら進むと、トンネル状のシェルターが2つ現れます。1つ目のシェルターの手前は分岐になっており、右は剣ヶ峰を回避して二ノ池山荘方面へ進むトラバースルートになっています。
2つのシェルターを過ぎ、階段を登り続けて行くと山頂部に到着します。トンネル状のシェルターがいくつも設置され、山頂直下には「安らかに」と書かれた慰霊碑が設置されています。そして、最後の立派な階段を登り切れば、最高峰剣ヶ峰(3067m)に到着します。
山頂からは中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳、北アルプスの山々のほか、火山灰が埋め尽くした一ノ池や二ノ池など、ダイナミックな景観が楽しめます。ベンチもあり、絶景を楽しみながら休憩できる山頂ですが、山頂の鐘に噴石による穴が開いていたり、支柱が曲がっていたり、灯篭や石碑が壊れて土砂に埋まりかけていたり、至る所で噴火のすさまじさが感じられます。
④剣ヶ峰~二ノ池山荘~王滝頂上(CT:1時間)
剣ヶ峰から来た道を帰ってもいいのですが、時間的にも余裕があったため、二ノ池山荘へ寄り道することにしました。火山灰で広大な平地と化した二ノ池をみながら30分ほど下ると二ノ池山荘に到着します。宿泊はもちろん食事なども楽しめる山荘で、トイレ(200円)もお借りできます。
二ノ池山荘からトラバース道を通り30分ほどで八丁ダルミの分岐に戻り、王滝頂上の神社へ戻ります。
⑤王滝頂上~田の原駐車場(CT:1時間50分)
王滝頂上から田の原駐車場へは、来た道を戻ります。真下に見える駐車場へ、ほとんど一直線に下っていく道はとても気持ちがいいですが、岩の段差が延々と続くので膝への負担が大きく疲労がたまります。転倒に注意が必要です。
登山口の大きな鳥居を抜けると、正面にやまテラスの建物があります。また、麓の県道20号沿いにある道の駅三岳にも「さとテラス三岳」という施設があります。どちらの施設も近年できたばかりで、御嶽山の自然や歴史、そして噴火の被害や対策について学べます。時間があれば立ち寄ることをおすすめします。
【感想】
御嶽山は多くの魅力にあふれた素晴らしい山でした。
・至る所からアルプスの眺望や壮大な火山の景観が楽しめる。(駐車場からでも槍穂が見えます)
・信仰の歴史の深さが味わえる。(田の原へ向かう車道沿いにも大量の石碑や銅像があり独特な雰囲気です)
・比較的短時間で3000m峰に登頂できる。
・高山植物や雷鳥などの動物に出会える
・いろいろなルート取りが工夫できる
噴火から10年経ち、シェルターや避難小屋が整備され普通に登山ができるようになりましたが、噴火の被害の痕跡があちこちに残っていました。茶色く酸化した古い地面の上に、噴火で飛んできたと思われる真っ白な噴石が沢山ありました。中には人の頭ほどの大きさのものも見られました。これらの噴石は時速300㎞もの速さで飛んできたそうです。
自然は美しくもあり、時にとても恐ろしくもあります。過去から目を背けず教訓とし、緊張感をもって登山を楽しんでいこうという決意を新たにした、今回の山行でした。
噴火の犠牲になり亡くなられた方のご冥福を心からお祈りします。
そして、行方不明の方がご家族の元に帰られる日が来ますように。
【チャプターリスト】
0:00 オープニング・アクセス・山と噴火の概要
2:40 駐車場~八合目
7:38 八合目~王滝山頂
14:23 八丁ダルミ~剣ヶ峰山頂
22:12 剣ヶ峰山頂~二ノ池山荘~王滝山頂
25:39 下山・2つの施設見学・エンディング
【BGM】
Song1,2,5,6,7,8 : from hotaru sounds(http://www.hotarusounds.com)
Song3,4 : from MATSU(https://www.youtube.com/c/MATSU_MA2Sound)
Song9 : Roman Müller – Easy Life (Vlog No Copyright Music)
【YAMAP活動記録】
https://yamap.com/activities/34662904
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2 Comments
いつも登山動画をありがとうございます☺️
御嶽山へは私も王滝口から2003年9月に登りました。その時は王滝頂上山荘に泊まりましたが、まさか11年後にそのルートの近くで火山の大噴火による多くの犠牲者がでるとは夢にも思いませんでした!
今回は色々な思いが込められた登山動画だと思いました。
登頂は出来ないかもしれませんが、田ノ原駐車場や山テラス大滝はいづれ訪れてみたいと思います。