竹田市直入町長湯の長湯温泉街沿いの芹川に架かる河鹿橋まで行くと、「かじか庵」の看板が目に飛び込んでくる。「湯処(どころ)ゆの花」がある旅館だ。周りを川と田に囲まれ、のどかな風景が広がる。

 「うちの一番の特徴といったら、やっぱり底入れ底出し方式かな」とおかみの田嶋慶子さん(57)。ここでは湯を浴槽の底から注ぎ、排出する。湯が自然と浴槽内を対流することで上部と底部の温度差がなく、常に新鮮な状態を保つことができるという。

 自噴する炭酸水素塩泉の源泉を掛け流し、加温も加水もなし。黄褐色の濁り湯は肌当たりが優しく、滑らか。表面には温泉の成分が空気に触れて酸化した「湯の花」が浮かび、泉質の良さを感じさせてくれる。

 「湯の花の 咲く湯の宿に ひとり来て 揺るる満月 掬(すく)ひて遊ぶ」―。受付そばの壁に掲げられた短歌は町内の常連、吉野正純さん(74)の作。「ここは静かで落ち着く。何も考えず露天風呂にゆっくり漬かると、疲れも忘れます」とお気に入りで、毎週のように通っているという。

 以前は温泉街の別の場所で食堂を営んでいたが、温泉と旅館を増設するため1990年に今の場所へ。長湯では珍しい岩盤浴の他、男湯には、加熱した石にアロマオイルを含んだ水を打つセルフの水蒸気サウナ「ロウリュウ」も。温泉水は飲むことができる。「内からも外からも、いろんな形で楽しんでほしい」。訪れる人へのおかみの思いが詰まった温泉だ。

(メモ) 利用時間は午前10時~午後11時(受け付けは同10時まで)。入浴料は大人500円、子ども(3歳~小学生)250円。家族湯1時間2千円。岩盤浴とのセットは1200円(作務衣(さむえ)、タオルの貸し出し代を含む)。問い合わせは、かじか庵(TEL0120・118・102)。

「とり合わせ」に満足 川魚など単品も充実

 かじか庵に併設する「食事処せり川」では、エノハをはじめ地元の野菜やこだわり豆腐をふんだんに使った定食、単品料理が味わえる。

 「長湯名物とり合わせ御膳」(1500円)はエノハの塩焼き、鶏天、だんご汁に季節の小鉢3品、ご飯が付く人気メニュー。だんご汁のだんごは手ごねで、具もたっぷり。味はもちろんおなかも十分に満たしてくれる。

 エノハの唐揚げや背ごし(各650円)など単品も充実。ワカサギの天ぷら(500円)は10月~3月の季節限定。問い合わせはかじか庵。

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