千葉県睦沢町の町立歴史民俗資料館で、特別展「鈴木重男 心の絵」が開かれている。晩年に絵を描き始めて1千点以上の作品を残し、2016年2月3日に92歳で亡くなった鈴木さん。日々の思いを絵にした素朴で詩情あふれる作品など約60点が並ぶ。
 鈴木さんは1923(大正12)年4月28日、現在の睦沢町で生まれた。水彩画は独学。もともと絵は好きだったが、晩年に数多く描くようになった。「病気になった妻を介護するようになり、外出せずにできることはないかと始めた」と生前に話していた。
 自らの絵を「心の絵」と語り、ほとんどの絵を記憶をもとに描いた。90歳を超えても精力的に絵に打ち込み、同館が調べると約1100点に上ることがわかった。
 中国での戦争体験を描いた作品はこれまでも同館で展示されてきた。今回は他の作品を中心に展示。尋常高等小学校の登校風景や餅つき、赤とんぼなど、鈴木さんの幼い頃の思い出が多い。睦沢町に伝わる郷土芸能「妙楽寺ぜんぜんご」を描いた作品もある。
 「房総カントリーの桜」と題した絵は、入院していた妻に見せるために描いたという。妻を亡くした後に描いた「ほたる狩り」の絵には、「亡き人よ蛍になってとんでこい」と俳句を添えた。16年2月3日、心臓疾患で亡くなる直前まで描いていたという「節分」の作品も並べられている。
 会場には、一人の庶民として戦前戦後を生きた鈴木さんの生涯を追う資料も展示。アルバムには徴兵検査の時の記念写真が大事に保存されていた。また、89歳の時に自らの生涯をつづった記録もあり、愛用の水彩絵の具や普段着も作品とともに飾られている。来年2月17日まで(月曜と今月28日~1月4日は休館)。入館無料。#あちこちのすずさん

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