ココとミック、2匹の犬と特別な絆で結ばれた飼い主 入居者から入居者へ、犬との絆はしっかりと受け継がれていく

布団をかぶっているミック(「さくらの里山科」で)

 ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」で、愛犬のココ(トイプードル)、ミック(ヨークシャーテリア系のミックス犬)と共に暮らしていた橋本幸代さん(仮名、80歳代女性)が逝去されました。

 ココもミックも深く悲しんでいる様子が感じ取れました。2匹は、それぞれが橋本さんと特別な絆を築いてきたからです。

 橋本さんとココは8年前に入居しました。その時、ミックはまだいませんでした。冒頭で「愛犬のココとミック」と書きましたが、ミックの本当の飼い主は、瀬川安江さん(仮名、当時90歳代女性)で、橋本さんが入居した翌年、一緒に入居したのです。

 ミックと“2人暮らし”をしていた瀬川さんは、認知症が進行して、日常の家事ができなくなっていました。火の取り扱いも危なくなっており、心配した家族が、火事につながらないようにと、ガスコンロやファンヒーターなど火を使う物を撤去していました。しかも、認知症ではしばしばみられる症状の一つですが、エアコンのリモコンのボタンを頻繁に押して壊してしまうので暖房器具もなくなってしまい、瀬川さんはミックと抱き合って布団に入り、真冬の寒さに耐えていたそうです。

 家族は何回も、老人ホームへの入居を勧めましたが、瀬川さんは「ミックを置いてはどこにもいかない」と、がんとして入居を断っていたそうです。そこで家族は、ペットと暮らせる特養である「さくらの里山科」を見つけたのです。

 入居の申し込みを受けたのは真冬のことでした。状況を知った私たちは、緊急性が高いと判断し、すぐに入居してもらいました。以来、2024年10月に瀬川さんが逝去するまでの約6年半、“2人”はホームで幸せに暮らしました。残されたミックは、ご家族の希望で「さくらの里山科」で暮らし続けることになりました。ミックにかかる費用はご家族が支払ってくださいます。

 そんなミックは、元々、ココとは仲が良く、橋本さんとココが暮らす部屋によく遊びに行っていました。そこで、私たちはミックも一緒に生活させてもらえないかと、橋本さんとご家族に提案したところ、幸い快諾してくださいました。こうして、ミック、ココと橋本さんが同じ部屋で暮らすことになったのです。

 ミックは以前から、橋本さんの部屋に遊びに行ってかわいがってもらっていたので、すぐに懐きました。いつもベッドの上に乗って、寄り添うようになりました。橋本さんとミックがぴたりとくっついて寝ている姿は、もはや親子そのもの。橋本さんが車いすでリビングに出てくると、その足元にはいつもミックがいました。橋本さんが入院して帰ってきた時など、ココ以上にミックが大喜びしていました。

 ココはマイペースで生活する子で、橋本さんとはバラバラに行動することが多かったので、一見するとミックが橋本さんの愛犬で、そこにココがお邪魔しているように思えたほどでした。

 大切なおばあちゃんだった瀬川さんを失ったミックは、こんなふうにして第2のおばあちゃん、橋本さんと確かな絆を結びました。しかし、そうして絆を育んできた第2のおばあちゃんを、ミックは失ってしまいました。1年に満たない短い期間に、大切な人を2人も失ったミックが心配です。幸い、多くの職員と入居者にかわいがられており、寂しそうにはしていても、元気に暮らしています。

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