保護活動のリアルな経験を綴った漫画
環境省の統計では、犬猫の引き取り数や殺処分数は年々減少傾向にある。それでもなお、負傷動物の多くが命を落としている現実は重い。とりわけ重いケガや障害を負った猫は、「譲渡が難しい」と判断されることも少なくない。数字は改善していても、命の選別という課題が解決されたわけではないのだ。
そうした現場の葛藤と希望を描くのが、個人で一時預かりボランティアを続けるtamtamさんだ。


これまで出版した『たまさんちのホゴイヌ』『たまさんちのホゴネコ』『たまさんちのホゴイヌ2』(すべて世界文化社刊)では、自身の経験をもとにした保護活動の「きれいごとではない現実」と、それでも確かに存在する奇跡を、静かに、しかし力強く伝えてきた。
そして今年2月には最新刊『たまさんちのホゴネコ2』(世界文化社)を出版、FRaU webではその中から、住宅街で親子が見つけた「顔の半分がない」猫の話を、短期連載でお伝えしている。
『たまさんちのホゴネコ』(tamtam/世界文化社
これまでの話を読む。
第1話 「顔が半分ない猫がいるんです」住宅街でうずくまるボロボロの猫を見つけた親子が通報した先
第2話 自己やケガなどで動けなくなっている猫を見つけたら…保健所やセンターに収容された障害猫の未来
第3話 「顔の半分がない」通報を受けて保護した猫。獣医師が言葉を失った重篤から命をつないでつけられた「名前」
「鳴くようになった」その意味は
その猫は顔の半分がただれ落ち、壊死して状態で動物病院に運ばれ、命の危険もあったが、抵抗するのも食べるのも必死で、生きることを諦めない姿は愛護センターの職員たちの心を動かし、順調に回復していった。

第4話では、いのりと名付けられた猫に起きた小さな、しかし大きな変化に光を当てる。
いのりが、よく鳴くようになった。
FRaU webで連載中の動物行動学を専門にする高倉はるか先生によれば、野良猫は本来、あまり鳴かないという。鳴くことは自らの存在を外敵に知らせる行為でもあり、単独で生きる猫にとっては必要のないコミュニケーションだからだ。一方、人と暮らす猫は鳴く。飼い主に空腹や甘え、不満や要求を訴えるためだ。
そして、猫は人に嫌なことをされたり、いじめられたりすると、不快な出来事として学習し、その記憶はなかなか消えないという。

つまり人馴れせず、人の手を怖がっていたいのりが、再び人に自分の欲求を伝えようと鳴くようになったことは、人間が自分の願いをかなえてくれる相手なのだと、心を開き始めていることを意味している。
顔半分がただれ落ちる出来事を超えて、再び人を信頼しようと鳴くいのり。それは奇跡に違いない。

2ヵ月が経ち、いのりの傷も獣医が驚くまでに回復した。
そうして、今の環境も悪くないとばかりにリラックスした表情を見せるいのりは、人との暮らしを心地よく感じ始めているように見える。
