*写真はイメージ。本文と直接の関係はありません(写真:FRANCESCO ALTOMARE/Shutterstock)

 猫が日本経済を牽引しているかもしれない。宮本勝浩・関西大学名誉教授の分析によると、「ネコノミクス」(ネコの経済効果)は消費者、企業、自治体などがネコのために直接消費、投資した直接効果と一次波及効果、二次波及効果の合計として計算されている。2026年の推計額は2兆9488億円にのぼり、大阪・関西万博の経済効果にも匹敵する規模だという。

 一方で、猫や犬、鳥など伴侶動物の悲惨なニュースも多い。ブリーダーによる不適切な繁殖や飼育も後を絶たないが、飼育者による〈多頭飼育崩壊〉も耳目を集めている。

 中でも、熊本市で2025年6月に発覚した150匹を超える猫の死亡が確認された虐待事件は、愛猫家のみならず世間に大きな衝撃を与えた。動物愛護法違反(虐待)で逮捕された容疑者は、飼い主のいない猫の保護団体に所属する人物で、団体の名前を使って猫を集めていたという*1。

 環境省が2021年に策定した「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン~社会福祉と動物愛護管理の多機関連携に向けて~」によると、多数の動物を飼育しているなかで、適切な飼育管理ができないことにより、①飼い主の生活状況の悪化、②動物の状態の悪化、③周辺の生活環境の悪化のいずれか、もしくは複数が生じている状況を〈多頭飼育問題〉と定義している*2。

 この問題には心理臨床・精神病理に関わる面があることを広く知ってもらいたいと公認心理師/臨床心理士の福地周子氏は言う。さっそく話を聞いた。

*1 熊本市「【報道資料】動物虐待が疑われる事案について」(2025年6月11日)

*2 「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン~社会福祉と動物愛護管理の多機関連携に向けて~」

こだわりの病としての〈動物ため込み症〉

——熊本県の容疑者宅は、ゴミが散乱し、異臭が漂っていたと報道されていました。そんな状態で、どんどん猫を引き取って放置し、餓死させ、その中で生活していたという……とても信じられないですし、理解しがたいと思いました。

福地周子氏(以下、福地) このケースで実際になにが起きたかはわかりませんので、一般論でお答えしたいと思います。まず、加齢による衰えで、だんだん十分な世話ができなくなることは多いでしょう。家族の人数がだんだん減って、人間はひとりになったけれども動物がたくさんいて世話をしきれなくなるような場合が、想像しやすいと思います。

 しかし、熊本市で起きたようなケースは、もしかしたら、〈動物ため込み症〉に該当していたのかもしれません。これは、比較的新しい病名で、精神疾患のひとつになります。

 米国精神医学会が発行する精神疾患の診断・統計マニュアルのDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の第5版(DSM-5)に、〈ため込み症(Hoarding Disorder)〉が登場しました。

——いわゆるごみ屋敷問題のようなものでしょうか。

福地 そうです。たとえば、病気や怪我、加齢によって段ボールをまとめられないとか、重くてゴミ集積所まで持って行けなくなることもありますね。整理整頓や掃除ができない、ゴミ捨てルールが複雑でわからないこともあるでしょう。そういう理由なしになんでもかんでも捨てずに溜め込んで、生活に支障がある場合に〈ため込み症〉が考えられます。

〈ため込み症〉には診断基準があり、以下のようになっています。

・実際の価値と関係なく、所有物を捨てること、または手放すことに対する持続的な困難。

・品物を捨てることについての困難さはものをためこむことに対する必要性や、それらを捨てることに関連した苦痛によるものである。

・品物によって活動できる生活空間が一杯になり、取り散らかっているため、必要なものが使用できなかったり、使おうとしても品物の大きな山に邪魔されたりする(もし生活空間が散らかっていなければ、それは他人の助けがあったためである)。

(*『精神疾患・メンタルヘルスガイドブック:DSM-5から生活指針まで』より)

アパートの一室での「ため込み症」の一例(Grap, CC BY-SA 3.0 , ウィキメディア・コモンズ経由で)

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