犬の飼育でがんサバイバーの死亡リスク低下 5年累積死亡リスクが64%減・後ろ向きマッチドコホート研究

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 犬の飼育は、心血管疾患、糖尿病、喘息における有益な効果が示されている。しかし、主要な死因であるがんについては、犬の飼育が発症や生存率に及ぼす影響は十分に検討されていない。ドイツ・Freie Universität BerlinのRobert Preissner氏らは、がんサバイバーを対象に犬の飼育と生存率との関連を検討する後ろ向きマッチドコホート研究を実施。その結果、犬の非飼育者と比べ 飼育者では5年全死亡(OS)が有意に高く、犬の飼育により5年累積死亡リスクは64%低下した と、Sci Rep( 2026;16:7171 )に報告した。(関連記事「 犬の飼い主は心血管リスクが低い 」)

TriNetX 登録の入院がん患者から各群2万7,631例を選出して比較

 近年、ペットとしての犬の飼育は、がん患者の長期生存における潜在的な保護因子として注目されつつある。最新の疫学調査では、伴侶動物の健康効果に対する社会的関心の高まりを反映して、米国の家庭における犬の飼育率は2012年の37.5%から2024年には45.5%へと上昇している。犬の飼育は、軽度の身体活動の促進、孤独感および社会的孤立の軽減、不安や抑うつ症状の緩和など、さまざまな機序を通じて飼い主の健康を向上させることが示唆されている。

 Preissner氏らは今回、「がんサバイバーでは、犬に接触していない者と比べ飼育者で5年生存率が高く、犬の飼育は死亡リスクの低下に関連する」との仮説を立て、傾向スコアマッチングを用いた後ろ向きコホート研究を行って検証した。

 世界最大規模のリアルワールド連合型データベースTriNetXに登録された入院がん患者(国際疾病分類第10版コード:C00-D49)から、犬の非飼育者(対照群)601万952例と飼育者(飼育群)2万9,490例を抽出。傾向スコアマッチングにより、各群2万7,631例(平均年齢52.2±21.2歳、女性60.8%)を選出した。

 主要評価項目は5年OSとし、リスク差(RD)、リスク比(RR)を算出。Kaplan-Meier法を用いた生存分析も実施し、犬の飼育が死亡リスクに及ぼす影響についてCox比例ハザード回帰モデルを適用してハザード比(HR)を算出した。

5年死亡率は9.6%vs.4.2%

 解析の結果、5年死亡率は対照群の9.6%(2,646例)に対し、 飼育群では4.2%(1,164例)と有意に低かった (RD 5.4%ポイント、95%CI 4.9~5.9%ポイント、P<0.001)。5年死亡リスクは対照群と比べ、 飼育群で有意に56%低かった (RR 0.440、95%CI 0.411~0.470)。

 Kaplan-Meier生存曲線を見ると、 5年累積生存率は対照群の87.12%に対し、飼育群では94.89%と有意に高かった (χ2=913.787、 図 )。生存分析の結果、5年累積死亡リスクは対照群と比べ、 飼育群で有意に64%低かった (HR 0.361、95%CI 0.337~0.386、全てP<0.001)

図.Kaplan-Meier曲線

犬の飼育でがんサバイバーの死亡リスク低下 5年累積死亡リスクが64%減・後ろ向きマッチドコホート研究

(Sci Rep 2026;16:7171)

散歩による持続的な身体活動、無条件の伴侶関係などが保護的に作用か

 がんサバイバーに対する犬の飼育による保護効果の機序について、Preissner氏らは〈1〉犬の散歩が日常の軽度身体活動を有意に増加させ、 持続的な身体活動が心肺機能の改善や筋萎縮の抑制に寄与してQOLや生存転帰に好影響 を及ぼす、〈2〉ペットがもたらす無条件の伴侶関係および情緒的支援・動機付けは、 孤独感や社会的孤立を軽減して疾病に対するより前向きな姿勢を促す 、〈3〉犬の飼育は 腸内細菌叢の変化を介して飼い主の生存転帰に影響を及ぼす -可能性を指摘。

 同氏らは研究の限界として、後ろ向き観察研究であり因果関係を直接推論することはできない、犬の飼育に関する詳細な情報は入手していない点などを挙げた上で、「大規模マッチドコホート研究により、犬の飼育ががんサバイバーの生存改善に寄与しうる保護因子であるという疫学的エビデンスを初めて提示した。ペットとの共生は、包括的ながん医療における有用な補完的要素として患者の予後およびQOLの向上に資する可能性がある」と結論している。(編集部・関根雄人)

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