インド科学技術省(MoST)は、使い捨てペットボトルから生じるナノプラスチックが、腸内細菌やヒトの細胞機能に悪影響を及ぼす可能性を示す研究成果を発表した。研究成果は学術誌Nanoscale Advancesに掲載された。

図:ペットボトルからナノプラスチックを合成し、その生物学的影響を評価する模式図。プロセスは、破砕、溶解、ナノプラスチックの合成を経て、腸内細菌、赤血球、A549上皮細胞における曝露試験へと進む。ナノプラスチックへの曝露により、検討した各モデル系で酸化的変化、形態学的変化、代謝変化が引き起こされた
(出典:PIB)

ナノプラスチックは近年、人体内で検出される例が増えている。一方で、これまでの研究は環境汚染や宿主組織への影響に焦点が当てられ、人間の健康維持に重要な役割を担う腸内細菌への直接的影響は十分に分かっていなかった。

インド科学技術庁(DST)傘下のナノ科学技術研究所(INST)の研究チームは、実験室内でペットボトルからナノプラスチックを再現し、腸内細菌、赤血球、ヒト上皮細胞という3つの生物学的モデルを用いて影響を評価した。

腸内細菌モデルには、腸内細菌の1種として知られるラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)を使用した。その結果、ナノプラスチックへの長期曝露により、細菌の増殖や腸内での定着能力、防御機能が低下した一方、細胞ストレス応答や抗生物質に対する感受性が高まることが確認された。

血液への影響を調べるため、赤血球を用いた評価も行った。高濃度のナノプラスチックに曝露すると、細胞膜が損なわれ、溶血性変化が生じた。さらに、ヒト上皮細胞を用いた試験では、長期曝露によりDNA損傷や酸化ストレス、アポトーシス、炎症性シグナル伝達、エネルギーおよび栄養代謝の変化が生じた。

これらの結果から、日常的に使用されるペットボトル由来のナノプラスチックは、腸の健康、血液の安定性、細胞機能に悪影響を及ぼす生理活性分子であることが示された。研究チームは、こうした影響がこれまで認識されてこなかった健康リスクにつながる可能性があると指摘している。

(2025年12月4日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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