
保護猫「ふく」=石黒さん提供
川北町の運送会社「日章(にっしょう)」で“広報部長”を務め、交流サイト(SNS)で人気の保護猫「ふく」を追った書籍「3本足の保護猫ふくは、運送会社の広報部長 ニャンと社員のあたたかなオフィス」(山と渓谷社)が出版された。ふくを取り巻く会社の日常が温かな目線で紹介される。執筆した著述家・編集者の石黒謙吾さん(64)=金沢市出身=は「動物を慈しむ心を広げたい」と話す。 (小室亜希子)
ふくは推定13歳の雌。2017年10月、会社近くで瀕死(ひんし)の状態でいたところを社員に保護された。右前脚は欠損し、全身は血と泥まみれ。動物病院で手当を受け回復した後、会社で飼うことになった。2022年に会社のインスタグラムを開設し、日常の様子を投稿し始めると徐々に人気が高まり、現在のフォロワー数は17万人を超える。
石黒さんは映画化もされたベストセラー「盲導犬クイールの一生」を執筆するなど、動物関連の仕事を多く手がけてきた。昨年12月にテレビ番組でふくを知り、「本に残さなければ」と決意。今夏2日間にわたり密着取材し、ふくと会社の日常を、撮り下ろしの写真やインスタグラムの画像とともに1冊にまとめた。
事務所を見渡す特別席で昼寝をしたり、デスクの上にどっしりと居座ったり。そんなふくをごく自然に受け入れ、スキンシップを楽しむ社員らの姿からは、明るく、風通しがいい職場の雰囲気が伝わってくる。同社によると、ふくの人気が高まるにつれて会社の業績がアップし、注目されることで社員の士気も上がっているという。
「人として当たり前のこととして(ふくの)命を救い、飼う決断をし、温かい心で接している。人間味を感じる会社」と石黒さん。飼い主の都合で捨てられたり、迷子になったりする犬や猫がいる。自身もそうした保護猫2匹と暮らしており「不幸な動物を減らすために、慈しみの心を持つきっかけにこの本がなれたら」と願う。
A5判、112ページ。1760円(税込み)。
