三浦市三崎 猫がつなぐ優しさの輪 保護活動に深まる理解〈横須賀市・三浦市〉

満腹のトラを抱く平塚さん(右)と高橋さん

吾輩たちは猫である。名前はトラ、ソックス、グレ、ガガ、マイケル、チビ――。

三崎漁港からほど近い花暮会館の周辺で、6匹の地域猫が暮らしている。仰向けの無防備な姿で気持ちよさそうに昼寝をしていたり、道行く人を目を細めて怪訝そうに見つめていたり。漁師町で気ままに暮らす様子がSNSなどで広まり、猫を目当てに訪れる観光客も増えている。

不幸な猫を救いたい

世話をしているのは、近くに住む高橋正樹さん。十数年前、体調不良で地域猫の世話を続けることが困難になった知人から、活動を引き継いでほしいと依頼を受けたことがきっかけだった。

当時から自宅でも猫を飼っていたが、「猫好きなのは妻。私はそれほど興味がなかった」。それでも、車にひかれたり、やせ細って死んでいる姿を地域で見るたびに胸を痛めていたこともあり、不幸な猫を減らしたいとの思いで引き受けたという。

病気や寿命で亡くなったり、どこからか新入りが現れたり。増減を繰り返す猫たちの診察や去勢手術にかかる費用は、高橋さんが身銭を切ってきた。月に5万円かかることも珍しくない。そんな生活が十年以上続く。

「『どうせ野良だから』と病院に連れていかなければ、ずっと後悔するから」。とはいえ、年金暮らしの高橋さんにとってその負担は小さなものではなく、「こんな老後になるはずじゃなかったんだけど」と嘆きながらも、その目は優しい。

寝床は月1万円

そんな高橋さんの相棒は、近くに住む根っからの猫好きな平塚祐一さん。毎朝4時に玄関先で「ニャーン」と鳴く猫が平塚さんの目覚まし時計だ。お決まりの場所で餌をあげると、その足で近所をまわってふんを拾い集め、念入りに掃除をする。これを朝晩欠かすことはない。猫好きな人ばかりでないことを理解しているからこそ、少しでもネガティブなイメージを払拭するためだ。

猫の寝床のために、使われていない米屋の倉庫を月1万円で借りた。古い毛布やタオルがあれば切りそろえ、寒さ対策用にストックを作る。「猫って忠実で、もうかわいくて仕方ないの」。トラは平塚さんの膝の上がお気に入りだ。

鮮魚店「まるいち」の女将・松本美智世さんは、ガガの名付け親。「足が細長いから」と、名前の由来はレディー・ガガだ。店には毎日のようにマイケルたちがおこぼれを狙って訪れ、干してあるサバを堂々と持っていかれることもあるが、「猫も一生懸命生きているんだもんね」。

人と猫が同じ地域で気持ちよく暮らせるために、高橋さんや平塚さんが続ける献身的な取り組み。地域の理解も少しずつ深まっている。

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