英語では、猫は気まぐれで身軽な動物として、数多くのことわざや比喩に登場する。猫のしなやかさやしぶとさから生まれた「nine lives(猫に九生あり)」という表現は有名だ。今回は、そん猫のしなやかさに関連し、少しブラックユーモアの効いた「dead cat bounce」という言い回しを紹介したい。

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■Dead Cat Bounce

 「dead cat bounce」とは、急落した株価や人気が一時的に持ち直す現象を指す。

 1985年、シンガポールとマレーシアの株式市場が、暴落後にわずかに回復したとき、イギリスの経済紙『フィナンシャル・タイムズ』の記者が「what we call a dead cat bounce(いわゆる死んだ猫の跳ね返り)」と表現したのが由来だ。

 翌年にはアメリカの経済アナリスト、Raymond F. DeVoe Jr.が、「50階から死んだ猫を落とせば、地面に当たって少しは跳ねるだろうが、それを生き返ったとは言わない」と述べ、これ以降、「dead cat bounce」は株価の一時的な上昇を指す金融用語として広く定着した。

 株価や為替が下落を続けるなかで、一瞬の反発が起きても、それが本格的な回復を意味するとは限らない。投資家がしばしば陥るぬか喜びを皮肉った表現である。

 その後この表現は、経済や金融業界を離れ、さまざまな分野で比喩として用いられるようになった。たとえば支持率が下がった政治家が、一瞬だけ人気を取り戻したときや、人気を失ったブランドが短期間だけ注目を集めるときなどが良い例だ。

■例文

 ・Investors realized that the brief recovery was just a dead cat bounce.

 (投資家たちは、その一時的な回復が単なる「死んだ猫の跳ね返り」だと気づいた)

 ・After the scandal, his short rise in popularity turned out to be a dead cat bounce.

 (スキャンダル後の一時的な人気回復は、結局、「死んだ猫の跳ね返り」に過ぎなかった)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)

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