2025年6月、衝撃的な事件が発覚した。熊本市のボランティア団体に所属する女性宅で、預かっていた猫100頭以上の死骸が見つかるという動物保護側の大規模多頭飼育崩壊だ。
「この報道を最初に耳にしたとき、私が住んでいる京都で2020年に起きた多頭飼育崩壊を思い出しました。事件の発覚後、次々とSNSに上がったあまりにも凄まじい現場の写真に最初驚きを超え、言葉も出ませんでした」
こう語るのは、長野県松本市の繁殖事業者の事件など、動物虐待事案の告発や、動物福祉向上に関する普及啓発活動を積極的に行っている『公益財団法人動物環境・福祉協会Eva』の主宰でもある俳優の杉本彩さんだ。
直近のデータはないが、2018年度に環境省が行った調査(※1)によると、多頭飼育(動物2頭以上)で住民から苦情が寄せられた件数(世帯数)は、1年間で2149世帯にのぼる。しかし、その数は今も不透明な部分、改善が進まない部分も多々あり、さらに動物保護活動をする側の多頭飼育崩壊も報道されるようになった。「動物を救いたい」という思いから始まった活動がなぜこういった結果を生んでしまうのか……。その闇と課題について、杉本さんに寄稿いただいた。

※1:令和元年度社会福祉施策と連携した多頭飼育対策推進事業アンケート調査
以下より、杉本彩さんの寄稿。
動物ボランティアが起こした2大事件
熊本の件をお話する前に、2020年に発覚した京都の多頭飼育崩壊についてお伝えしたい。事件が発覚したとき、私も含め、全国の動物愛護団体や活動家は震撼させられた。
京都府八幡市在住の動物保護ボランティアの女性は、当時25年ほど前から、犬や猫を引き取る活動をしていた。年間200頭くらいの犬猫を引き取っていたそうで、ボランティアの間では、どんな犬や猫でも保護を断らない「神ボラ」として崇められ、関西だけでなく関東の団体も、この「神ボラ」に犬や猫を預けていたそうだ。
だが、その後預けた犬猫の状態を確認するために訪れた動物愛護団体から「中がゴミ屋敷になっており、犬や猫数十頭の死骸が放置されている」と110番があり、この事件が発覚した。室内は、天井近くまで糞尿や死骸、生活ゴミ約16トンが積み上がり、52匹の犬や猫の死骸が確認されたという悲惨極まりない事件だ。
しかし、今年起きた熊本市の事件の被害数は、その京都八幡事例の数をはるかに超えたものだった。
事件の概要は次の通りだ。2025年5月末、相談者から「動物愛護団体に所属する女性のところに、譲渡した猫を引き取りに行ったら、皮膚の一部が剥がれ死んでいた。他にも虐待の形跡がある」と動物愛護センターに通報があったことから始まる。その後、動物愛護センターのスタッフが現地を確認し、生存している猫12匹を保護。死亡した猫は、事件発覚当初100匹前後や約130匹との報道だったが、調査の結果、最終的に150匹を超える猫の死亡が確認された。愛護団体による史上最悪の虐待事件だ。
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事件の当事者である女性は、「預かる猫が増えて手間や費用がかかるようになり、飼育が面倒になった」と供述している。所属する動物愛護団体代表は、「このような状況に気づくことができず、大変申し訳ない。責任を感じるとともに大変重く受け止めている」とコメント。熊本市は、6月に動物愛護法違反の疑いで熊本県警熊本北合志署に刑事告発し、9月に同法違反(虐待)の疑いで女性を逮捕した。
