ローマ(CNN) ゲーム好きで猫や犬の動画制作を楽しんでいた少年が7日、ミレニアル世代(1981~90年代半ば生まれ)として初めてキリスト教カトリック教会の聖人に列せられた。

聖人となったカルロ・アクティスさんは2006年、白血病のため15歳で亡くなった。生前はコンピューターのスキルを駆使してカトリックの教えを布教し、奇跡が起きたという報告を記録するウェブサイトを開設していた。

アクティスさんのニックネームは「神のインフルエンサー」。デジタル世界で教会の伝道活動を行った先駆者とされている。

肖像画などに描かれたアクティスさんはいつもジーンズにTシャツ、スニーカー姿。昔ながらの聖人とは全く違うスタイルで、親しみやすい聖人として世界中の若者から支持を集めていた。

アクティスさんとともに、1925年に24歳で死去したピエル・ジョルジョ・フラッサーティさんも聖人に列せられた。列聖式は7日、バチカン市国のサンピエトロ広場に集まった数千人の若者と共に、ローマ教皇レオ14世が初めて執り行った。

集まった信者らはアクティスさんの写真をあしらった横断幕や旗を掲げ、アクティスさんを聖人の列に加えるとレオ14世が宣言すると、大きな拍手と歓声が巻き起こった。

カトリック教会といえば幹部は全員が男性でほとんどが60歳以上。若い世代への働きかけが課題になっている。聖職者による未成年や弱者の成人に対する性的虐待は、教会に対する信頼を大きく失墜させた。

アクティスさんの母親のアントニア・サルツァーノさんは、息子の生き方や信仰が若い世代、特に複雑なデジタル世界を渡り歩く若者の心に響いたと指摘する。

「カルロは希望のメッセージ。『(インターネットは)良いことのために使わなければならない』と言っている。だからこそフランシスコ教皇は、カルロを神のインフルエンサーと呼んだ」とサルツァーノさんはCNNに語っていた。

アクティスさんはインターネットの「闇」のことを知っていて、ゲームの中毒性も認識し、プレイステーションでゲームを楽しむのは1週間に1時間だけと決めていたという。

「カルロはよく言っていた。誰もがオリジナルとして生まれながら、コピーとして死ぬ人が多いと」「私たちは一人ひとりが特別な存在で、召命や使命がある。神が私たち一人ひとりのために闘ってきたこの使命を私たちが理解しなければ(中略)私たちは他人のコピーのような状態で終わってしまう危険がある」

アクティスさんの人生は、「一部の人だけでなく」誰もが聖者になれる可能性があることを表しているとサルツァーノさんは言う。

アクティスさんは英ロンドンで裕福な家庭に生まれ、父親がイタリアの保険会社の会長に就任したことからイタリアのミラノで人生の大半を過ごした。スポーツ好きでユーモアのセンスがあり、飼い猫や飼い犬を登場させた「スター・ウォーズ」風の楽しい動画を作ったり、さまざまな動物の声を担当したりしていたという。

幼い頃から信仰心は強く、ミラノのホームレス支援のために小遣いを使ったり、いじめられていた同級生のために立ち上がったり、両親が離婚した同級生を助けたりしていたという。

列福式で公開されたカルロ・アクティスさんのタペストリー=2020年10月10日、イタリア・アッシジ/Vatican Pool/Getty Images
列福式で公開されたカルロ・アクティスさんのタペストリー=2020年10月10日、イタリア・アッシジ/Vatican Pool/Getty Images

ジーンズにナイキのスニーカー、カジュアルシャツ姿でイタリア・アッシジの墓地に安置されたアクティスさんの様子は、ライブカメラを通して見ることができ、墓参に訪れる若い信者らが後を絶たない。昨年は100万人近くが訪れ、今後はさらに増える見通しだという。

アクティスさんが聖人に列せられたスピードは異様に早かった。通常であれば検証には長期間を要し、時には数世紀に及ぶこともある。カトリック教会で聖人と認められるためには通常、二つの奇跡を起こす必要があるとされ、バチカンが任命した医学の専門家や神学者のチームがそうした奇跡を検証する。

アクティスさんが福者と認められたのは2020年。最初の奇跡は、先天性の障害のため普通に食事を摂ることができないブラジルの少年を癒やしたこととされる。母親がアクティスさんに神の助けを祈ったところ、この少年が癒やされたと伝えられている。

二つ目の奇跡は、イタリアのフィレンツェで自転車に乗っていて転倒し、頭部に外傷を負ったコスタリカ出身の留学生の少女に関係している。少女の母親は、アクティスさんの墓前で娘の回復を祈ったという。

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