9月5日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では、アニメーション映画『ペット2』が本編ノーカットで放送される。『ミニオンズ』シリーズや『SING/シング』を手がけたイルミネーションの大人気シリーズ第2弾として、ニューヨークを舞台に飼い主の留守中に街へ飛び出したペットたちの大冒険を描く本作は、個性豊かなキャラクターとテンポの良いストーリーで幅広い層から支持を集めてきた。

 物語の中心となるのは、マンハッタンで飼い主ケイティに愛されて暮らすテリア系のマックスと、大型犬のデューク。2匹の声を演じるのは、お笑いコンビ・バナナマンの設楽統と日村勇紀だ。コンビならではの息の合った掛け合いはもちろん、犬らしい息づかいや走る際の細やかな表現まで巧みに盛り込み、キャラクターに自然で親しみやすい魅力を与えている。

『ペット2』©2019 Universal City Studios Production LLLP. All Rights Reserved.

 バナナマンの2人はこれまでも『それいけ!アンパンマン よみがえれ バナナ島』(2012年)や『ミニオンズ』(2015年)といったアニメ映画で声優に挑戦してきた。特に『ミニオンズ』では、ミニオンたちが旅の途中で出会う「ネルソン一家」を演じ、そのユニークな存在感で観客に強い印象を残した。こうした経験の積み重ねが、『ペット2』(2019年)で見せる自然体の芝居へとつながっているのだろう。

 近年の吹き替え作品では、俳優やタレントがキャスティングされるケースが目立つ。そのたびに「プロの声優でないと違和感があるのでは?」という声が上がる一方で、本業で培った表現力を声の芝居に活かし、プロ顔負けの演技を披露する芸能人も少なくない。『ペット2』の放送を機に、“声優級の腕前”を見せてきた芸能人たちの名演を振り返ってみたい。

 アニメーション吹き替えの中でも、特にピクサー&ディズニー作品での芸能人起用は印象深いのではないだろうか。『トイ・ストーリー』シリーズ(1995年~2019年)のウッディを務める唐沢寿明は、まさに日本語版の顔とも言える存在だ。快活で人情味のある芝居は長年のファンにも愛され続け、シリーズを通じて一貫してキャラクターの魅力を支えてきた。

『トイ・ストーリー』©1995 Disney Enterprises, Inc. / Pixar. All Rights Reserved.

 『モンスターズ・インク』(2001年)でマイク役を担当した爆笑問題・田中裕二の演技も素晴らしかった。持ち味である軽快なトークと甲高い声質を活かし、陽気でお調子者のマイクをユーモラスに表現している。相棒サリーとの掛け合いにも自然なテンポがあり、芸人ならではのリズム感が見事に活きているのが分かる。

『モンスターズ・インク』©DISNEY/PIXAR

 そして多くの視聴者の視線を釘付けにしたのが、『アナと雪の女王』(2013年)でエルサを演じた松たか子だろう。歌と芝居を両立させた代表例として、劇中歌「Let It Go」は日本を越えて世界で注目を集めた。声優業を本業としない俳優が作品を国際的ヒットへ押し上げた、まさに稀有なケースと言える。

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リアルサウンド 映画部

同じく“歌”がキーになる作品では、『ウィッシュ』(2023年)で福山雅治と生田絵梨花が声を担当したことも記憶に新しい。王国を支配するマグニフィコ王を演じた福山は、落ち着いた低音に威厳と冷徹さをにじませ、物語の緊張感を引き締める存在となった。一方、ヒロインのアーシャを演じた生田は、舞台仕込みの歌唱力と透明感あふれる声で、希望を託すキャラクターの魅力を鮮やかに表現。二人の芝居と歌声が対照的に響き合い、作品全体を牽引していた。

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