バッテリー内蔵でどこでも使えるモバイル高圧洗浄機、ケルヒャー「OC Handy Compact(ハンディエア)」
高圧の水で勢いよく汚れを落としてくれる高圧洗浄機。泥やコケなどのこびりついた汚れを落とすのに便利なアイテムだが、使うには水道のホースと電源ケーブルをつなぐ必要がある。一軒家ならまず問題ないのだが、マンションや屋外(キャンプ場など)で使いたいとき、この2つを揃えるのは難易度が高い。
そんなシーンで活躍するのが、ケルヒャー「OC Handy Compact(通称:ハンディエア)」だ。バッテリーを内蔵していて、バケツやペットボトルに入れた水を用意すれば、持ち歩いてどこでも使える。本体もコンパクトで折りたたんで収納できる、ハンディタイプの高圧洗浄機だ。Makuakeで先行販売されたものの即完売して話題になり、いよいよ9月15日から全国の量販店や通販サービスなどで一般販売が始まる。価格は1万3620円(税別)。
一見電動ドリルのようにコンパクトな「OC Handy Compact」
グリップを折りたたむことが可能。収納時にコンパクトになる
コンパクトゆえ高圧洗浄機の汚れ落とし能力の指標と言ってよい最大水圧は、1.5MPaとやや低めに抑えられている。これがどの程度使えるのか気になるところだ。同社では「帰るまえに、10秒ケルヒャー」というキャッチフレーズで、自転車やベビーカーの汚れ落としなど玄関先などで、サッと使う用途に最適としている。
もう少しサイズが大きくてもよいなら、ガッツリ使える2.4MPaの兄貴分モデル「OC 5 Handy(ハンディジェット)」もある。こちらはバッテリーが着脱式で急速充電可能だが、折りたたみ収納はできない。
本体の防水性能は「IPX4」となっていて、これは「あらゆる方向からの水の飛まつを受けても有害な影響を受けない(防沫形)」ということになる。実際に使ってるとバンバン水が跳ね返ってくるが、これで濡れても問題ない。バケツに貯めた水に水没させてしまうとアウトなので、その点は注意しながら使うようにしよう。
水は、バケツかペットボトルを装着して供給する。ペットボトルアダプターは吸い上げホースが2Lサイズに合っているので、2Lペットを用意しよう。満水時のペットボトルと本体の重量バランスはよくないが、だいたい1分くらいで水はなくなる。
バケツだと約20L程度使えるので、この方がより実用的だ。ガンが軽く持ちやすいこともあり、基本的にバケツで使うことをオススメしたい。水道蛇口に直結する作りにはなっていないので、水道が近くにある場合、蛇口の下にバケツを置いて使うといいだろう。少し出しながら使うか、なくなりそうになったら追加すればよい。
一般的に高圧洗浄機は、用途に応じて先端のノズルを差し替えて水流のパターンを変える。この「OC Handy Compact」は、4つの水流パターンモードを1つのノズルにまとめた「4 in 1ノズル」を装着し、先端を回転させることで水流パターンを変更できる。付け替えるよりも簡単だ。
選択する水流パターンによって、汚れの落ち方はだいぶ違ってくる。多くの汚れ落としに対応するのが「標準」で、そのまま下向きにしたのが「傾斜」で床面などに当てやすくなる。一点突破型の「ポイントジェット」は、石材などにこびり付いた汚れやコケなどを強い水流で落とすのに向いている。「シャワー」は弱めの水流で軽く水に濡らす時に便利。ホースで水をまく感じに近い。
この4つのモードに対し、それぞれ「ブースト」と「エコ」の2段階のモードで強弱を切り替えることができる。スイッチは本体後ろに「ECO」と書かれており、押すとリング状のランプが「エコ」は白、「ブースト」は黄色に点灯する。ランプは炎天下では確認しにくかったが、切り替えれば水の勢いが変わるので判断できるだろう。バッテリー残量が少なくなると点滅する。またこのランプは、充電時の状態を示す用途も兼ねている。
ブースト時は最大圧力で噴射され、エコは使用水量を24%、消費電力で54%削減するモードだ。落ちが十分なときは、極力エコに切り替えることが、長時間使うポイントになる。標準水流のブーストで約12分、エコなら倍の約24分使うことができる。
バケツで水を供給するのが実用的。ホースをフチにとめるクリップも付属する
ケルヒャー OC Handy Compact、「ブースト」で各モードを試してみた
ブースト時にどの程度使えるのか、2Lペットボトルで動作時間を実際に計測してみたので、参考にしてもらいたい。ブースト時は総じて、公称値よりも長く使えている。別掲の表は、実際の利用に合わせて「5分間噴射して1分程度休憩」を繰り返して、休憩時間を抜いた総時間になっている。秒以下は四捨五入した。
各モードの解説と「ブースト」の連続使用と2Lペットボトルの実測時間
2Lペットボトルとペットボトルアダプターを使えば、完全にフリーなコードレス状態で使うことができる。おおよそ1分程度の短時間だが、これが可能なのは水源が用意できない場所で非常に便利だ。今回用意した2Lペットボトルは「い・ろ・は・す 天然水」の2Lボトル。問題なくペットボトルアダプターに装着できた。
ペットボトルアダプターを使って2Lペットボトルを装着したところ。このまま単独で使える
網戸の掃除に使ってみた。2L満水で1分弱程度使える
サッシの泥汚れを落とすのは大得意
ベランダの汚れや掃き出し窓にある網戸の洗浄は、得意中の得意だ。網戸をブラシでこする必要もなく、標準もしくは傾斜のブーストで、水流をかけるだけで気持ちよく汚れが落ちる。手に入れたら、夏の終わりにまずはこれを試してみてほしい。2枚の網戸くらいは余裕でバッテリーは持つ。ついでにサッシの泥汚れも、勢いよくキレイになる。
また、高圧洗浄機といえば洗車作業だろう。どの程度までキレイになるのか、コンパクトカーで試してみた。主に使ったモードは傾斜で、これが洗車には使いやすい。エコで軽く全体のホコリを流したあと、洗浄剤ノズルにケルヒャー純正の洗浄剤「3 in 1ウルトラフォームクリーナー」を装着。ホイール含めて全体を泡まみれにして、スポンジで汚れ落とし、ブーストでのすすぎを行なった。この泡まみれ状態を作ることができるのも、高圧洗浄機を使った洗車での大きなメリットだ。ノズル詰まりを起こさないように、純正洗浄剤の使用が推奨されている。
泡だちが結構強力なので、最後のすすぎ洗いを傾斜のブーストでかなり入念に行なったが、それでも最後までバッテリーが切れることはなかった。エコではちょっと落ち方がもの足りなく感じた。
軽やコンパクトカーなら、とりあえずバッテリー持ちは問題ない感触だ。もちろんAC接続タイプの高圧洗浄機ほどの勢いはないが、泡を作ることはもちろん、汚れによっては近づけることで標準や傾斜のブースト水流で泥汚れもだいぶ落ちる。
あわせてバイクの洗車にも使ってみたが、こちらは標準のエコがちょうどいい案配だ。バイクはあまり強力な水流を当てない方がいいので、弱め水流がちょうどよかった。
洗浄剤ノズルにケルヒャー純正の洗浄剤「3 in 1ウルトラフォームクリーナー」を入れて洗車の準備
「3 in 1ウルトラフォームクリーナー」で車体を泡まみれに
泡で汚れを包んで落とす。「傾斜」の「ブースト」でイイ感じで落ちる
バッテリーが残ったので、バイクも同様に洗ってみた
バイクには弱めの「エコ」がちょうどいい勢いだ
内蔵バッテリーの取り外しはできず、充電には約3時間ほどかかり、充電しながら動作させることはできない。接続はUSB Type-Cだが、充電器の出力が高くても5Vの2A以上では急速充電されない仕様だ。
つまり、バッテリーが切れた時点で作業を終了することになるので、15~30分以上を連続して使いたいなら、兄弟モデルのOC 5 Handyでバッテリーを交換しつつ運用するか、コードレスではない従来型のK型番が適している。
今回試したように、小さめの自家用車やバイクの洗車、数枚の網戸は問題なくできる。自転車、ベビーカー、シャベルやカマなど園芸道具、ベランダや玄関先の階段なども問題ないはずだ。逆に大型のSUVや広い壁・塀、長い石畳などは一度で洗いきれない可能性がある。
とはいえ、一般的な高圧洗浄機は、ホースと電源ケーブルをセットするまでが(片付けも)めんどうなので、家庭での使用頻度が落ちてしまうのが難点だが、「OC Handy Compact」なら、充電さえ済ませておけば、水を用意するだけで使える手軽さがある。
ちなみに我が家には高所に窓があって、いつも窓拭きには苦労するのだが、今後延長棒のアタッチメントなどが用意されると、高所作業でさらに使いやすくなると思った。もちろんハシゴで高所に持っていけば現状の本体だけで作業できる。高い場所を水洗いするのに持っていきやすいのは、大きなメリットになると感じた。
自宅などでクルマの洗車をするときも、必ずしも庭先にコンセントが近くにあるとは限らない。水さえ確保できれば洗えるのは、かなり自由度があがるはず。本格的な洗浄でなくても、泥道を通ったあとにホイールや下回りだけ軽く泥を落としておきたいとかで、気軽に使い出せるのがありがたい。使わすに放置してしまうのはバッテリーによくないので、もし手に入れたら、日常的な汚れ落としに、玄関先やガレージでガンガン使い倒してみてはいかがだろうか。

