段ボールハウスで暮らす2匹の猫

2020年に一般社団法人「ワタシニデキルコト」(ワタデキ)を設立した動物保護活動家・坂上知枝さんに、これまで出会った保護犬猫とのエピソードを語っていただく連載の後編。坂上さんらは「人間の都合に振り回される動物を救いたい」と、東京・千葉・福島を中心に活動している。 

前編「『猫に餌はあげるけど病院には連れて行かない』無責任な餌やりに振り回される病気の地域猫の悲しみ」では、以前レスキューした後、坂上さんが信頼し、「猫の楽園」と呼ぶ預け先で穏やかな生活を送っていたもと野良猫の「縁蔵」の訃報と、無責任な餌やりが招く問題についてお伝えした。

前編「『猫に餌はあげるけど病院には連れて行かない』無責任な餌やりに振り回される病気の地域猫の悲しみ」を読む。

後編では、そんな坂上さんが実際に関わった「段ボールハウスで暮らす2匹の猫」の救出と、その後の運命を追う。

長年の餌やりさん「愛情はあるが引き取れない」

2023年2月に坂上さんの妹が犬の散歩に行った際に発見したのは、猫が住んでいる段ボールハウス。そこには、警察による『近日、撤去します』と書かれた紙が貼られていた。坂上さんらは、警察と区役所には、「段ボールを建てた人を探し、見つからなければワタデキが引き取る方向で対応する」と申し入れ、近所に聞き込みし、また段ボールハウスに「連絡がほしい」と、最初に段ボールハウスの存在に気づいた妹の電話番号を書いた貼り紙をした。

撤去ぎりぎりのところで、「もう10年餌やりをしている」という餌やりさんから連絡が入ったが、愛情はあるが引き取れない、2匹のうち片方の、白い猫の耳がただれているが、蚊のアレルギーだから病院に連れていく必要はないという。

坂上さんらが捕獲した段ボールハウスに住む白猫。写真提供:ワタシニデキルコト

「そんな猫たちの状況を知って放っておくわけにはいきません」(坂上さん、以下同)

坂上さんたちは、2匹の猫を救うために動き出す。しかし、餌やりさんとの連絡が滞り、無為に時間が過ぎていくなか、白い猫の耳の状態はどんどん悪くなっていった。

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