筆者の愛猫クロベ。腎臓の数値が悪化し始めた頃

「腎臓病のネコを元気で長生きさせるAIM猫薬」の開発を行う一般社団法人AIM医学研究所の宮﨑徹所長は、人間に対する治療薬の研究開発も同時に進めている。

「ヒト薬の非臨床試験もシームレスにスタートさせたい」と語る宮﨑所長は、2023年に治験と認可申請を主導する株式会社IAM CATを設立し、製薬事業も手がけることでネコ薬もヒト薬も最短で患者に届ける体制をつくった。

 今回は、動物と人間の創薬に携わる中で経験した苦労や展望について、宮﨑氏に聞いた。

ネコ薬の臨床試験に向け農林水産省もバックアップ

――前回のインタビュー*1では、動物薬を取り扱う農林水産省での手続きに懸念があると話されていました。

*1 すべての愛猫家が待望、あの「画期的ネコの腎臓病治療薬」開発の現在(2023.9.28)

宮﨑徹氏(以下、宮﨑) それが、とてもスムーズに進みそうです。動物用医薬品等の製造販売承認申請の手続きにはヒアリングという段階があり、事前相談やチーム相談があります。事前相談は薬事申請までのさまざまな相談を、チーム相談は農水省の担当者たちとベストな治験・ベストな薬事申請を相談しながら作り上げていくものです。私たち製造者に農水省が薬事申請まで伴走してくれる体制なので、このままいけばネコ薬の治験を25年春に開始できる見込みです(*現在、全国26病院で実施中)。

 従来の治験とは違う方法をいくつか提案しています。そのひとつは、通常プラセボ群という薬を投与しないグループを比較対象として置くのですが、腎不全末期のネコちゃんになんの治療も施さないという残酷なことになります。その段階では、半年間で約半数が死に至るというデータを現在査読中の論文にまとめているので、これをプラセボ群の代わりとし、治験ではすべての被験ネコにAIMを投与することを提案しました。

 また、本来は最低30頭の治験ネコが必要とされますが、予備的な臨床研究で数匹でも生存率の差が出ることがわかっているので、統計学的に有意差をつけるのであれば、なるべく少ない頭数でやらせてほしいという提案もしています。なるべく犠牲となるネコちゃんを少なくして、短期間で審理をしてもらいたいという思いからです。

 今でこそ農水省との作業はスムーズに進められていますが、初めてのチーム相談の前日は緊張したのか、疲労が蓄積していたからなのか、生まれて初めて不整脈が出ました。あまりにも苦しかったので当日の午前中に循環器科を受診して、ホルター心電図をつけたまま農水省に行きました。

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