
とても人懐っこかったアオ(「さくらの里山科」で)
申しわけありませんが、今回のコラムでは個人的な思いをつづらせていただきます。まあ、そもそも普段から、私自身の考えを自由に書き散らかしているようなコラムなのですが、今回は完全に私個人の思いになってしまいます。ご了承下さい。
ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」で暮らしていた保護猫のアオが先月、虹の橋へ旅立ちました。“享年”16歳(推定)でした。
アオは私にとって特別な子でした。そして、昨年8月に虹の橋に旅立った、同じく保護猫のクロも私にとって特別な子でした。この1年間で私の大切な猫たちが相次いでいなくなってしまったのです。大変寂しいです。とても悲しいです。アオとお別れした時は涙が止まりませんでした。
もちろん、ホームで暮らす猫たち、そして犬たちは全て大切です。どの子もみんなかわいいです。ただ、それでも、特に私を慕ってくれる子が、特にかわいくなってしまうのは人情です。これはどうしようもありません。
アオをホームに迎え入れたのは2021年の3月のことです。とってもきれいな猫で、おそらくは純血種のロシアンブルーだと思われます。とっても人懐っこく、とっても賢い、良い子なので、なぜこんな子が保護猫、すなわち保健所にいたのか不思議になってしまいました。
無論、きれいじゃない猫なら、人懐っこくない猫なら、賢くない猫なら捨ててよいという意味ではありません。どんな猫だって捨てるなど許されることではありません。ただ、アオみたいな子をなぜ手放したのか、疑問と憤りを感じてしまいました。
私を慕ってくれる特別な猫になったアオ

アオを肩に乗せてユニットの中を回る若山施設長
人懐っこいアオは、ホームにやってきた初日から、いろいろな入居者のベッドに潜り込んでは寄り添って寝ていました。初めて会う職員にも抱っこをせがんでいました。
私が、アオがいるユニット(区画)に行くと、いつも玄関まで小走りで迎えに来てくれました。私の足に体をこすりつけて甘えるアオを抱き上げると、喜んで喉を鳴らしながら肩によじ登り、頬ずりしてきます。そのままアオを肩に乗せて、ユニットの中を回るのが習慣になりました。
私は、ユニットに配属された職員と違って、ユニットにはたまに訪れるだけです。それでもアオは私のことを認識して、私の顔を見ると、いつも大歓迎してくれました。まあ、おそらくアオにとって、私は20番目に好きな人ぐらいの位置づけだったと思いますが。私にとっては、私を慕ってくれる特別な猫になりました。
残念ながら、ホームでアオが元気に過ごせたのはわずかな期間でした。アオがホームにやってきた時はすでに12歳。もう高齢猫の年齢になっていました。猫は高齢になると腎臓を悪くする確率が非常に高くなります。アオも14歳で腎臓病になってしまい、だんだん元気がなくなっていきます。
それでもアオは、人が大好きでした。ぐったりしていても、なでられれば喜びました。ちょっと調子がいい時は、抱っこしてとせがんできましたし、抱っこすれば肩によじ登ってきました。
何度か病状が悪化して、ご飯が食べられなくなりましたが、そのたびに回復してくれました。今年の3月にも、何も食べられない、水も飲めないという状態になり、もうダメかと思ったのですが、頑張って回復してくれました。
しかし、この時点で主治医の獣医師さんからは、こんなに腎臓の数値が悪いのに、自力で食べて、歩いているなんて信じられないと言われていたのです。それでもさらに2か月間、アオは頑張って生きてくれました。職員に甘え、入居者に寄り添ってくれました。最期の2か月間は、アオが私たちにくれたプレゼントだったのかもしれません。いえ、違いますね。アオが私たちと一緒に過ごした4年間の日々全てが、アオからのプレゼントだったのです。
