東京オリンピック、レスリング女子53キロ級で初出場の向田真優選手が金メダルを獲得しました。
向田選手は、5日行われた1回戦と2回戦、それに準決勝を勝ち上がり、6日の決勝でおととしの世界選手権3位の中国の※ホウ倩玉選手と対戦しました。
向田選手は前半、タックルに入ったところをうまくかわされてバックをとられるなどして、0対4とリードされる苦しい展開になりました。
向田選手は、後半は相手の堅い守りをかいくぐって攻めの姿勢を貫き、ポイントを重ねて5対4で逆転勝ちしてオリンピック初出場で金メダルを獲得しました。
試合のあと、向田選手はコーチで婚約者の志土地翔大さんと涙を浮かべながら抱き合って喜びを分かち合っていました。
レスリング女子53キロ級は、銀メダルを中国の※ホウ倩玉選手、銅メダルをベラルーシのワネサ・カラジンスカヤ選手と、モンゴルのボロルツヤ・バットオチル選手が獲得しました。
※「ホウ」は「まだれ」の中に「龍」。
「最後は気持ちで戦った」
向田選手は試合のあと、「絶対に勝つという思いを持ち続けて、最後まで気持ちを切らさなかった。自分のレスリングはできていなかったが、最後は気持ちで戦った」と涙ながらに話しました。
そして、コーチで婚約者の志土地翔大さんについて「いつも励ましてもらった。この大会で優勝することを目標にしてきたので本当にうれしいです」と話しました。
「本当にたくさんの人に感謝」
向田選手は、表彰式では落ち着いた表情で金メダルを受け取ってみずから首にかけ、そのあとは何回もメダルを見ていました。
そして、そのメダルをコーチで婚約者の志土地翔大さんに掲げてもらいながら、2人で報道陣の写真撮影に笑顔で応じていました。
表彰式のあと、向田選手は「本当にたくさんの方々にサポートしてもらってこの舞台に立てました。コーチと2人の力では取れなかったメダルだと思うので、本当にたくさんの人に感謝しています」と話しました。
そのうえで、「オリンピックに出るまでに楽しいことだけではなくて苦しいこともたくさんありましたが、この日のために頑張ってきたので、その成果が出せて本当によかったと思います」と振り返っていました。
志土地翔大コーチ「頑張りが報われて最高の気分」
向田選手のコーチで婚約者の志土地翔大さんは「真優の頑張りが報われて最高の気分です。ここまでの頑張りを振り返って、ぐっとくるものがありました。『よく頑張ったね』とそれしかありません」と目を潤ませながら喜びを語りました。
そのうえで、「セコンドとしてサポートさせてもらう態勢を作ってもらって、いちばん近くで真優のオリンピックを支えることができました。感謝でいっぱいです」と話していました。
「後半に逆転を許す」という課題を克服
オリンピック3連覇を果たした吉田沙保里さんが前回、2016年のリオデジャネイロ大会で優勝を逃した女子53キロ級。
この階級を「ポスト吉田」として引き継ぐ重責の中で、向田真優選手はオリンピック初出場で金メダルを獲得しました。
その最大の要因は、「後半に逆転を許す」という課題を克服したことでした。
向田選手は吉田さんと同じように攻撃力が持ち味です。ただ、2人は少しタイプが違います。
吉田さんは「高速タックル」と呼ばれるようにスピードを生かしタックルを決めてポイントを奪いました。
向田選手は、多彩なテクニックを駆使して相手の隙を突く勝負勘が際立つタックルを見せます。
そして、世界選手権で2個の金メダルと2個の銀メダルを獲得し、世界トップクラスの実力を発揮してきました。
一方、国際大会では、「前半でリードしながら守りに入って後半に逆転される」という試合がたびたびありました。
向田選手は「負けた試合はどれも後半に動きがピタリと止まってしまう。負けるときは気持ちで負けている」とみずからの課題を自覚していました。
どんなにプレッシャーがかかる場面でも弱気にならず、最後まで攻めきる精神的な強さを身につけようとトレーニングを重ねてきました。
さらに、この1年はディフェンスの強化に取り組んできました。
コーチとともに何回もみずからの試合などの動画を見ました。
そして、ポイントを奪われたときに自分がどういう動きをしているかを分析し、相手の攻めを封じる動きを研究しました。
今大会、向田選手のディフェンスは非常に安定していました。
試合の後半を含めて大きくポイントを奪われる場面は少なく、課題を克服していることを示しました。
一方、持ち前の攻撃力は健在で、タックルで相手を倒したあと、寝技でポイントを重ねる得意のパターンで勝ち進み、決勝では中国の選手に4点をリードされる苦しい展開から攻め込んで金メダルを獲得しました。
自分の弱点に正面から向き合った向田選手。
「ポスト吉田」と大きな期待を受けてきた24歳が大舞台で進化した姿を見せました。
女子53キロ級で五輪3連覇 吉田沙保里さん「後輩続きうれしい」
向田選手が金メダルを獲得した女子53キロ級の第一人者としてオリンピック3連覇を果たした吉田沙保里さんは「きょうの試合を見てびっくりした。久しぶりに見たが、果敢に攻めて最後まであきらめない気持ちがあり、ポイントを取られてもしっかり取り返した。今まで弱気だった部分が強気に変わって初めてのオリンピックでその気持ちで戦えたことはすごく成長していると思った」と戦いぶりをたたえました。
そして「私は引退して次は新しい子たちが成績を残し、名前を残してくれたらうれしい。後輩たちが続いてくれることで 女子のレスリングの強さが保たれるので、きょう優勝してくれてうれしい気持ちです」と話していました。
引用:NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210806/k10013186541000.html?utm_int=news-sports_contents_list-items_035 .

WACOCA: People, Life, Style.