緊迫する中東情勢を受け、インド経済が大打撃を受ける懸念が出ている(写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 インドの通貨ルピーは3月4日、対ドルで初めて1ドル=92ルピー台となり、史上最安値を更新した。中東産原油の供給支障に起因する原油価格の高騰が、複数の経路でインド経済に悪影響を与えるとの懸念が広がったからだ。

 最初に挙げられるのは、原油高はガソリンを始めとする日用品の価格上昇につながり、沈静化しつつあるインフレを再燃させることだ。

原油の8割以上を輸入

 成長著しいインドは原油需要の8割以上を輸入に依存しているため、原油高が経常収支赤字をさらに拡大させることもマイナス要因だ。

 また、原油高を嫌気して世界的にリスク回避の姿勢が強まれば、海外投資家がインド株式市場から資金を引き揚げる動きにもつながる。

 専門家は「原油高の影響は、実需統計に現れる前に為替相場に先行して反映されているのではないか」と指摘する。

 紛争が長期化すれば、経常収支の赤字拡大やインフレ、成長率の鈍化を通じてインドのマクロ経済見通しはさらに悪化することになるだろう。

 インド準備銀行(中央銀行)が5日に大規模な介入を行ったことでルピー安は止まったものの、その後も1ドル=91ルピー台後半で推移している。原油高が続けば、再びルピー売りが起きる可能性は十分にある。

 飛ぶ鳥を落とす勢いのインド経済だが、アキレス腱は通貨安だ。

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