ベッツが証言、前回2023年大会は「人生で最高の野球体験だった」
米国内では3月5日から17日にかけて開催される第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への期待が高まっている。
2023年の前回大会は、米国内および世界市場において視聴率と観客動員数の記録を塗り替えた。フォーブス誌は、日本対米国のカードとなった決勝戦の米国での視聴者記録更新について「(テレビ中継を担当した)フォックス系列プラットフォームで520万人の視聴者を記録し、最終15分間では650万人に達した。この数字は2017年比69%増となった」とリポート。さらに日本では、第1ラウンドの韓国戦での全国視聴人数が6200万人だったと伝えられている。
WBC人気の高まりは、ファンだけでなく米国の選手たちの言葉にも表れている。
「最高だった。(WBCは)人生で最高の野球体験だった」
これは、米ポッドキャスト番組「On Base with Mookie Betts」で、アメリカ代表で主将を務めたマイク・トラウト外野手(エンゼルス)と語り合ったムーキー・ベッツ内野手(ドジャース)の言葉だ。そして、2人のスーパースターは、アメリカの一流選手たちとともにプレーし、互いの野球知識を共有し、チームとして戦う楽しさと有益さ、何よりも自国を代表することの意義を番組内で振り返っている。
残念ながら今大会は家庭の事情で出場辞退を表明しているベッツだが、前回大会の経験を「プレーオフよりも良かった」と表現。一方、トラウトも「ファンと彼らが自国をどれほど大切に思っているか、それがWBCの特別な点だった。そんな大きな舞台に立ちたいと思う」と熱く語っていた。
大谷翔平がトラウト三振斬り…米国に刻まれた劇的な幕切れ
この認識は米国の選手間でも広がり、選手とファン双方が、WBCの文化的意義に対する見方を変えつつある。MLBネットワークのアナリスト、ダン・プレサック氏は「MLBトゥナイト」に出演し、興奮気味に語っている。
「WBCが米国で大きな勢いを得ているのを目にするのはうれしい。我々はラテンアメリカ諸国や日本チームが常に真剣に取り組む姿を見てきた。彼らはまるで自国のワールドシリーズのように戦う。前回大会でアメリカが決勝で日本と対戦した時はすごかった」
緊迫した決勝戦で、大谷翔平投手(ドジャース)が当時エンゼルスの同僚だったトラウトを三振に切り、日本が優勝を決めたシーンは米国のファンや野球関係者の印象に強く残っており、“このままでは済まされない”という思いが高まっていることは確かだ。
過去、WBCは常に「単なるエキシビションゲーム」だという見方が存在していた。歴史的にもMLB球団は選手に対し、球団の春季キャンプやレギュラーシーズンを優先するよう圧力をかけてきた。しかし、今年の大会はまったく違う。
“負傷リスクより米国代表でのプレー”、シーズン後にFAのサイ・ヤング賞左腕も参戦
タイガースのエース左腕タリク・スクーバル(25年成績:防御率2.21、WHIP0.891、195回1/3、241奪三振)、パイレーツの剛腕ポール・スキーンズ(25年成績:防御率1.97、WHIP0.948、187回2/3、216奪三振)という両リーグの2025年サイ・ヤング賞受賞者の招集は、この古い考え方に変化の兆しがあることを証明している。
特にスクーバルのケースは興味深い。今季終了後にFA資格を取得するため、その大事なシーズンを万全で迎えられなかったり、負傷するようなことがあれば、将来の収入に壊滅的な打撃を与える可能性がある。24年から2年連続でサイ・ヤング賞に輝いたスクーバルは26年オフに投手史上最高額の契約を結ぶことが確実視されている。そんなメジャー最強左腕がWBCへの参加を決めたことは、“負傷リスクよりも米国代表でのプレー”を優先する選手の思いが表れている。日本選手同様の価値観が確実に芽生えていると言えるだろう。
メジャー9球団で控え捕手としてプレーした「MLBネットワーク」のエリック・クラッツ氏は、過去に球団が選手に対しWBC不参加を要請したにも関わらず(名前は非公表)、選手自身の考えで参加した例もあるとした上で、米国選手の最終決定権は球団ではなく選手自身にあると主張する。こうした背景も踏まえ、米国代表監督のマーク・デローサ氏は“米国代表史上最強の投手陣”を編成することに成功した。
スクーバルとスキーンズのほか、オールスター先発投手であるジャイアンツの右腕ローガン・ウェブ(25年成績:防御率3.22、WHIP1.237、207回、224奪三振)、ツインズの右腕ジョー・ライアン(25年成績:防御率3.42、WHIP1.035、171回、194奪三振)、そして100マイル(約161キロ)超の剛球を連発するパドレスの抑え右腕メイソン・ミラー(25年成績:防御率2.63、WHIP0.908、61回2/3、104奪三振)も参戦発表。2023年のチームとは比較にならないほどの大幅戦力アップとなっている。
米国代表は勝利を渇望している。デローサ監督とともに「MLBトゥナイト」に出演した米国代表のマイク・ヒルGMは「2023年に何が起きたかはみんなが知っている。我々には未完の大事業が残っている」と宣言。前回大会で苦杯をなめた侍ジャパンへ宣戦布告した。
(笹田大介 / Daisuke Sasada)

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