赤穂市民病院(兵庫県赤穂市)の脳神経外科医が手術中に誤ってドリルで神経を切断し、当時74歳の患者に両下肢の麻痺など重い後遺障害を生じさせたとして、この執刀医が業務上過失傷害罪に問われた事件の初公判が2月9日、神戸地裁姫路支部(佐藤洋幸裁判長)であった。被告医師は「基本的には認める」と述べ、起訴内容をおおむね認めた。弁護人は「過失は否定しないが、執刀医一人だけに責任があるのか問いたい」と量刑を争う考えを示した。

 公判は9日朝から始まり、問題となった手術の映像が約1時間にわたり法廷で流された。同日午後は証人尋問を予定している。2月12日には被告医師への質問などがあり、2月18日には検察による求刑や最終弁論が行われ、結審する見込みだ。

 スーツ姿で出廷した被告医師は9日、起訴内容を大筋で認めつつ、「詳細は被告人質問で答えたい」と述べた。裁判長から職業は医師なのか問われると、「現在は無職」と答えた。ドリルの先端に馬尾神経を巻き込んで切断した動画が流れた際も、表情を変えず、モニターを見ていた。弁護人は「手術は一人では遂行できない。指導医による適切な指導が必須だ。痛ましい事故を防ぐには、執刀医個人とともに、指導医や病院の問題に目を向ける必要がある。執刀医だけに責任を負わせると、事故の真相(解明)とはかけ離れることになる」と主張した。

 検察の冒頭陳述などによると、2019年11月に自宅で転倒後、腰痛などを訴えていた女性(当時74歳)は赤穂市民病院での検査入院などを経て、2020年1月17日に外来を受診。同月22日に腰椎後方除圧術を受けた。助手を務めていた脳神経外科長が初めに第4・第5腰椎間を施術。その後、被告医師が第2・第3腰椎間を施術した。

 被告医師はこの施術の際、出血が多くて切削する場所が十分に見えていない状態で、ドリルによる骨の切削操作を行っている最中に、ドリルで硬膜を損傷し、露出した馬尾神経を巻き込んで切断した。修復処置は科長が行った。手術時間は午前9時に始まり、午後7時過ぎまで及んだ。

 この手術を巡っては、病院側が医療過誤と認めて患者側に謝罪。患者側は損害賠償を求める訴訟を提起し、神戸地裁姫路支部(池上尚子裁判長)が2025年5月、医師と赤穂市に対し約8888万円の支払いを命じた。原被告とも控訴せず、判決は確定している(『赤穂の医療過誤、元執刀医らへ賠償命じる判決が確定』を参照)。

 被告医師は2019年7月に赤穂市民病院に着任。ほかにも複数の医療事故に関与したとして、2020年3月に病院から手術への執刀を禁じられた。2021年8月に退職し、別の医療機関へ移った。これらの一連の経緯は、ウェブ上に掲載された漫画の題材となり、大きな波紋を呼んだ。

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