2025.12.24
(最終更新:2025.12.24)

急速に拡大する米国women’s health市場 フェムテック起業家による米国カンファレンス参加レポート

”Women’s Health Innovation Summit”の会場(写真はすべて筆者撮影)

ジョコネ。代表取締役/北奈央子

北奈央子

北奈央子
( きた ・なおこ )
ジョコネ。代表取締役

グローバル医療機器メーカーにて10年以上マーケティングのキャリアを積み、自身の経験から女性のヘルスリテラシーをライフワークに研究、活動を展開。NPO法人女性医療ネットワーク理事、聖路加国際大学大学院にて女性のヘルスリテラシーの研究後、株式会社ジョコネ。を創業しフェムテック領域で活動中。著書:『女性がイキイキと働き続けるためのヘルスリテラシー』(セルバ出版)。早稲田大学理工学部卒業・修了。

「women’s health(女性の健康)」をテーマにした世界最大級のカンファレンス”Women’s Health Innovation Summit”が、11月4~6日に米国ボストンで開催されました。昨年(2024年)に続いて参加してきましたので、昨年との違いなども含めてレポートします!

展示エリアが倍以上に:ビジネスとして急拡大

会場でまず驚いたのが、展示エリアの大きさと出展社の多さです。昨年はセッションやスタートアップのピッチが主流で、展示は少ないなと感じていたのですが、今年は展示エリアが倍以上になっていました。

また、昨年はwomen’s healthの商品やサービスの出展が中心でしたが、今年は関連ソリューションを持っているサプリメントの原料の会社や、医療・ヘルスケア商品・サービスの開発に欠かせない臨床試験をサポートする会社、データプラットフォームを提供する会社など、women’s healthを推進する事業者が必要とする企業も出展していて、周辺の企業からの注目が高まっていることを感じました。

とはいえ、中心テーマであるwomen’s health関連で面白いなと思った商品やサービスを三つ、紹介しますね。

●Ohmbody:
米国テキサスの会社が発売した新しい生理痛用のウェアラブルデバイスです。なんと耳周辺から電気パルスで神経を刺激することで生理痛を軽減させるとのことで、これまでの薬や、温める、TENS(経皮的電気刺激療法)とは異なる新しい方法です。

既にいくつかの研究で検証されており、88%の人が「月経時の快適さが向上した」、55%の人が「生理が軽くなった」、71%の人が「感情的に安定している」と感じたと報告されています。

現在は医療機器ではなく、ウェルネスデバイスとして米国内で一般販売しているとのことです。

Ohmbody
Ohmbodyの展示

●Mira:
自宅で、尿を使ってホルモンの値を測定できるデバイスです。かわいい卵型のデバイスと個人のスマホにインストールするアプリからなります。生理や妊活に関連するLH(黄体形成ホルモン)、E3G(エストロゲン)、PdG(プロゲステロン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)という四つのホルモンを一度に測定でき、それを毎日アプリ上に記録することで、グラフ化されます。

女性自身が購入することももちろんできますが、会社の福利厚生としての提供も一部はじまっているとのことでした。

Miraの展示
Miraの展示

●OPill:
薬局で購入できる低用量ピルです。日本ではピルは処方薬で、医師の処方箋(せん)が必要ですが、米国と英国では処方箋なしで薬局で購入できるとのこと。昨年、米国に訪問したときに薬局でみつけて驚いたのを覚えていますが、米国でも新しい取り組みのようで、出展してアピールしていました。

女性が自分のお金で払うのではなく、社会としてサポートする方向に進化

昨年は、医療保険でカバーされるようにしていくことがwomen’s healthを広げる鍵だという議論がされ、いくつかの先駆的なサービスが医療的な、そして医療費削減のエビデンスをもって医療保険のカバーを取得したと話題になっていました。今年は、そうした医療保険、または会社の福利厚生でカバーされるようになった商品・サービスがとても増えたように感じました。

例えば、更年期用のアプリを提供するElektra Healthは、今回一緒にパネルディスカッションに登壇した保険会社Oscar Healthや他の医療保険で使えるようになっているとのことでした(米国は国民皆保険ではなく、それぞれが保険会社を選んで加入する形)。

Elektraのアプリでは、認定を受けた更年期専門の医師にアクセスできるほか、更年期について学んだり相談したりできるコミュニティがあるそうです。

保険会社としては、医療的にエビデンスがあるか、医療費が減らせるかなどを検討した上でアプリの採用を決めるそうですが、民間保険なので、顧客に選ばれるために新しいものを積極的に採用しています。日本ではどのように社会的なカバーを実現するのか、議論していく必要があると感じています。

”Women’s Health Innovation Summit”の会場
”Women’s Health Innovation Summit”の会場

ホルモンを継続的に測定する時代に

上述したMira以外にも、ホルモンを測定するデバイスが複数出てきています。

Hormonaというスウェーデン発のスタートアップは、尿検査でホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、FSH)を測定して、アプリでグラフ化できるようにしていました。既に世界190カ国以上に3万人以上のユーザーがいるそうですが、ヨーロッパの保険会社とともに保険でのカバーを検討しているとのことで、さらなる普及が見込まれます。

また、Step-in-Healthというスタートアップも、ホルモンを測定してデータを管理できるアプリを開発しているとのことでした。

ホルモンを測定するデバイスやアプリが普及していった先に何が期待できるでしょうか。たくさんの女性のホルモンの変動のデータが集まります。妊活を目的としているものや、月経コントロール、更年期のコントロールなど、データをとる目的はさまざまですが、この大量のデータを分析していくことで、いろいろなことが解明されていくでしょう。

この点について、会場ではデータ活用をテーマにしたセッションも開かれており、集めたデータをどう解析して活用していくかのフェーズに入ってきている、と議論されていました。データ活用が進めば、数値をもとに適切なソリューションにつなげていくことができます。今までは不調があったときに自分でいろいろ試してようやく見つけていた解決策を、データに基づいてAIがおすすめしてくれる、そんな時代がくるんだなと感じました。

スタートアップピッチ、乳がんのセルフチェックなど多彩な発表

今回もスタートアップピッチがありました。今回は、デジタルヘルス部門と医療部門に分かれ、それぞれ6社ずつ発表していましたので、その中から計3社を紹介します。

デジタルヘルス部門の6社の中は、先述のホルモンを測定する2社が含まれていました。医療部門は、昨年はほとんど見られなかった薬の会社が登壇していたのが印象的でした。薬は開発期間が長く、投資額も大きいので、ついに出てきた!と感じています。

【デジタルヘルス部門】

●CleoCare:
デジタルヘルス部門の優勝スタートアップです。ポルトガル発で、乳がんのセルフチェックをより正確にするための圧センサー付きグローブとアプリからなります。乳がんの検診の方法はいろいろ出てきていますが、セルフチェックの精度を上げるという視点が新しいなと思いました。

乳がんを見つけた人の6割近くが、検診以外で見つけたという報告もあり、その多くがセルフチェックと考えられます。セルフチェックはとても重要ですが、手で触ってもよくわかりません。この問題をセンサーとアプリで改善するものです。

CleoCareのピッチ
CleoCareのピッチ

【医療部門】

●Wavelet:
医療部門の優勝スタートアップです。胎児の脳活動をモニタリングするデバイスを開発しています。このデバイスは、胎児に何らかのストレスや脳損傷リスクが生じている可能性を検知して、脳損傷を減らすことを目的にしています。臨床試験中で、今後米国で医療機器として登録をしていく予定だそうです。

●Innovene Therapeutics:
子宮頸がんの薬を開発している米国のスタートアップです。子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)に持続的に感染することで細胞の異形成が進み、がん化していきます。ワクチンや検診方法も確立されていますが、感染している段階でのアプローチはあまり確立されていません。

このスタートアップが開発中の薬は、腟内に塗るクリーム型の薬で、新しい有効な手段として期待がもてます。これから臨床試験だとのことで、将来の商品化を期待しています。

カンファレンスでは全体的に、昨年と比べて大きな進展がみられました。米国をはじめとする海外では、フェムテックに関するソリューションがどんどん増えて社会的にカバーされ、女性に届くようになってきました。日本も社会全体でこれらのソリューションを受け入れて、女性に届けていく必要があると強く感じています。

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