FC琉球U-18が、2016年の発足以来初めてプリンスリーグ九州1部への昇格を勝ち取った。

3シーズン2部で戦い、ゲームスピードの差や経験不足から残留争いを余儀なくされた時期もあった。ただ、少しずつ積み上げてきた基準が形となって昇格を生み、それはアカデミー全体で共有してきた取り組みが結びついた成果でもある。来季はより強度の高い環境で試合を重ねることができ、成長速度もさらに上がっていくことだろう。

 

終盤の逆転力がもたらした昇格

今年のチームは、精神面の成熟が一つの柱になった。小寺一生監督は「後期は特に終盤での逆転勝利が多く、自信をつけ逞しく成長する姿を誇りに思う」と語り、苦しい状況を押し返す力が備わってきたと強調する。試合の入りで下を向く癖が残っていた選手たちに、「顔を上げてよりアグレッシブに相手より走ること」に集中する姿勢を求め続けたことが、終盤の強さを引き寄せた。

シーズンを通して振り返ると、勝負どころでの追撃は一度ではなかった。

第11節・鹿児島高戦では前半に追いつかれたが、82分の志慶眞巧洋のPKで勝ち切った。第13節・宮崎日大高戦では前半終了間際の失点を引きずらず、76分に林剣士朗が同点。続いて85分に比嘉大翔が勝ち越して試合を動かす展開を作った。

第14節・佐賀東高戦でも前半に先制を許したものの志慶眞が前半終了間際に追い付き、後半に入ってから52分に倉貫溜凰が逆転。再び追いつかれながらも86分に島袋俊輔が決勝点を決め、粘りを体現した。

昇格を決めた第17節・サガン鳥栖U-18 2nd戦では23分に失点しながら後半、73分の倉貫の同点弾で流れが変わり、マギージェラニー蓮の88分のPK、そして林剣士朗の追加点によって3対1へと反転させ、1部昇格が確定した。

小寺監督は、前半で点差がついた試合でも「2点差なら取り返せる」という感覚を持つようになり、顔を上げて走り勝つ意識を植え付けたという。この逆転力の定着こそが今季の大きな成長の証だった。

 

フィジカル強化が生んだ粘り

1年を通してブレない戦いを演じたのは、フィジカル面の底上げも影響している。小寺監督は「トレーニングの強度を毎年少しずつ上げ、筋トレも週1回必ず取り入れた。重りも増やし、選手たちはしっかりやってくれた」と語る。プリンス2部の参入から3シーズンを費やす中、前年までは残留争いが続いたが、アカデミー全体で目標を共有し、日々の強度向上や筋力強化を積み重ねてきたことが粘り強さの定着につながった。体づくりが終盤の粘りへ直結したのである。

 

選手主体のチームへ

チームの空気が変わっていったことも象徴的だ。キャプテンの志慶眞は「コミュニケーションがどんどん出てきて、外(ベンチ)から言うことも最後の方は少なくなった」と話し、選手主体でチームが動き始めたことを挙げている。

「昇格という目標に向かって一人一人が努力した成果」と語る姿には自律的な成長が宿る。チームが昇格を目指す過程でコミュニケーションが活発になり、選手同士で調整できるようになったことで自立性が高まった。

 

戦術面の進化

戦術面の質も着実に向上した。小寺監督は「中央のビルドアップを率先してやってくれた」と語り、外に逃げず中央を突く姿勢が浸透したと明かす。定着してきた攻撃ルートからのスルーパスの質も向上し、背後を突くアクションと足元の判断を両立させる狙いが整理された。選手たちがゴールへの意識を強めたことで攻撃には怖さが生まれた。

 

個の成長

個のレベルアップも昇格の大きな要因になった。19得点でリーグ得点王となった島袋俊輔は「仲間がいいパスを出してくれたから得点できた」と語りつつ、感覚的なプレーに自信を深めていった。監督から託された信頼を糧に、節目で結果を残し、得点の背景に仲間の貢献を挙げながら、感覚的なプレーが通用するという確信を深めた。

 

また、高校2年のマギージェラニー蓮は、春先の体重91kgから今では85kgへ落とし、スピードとフィジカルが向上。「パフォーマンスが上がった」と実感し、自身の裏抜けを強みに昇華させていった。裏への動きが改善されたことでパフォーマンスが上がったと振り返り、来年1部で戦うイメージを思い描き、自分たちでもやれるという手応えを口にしている。

 

指導陣の連携

白井裕之コーチは指導陣の連携を強調する。「(小寺監督と國仲厚助コーチと)三人で話し合いながら今までやっていないことにも挑戦した」と述べ、選手の特徴を尊重する姿勢を軸に据えてきた。トップダウンではなく対話を重ね、選手の個性を生かす環境づくりを重視した点も昇格の土台になった。新しい挑戦を続けたことが昇格を後押ししたとし、選手の特徴を尊重した対話型の指導を重視してきたと述べている。

昇格はU-18だけの歩みではない。アカデミー全体で継続してきた積み上げが、ようやく実を結んだ。

 

1部で期待される変化と効果

1部での戦いは、選手の成長スピードを押し上げる要因となる。小寺監督は、「強度の高い試合を経験することで成長の歩幅が大きくなる」と期待を寄せている。プレースピードや強度の高さは個人のレベルアップを促す環境になる。

アカデミーとしては、トップチームに選手を輩出するという最終目標がある。首脳陣は、1部で戦うことでトップに上がれる選手の数が増えると語る。1部昇格はその基盤を整える意味を持ち、選手の意識がもう一段引き上げられることは確かな変化といえる。

 

来季に向けて見えている課題

一方で、1部で勝点を積み重ねるために小寺監督は、選手たちがさらにもう一段階成長するための「気づき」のようなものをいくつか挙げている。疲れが見え始めた時間帯になると、どうしても守備の一歩目が重くなる場面があり、もう少し自分たちから前に出られるようになると試合の流れを手離しにくくなるという感触を持っているという。

攻撃面についても、失点直後など少し難しい時間帯ではボールを受ける動きが多くなりがちで、背後へのアクションが少なくなる瞬間があると感じている。指揮官は、選手たちの特徴を理解しながら、状況を見てアクションの種類を増やしていくことが1部ではより大切になるのではないかと話す。また、カウンターの局面でアイデアは出ているものの、最後のところであと一歩の工夫があれば得点に届く場面が増えるという手応えも語っている。さらに、試合の中で相手がどこで奪い、何を狙いとしているのかを感じ取る視点を今よりもう少し深めていけるとプレーに落ち着きが生まれるという考えも示している。プレッシャーが強まる環境では、受け止め方や立ち向かい方に幅を持たせられるかどうかが選手それぞれの成長につながるという。

逆転力の定着、アカデミー全体の積み上げ、そして選手個々の成長が噛み合い、FC琉球U-18は歴史的な昇格を成し遂げた。強度の高い舞台に挑むこれからの歩みに注目が集まる。1部での戦いはより厳しくなるが、その環境こそがチームと選手を一段上へ押し上げる機会になる。この昇格が一過性ではなく継続的な発展につながるかが次の重要なテーマである。

 

 

取材・編集・写真:仲本兼進(RYUKYU SOCCER PRESS)

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