特集:第102回箱根駅伝
松崎敏朗
2025/10/28
(最終更新:2025/10/28)

総合4位で予選通過を果たした日本大学の主将・中澤星音(前列右)は手応えを感じつつも、本戦に向けて課題も語った(撮影・藤井みさ)
第102回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会
10月18日@陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園(21.0975km)
1位 中央学院大学 10時間32分23秒
2位 順天堂大学 10時間32分35秒
3位 山梨学院大学 10時間32分44秒
4位 日本大学 10時間32分57秒
5位 東海大学 10時間34分07秒
6位 東京農業大学 10時間34分59秒
7位 神奈川大学 10時間36分07秒
8位 大東文化大学 10時間36分12秒
9位 日本体育大学 10時間36分14秒
10位 立教大学 10時間36分56秒
10月18日の第102回箱根駅伝予選会で、日本大学が4位に入り、3年連続92回目の本戦出場を決めた。絶対的エースのシャドラック・キップケメイ(3年、イリギタティ)が個人2位に入り、ほかのメンバーも7人が1時間03分台で好走。今年の本戦で最下位になった雪辱を期している。
キップケメイが2位でゴール
キップケメイは、スタート直後から山梨学院大学のブライアン・キピエゴ(3年、カプカテット)らとトップ集団を形成。15km過ぎには、平成国際大学のジョセフ・ムイガイ(3年、青森山田)、上武大学のカマウ・パトリック(4年、札幌山の手)ら5人にトップ争いが絞られた。その後、キップケメイとキピエゴの一騎打ちとなり、終盤にペースを上げたキピエゴが1位でゴール。キップケメイは、15秒差の1時間00分31秒で続いた。

個人2位でゴールしたシャドラック・キップケメイ(撮影・松崎敏朗)
ほかのチームメイトは、二つの集団に分かれて、それぞれがペースメイク。主将の中澤星音(4年、一関学院)が中心となるグループでは、冨田悠晟(4年、草津東)、山口彰太(3年、佐野日大)らが走った。最初の5kmこそ15分14秒で入ったものの、その後は、着実にペースアップ。中澤が1時間03分06秒で42位となり、続いて山口が1時間03分15秒で、天野啓太(3年、岡崎城西)が1間03分18秒で、それぞれゴールした。
シード権争いに加わるには単独走が課題
新雅弘監督は、「選手は、よく粘ったと思います。わたしも、まだ3回目ですから、同じように選手と成長していくという感じです」と語った。ここまでは、予選会を通る練習に重点的に取り組んでいたと説明し、今後の課題も挙げた。「本戦でシード権争いをするのならば、単独走もできるようにしないとダメです」

ハーフマラソンの自己記録を大幅に更新した中澤星音(撮影・藤井みさ)
中澤は、ベスト記録を大幅に更新したことに笑顔を浮かべ「上級生から下級生まで、しっかり走ることができました」と語る一方で、目標の3位に届かなかったことに悔しさも口にした。「正直、まだまだ課題もあります。前回の箱根駅伝は20位という結果に終わったので、リベンジという意味もありますし、自分自身としても、しっかりチームに貢献したいです」
覚悟を持って臨んだ鈴木
ペースが遅い集団には、長澤辰朗(2年、中越)、片桐禅太(3年、中越)らが入り、トップで引いた鈴木孔士(4年、中越)は、「ここでダメだったら、全日本も箱根もない」という覚悟で臨んでいた。

後方集団を引っ張った鈴木孔士(撮影・藤井みさ)
コンディションは万全とは言えなかった。夏合宿の頃から、「走る時の体の動かし方が分からなくなった」という。そして、1週間前、トレーナーに「全然、ダメだ。動きが悪い。周りは、どんどん攻めて走って強くなっているのに、おまえだけ守っている」と告げられた。
「なんで、そんなこと言われなきゃいけないんだろう」と反骨心も芽生えたが、思いあたる節もあった。2年生の頃から主力に近い形で走り、練習でも集団を引っ張る役割を果たしてきた。だが、徐々に守りに入って練習で攻める場面がなくなり、現状維持を優先するようになっていたという。
「気づくのが遅ければ遅いほど箱根は遠ざかるので、言ってもらえて感謝しかありません。それに気づけたからこそ、最後にペースをしっかり上げられたと思います」。弱さと向き合い克服するため、ノートに何度も同じ言葉を書いて、自分を鼓舞した。「やっぱり、鈴木は強かったと言わせたい」
高校のチームメイトとも並走
新監督からは「おまえは余裕がある分、ちゃんと後半はペースを上げろよ」と言われていた。集団には、同じ高校から日大に進学した後輩の片桐、長澤ら、気心の知れた仲間がいたことが安心感にもつながった。大東文化大学の大濱逞真(2年、仙台育英)らとグループを形成し、最初の5kmは15分16秒で入った。その後は、15分11秒、15分05秒で刻み、15kmから20kmは14分42秒にペースアップ。

レース終盤、高校の同級生でもある日体大の山崎丞(左)と並走する鈴木孔士(撮影・井上翔太)
途中、同じ高校の同級生でもある日本体育大学の山崎丞の後ろでも走り、鈴木は1時間03分28秒の73位でゴールした。チーム内で5着という結果に「調子が上がりきらなくて、チームメイトに迷惑をかけた部分もあり、厳しい声をいただくこともありました。自分が変わって『鈴木は強かった』と思わせられるように走りました」と振り返った。
最後の2kmで苦しくなって体が動かなくなり、ペースダウン。100点満点の走りとは言えなかったが、2年時のタイムを上回ったことに手応えも感じたという。「日頃の練習の中で、流しとか1本1本の練習で攻めることを意識し、小さな努力を積み上げて箱根に向かっていきたいです」。すがすがしい顔で鈴木は話した。
今後は、全日本大学駅伝に出場し、箱根本戦に臨む。今年度、「古櫻復活」というスローガンのもとで、一人ひとりが自分の殻を破ってチーム力を底上げしてきた。前回大会の雪辱を遂げる日が近づいている。

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