欧州の社債発行市場で、夏以降で初めてとなる起債中止が発生した。記録的な活況が続いている市場に小さな汚点がついた形だ。
ノルウェーのCMBテックは、3億ドル(約460億円)相当の5年債の発行を取りやめると23日午前の届け出で明らかにした。現在の市場環境の下で提示された条件が「他の資金調達手段と比べて有利ではない」のが理由。
同社は20日に北欧地域の4銀行を主幹事に起用し、発行準備を進めていた。ブルームバーグのデータが示している。
欧州で債券発行が正式に中止されるのは、6月20日に同じく北欧のBWエナジーが3億ドルのシニア無担保債の販売計画を取りやめて以来となる。当時も市場環境が他の資金調達手段に比べて不利だと説明されていた。
ブルームバーグの集計によると、欧州の公募債市場での発行額は年初来で1兆7600億ユーロ(約311兆円)を超えており、通年での最高を更新するペースだ。
ただ、条件面に納得できない場合には、投資家がリスクの高い案件を敬遠する兆しも見え始めている。
今月には、保険大手アクサ(AXA SA)が制限付きティア1債(RT1債)を発行したが、7億5000万ユーロの募集額をかろうじてカバーする程度の需要しか集められなかった。
この種の証券は信用市場で最も複雑な部類に属し、初回コール(繰り上げ償還)を行わなかった場合に適用される利率を決める市場金利上乗せ幅(リセットスプレッド)が比較的低かったことが、投資家の慎重姿勢につながった可能性がある。

債券需要は全般的にも鈍化している。今月発行された案件の平均受注額は1月以来の低水準だった。同時に、企業の信用リスク指標は6月以来の高水準に上昇している。
もっとも、市場が全体的に閉ざされているわけではない。ルクセンブルク本拠の不動産会社アラウンドタウンは24日に劣後債の起債を予定している。
原題:Europe’s Primary Bond Market Sees First Pulled Deal Since June(抜粋)
— 取材協力 Stephen Treloar

WACOCA: People, Life, Style.