イングランド銀行(英中央銀行)のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏は17日、ロンドンで講演し、物価上昇圧力が持続するリスクが高まる中、金融政策委員会(MPC)は「2%目標に向けたインフレ抑制の継続を確実にするため、今後の金融緩和ペースをより慎重に進めるべきだ」と主張した。
同氏は、このアプローチは金融緩和プロセスを停止するのではなく、一部の利下げを見送ることだと説明した。
ピル氏は、経済がイングランド銀の予測通りに推移すれば、今後1年間で追加利下げが行われると予想すると述べた。ただし、物価安定化の進展が遅れている中で、「利下げ幅が大きすぎたり、ペースが速すぎたりするリスクに警戒し続けることが大切だ。インフレ圧力の根強さを認識する必要性が、さらに差し迫ってきている」と訴えた。
9人で構成されるイングランド銀の金融政策委員会(MPC)の中で、ピル氏は最もタカ派の一人とされ、5、8月の利下げ決定の際には反対票を投じた。同氏が最後に利下げを支持したのは、政策金利を4.5%に引き下げた2月の会合だ。
今年、英国では食料品とエネルギー価格の上昇で物価が急騰しており、来週発表される9月の物価上昇率は4%に達する見通しだ。家計の将来インフレ期待は上昇しており、ピル氏やMPCのマン委員らタカ派は、この流れが賃金要求をあおり、さらなる物価上昇につながる循環を引き起こすと懸念している。
ベイリー総裁やテイラー委員など、政策決定者の中には、雇用市場の弱体化や成長の停滞による下振れリスクを懸念する声もあるが、タカ派委員は引き続き、持続的なインフレの脅威に強い関心を寄せている。
こうした意見の相違があることから、金融市場は、イングランド銀が昨年8月以来の四半期ごとの利下げペースを維持するか、疑問視している。トレーダーらは11月の利下げはほぼないと考えており、次回の利下げは2月に行われると見ている。
ピル氏は慎重な姿勢を訴えつつ、MPCがインフレ抑制を阻害する新たなショックに警戒を怠らず、必要に応じて方針転換する準備を整えるべきとも述べた。
原題:Bank of England Chief Economist Urges Slower Pace of Rate Cuts(抜粋)

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