豪州政府が AWS Wickr で実現する同盟国・同志国とのセキュアな通信

本ブログは 2025 年 4 月 24 日に公開された AWS Public Sector ブログ「How AWS Wickr can enable secure communications for the Australian Government and its allies」を翻訳したものです。

メッセージングアプリケーションは、オーストラリア人のコミュニケーション方法においてますます中核的な存在となっています。オーストラリア通信メディア庁 (ACMA) の調査によると、オーストラリア人の約 5 人中 4 人が個人的な目的でメッセージングアプリケーションを使用していることが分かりました。これらのアプリは特に若いオーストラリア人の間で普及しており、18~24 歳の 92%、25~34 歳の 89% がつながりや交流のためにこれらのアプリを使用していると報告されています。

また、Australian Public Service (APS) Workforce Strategy 2025 (オーストラリア公共サービス人材戦略 2025) では、2025 年までに APS の労働力の半分がデジタルネイティブである Y 世代と Z 世代で構成されるようになることが認識されています。このように変わりゆく労働力構成を考慮すると、友人や家族とのチャットに使用するアプリと同じようなツールが職場でのコミュニケーションにおいても求められるようになることは自然な流れのように考えられます。

しかし、一般消費者向けのメッセージングアプリケーションの使用は、オーストラリア政府機関にとって重大なセキュリティと主権のリスクをもたらし、政府の情報管理義務を満たすことを困難にしています。Official guidance from the National Archives of Australia (NAA: オーストラリア国立公文書館) の公式ガイダンスでは、「オーストラリア政府業務の一環として作成または受信されたインスタントメッセージの投稿は連邦記録である」と明確に述べられています。 Australian National Audit Office (ANAO: オーストラリア会計検査院) は、国防省のハンター級フリゲート艦プロジェクトの管理に関する業績監査報告書において、プロジェクトの記録管理の弱点を指摘し、特に国防省職員によるコンシューマーメッセージングアプリケーションの使用について「Signal、Zoom、WhatsApp などのアプリケーションは、公式情報の送信や保存に使用することはできない」と具体的に言及しています。

セキュアでコンプライアントなメッセージング

Amazon Web Services (AWS) Wickr は、エンドツーエンド暗号化メッセージングおよびコラボレーションサービスであり、政府機関が機密情報を保護し、Australia’s Archives Act 1983 (オーストラリアの公文書館法) などの法的要件を満たすために必要な高度なセキュリティ、管理制御、およびデータ保持機能を提供します。

Wickr は、1 対 1 およびグループメッセージング、音声・ビデオ通話、ファイル共有、画面共有、位置情報共有を 256 ビット暗号化で保護します。データは、あるエンドポイントから別のエンドポイントへ移動する際に、不正アクセス、傍受、改ざんから保護されます。コンテンツの復号化に必要なキーにアクセスできるのは、意図された受信者のみであり、AWS でさえアクセスできません。Wickr は 2023 年 10 月に AWS シドニーリージョンで開始されました。

きめ細かい管理制御により、ユーザーをセキュリティグループに編成し、そのレベルでの機能やコンテンツへのアクセスを制限できます。Wickr ネットワーク管理者は、望ましい結果を達成するためにカスタマイズされたポリシーを各グループに適用できます。パスワードのリセットやプロファイルのリモート削除が可能で、紛失または盗難されたデバイスに起因するデータ漏洩のリスクを軽減できます。

Wickr ネットワーク管理者は、Wickr ネットワーク内の内部および外部コミュニケーションにデータ保持を設定および適用できます。これには、ゲストユーザー、外部チーム、その他のパートナーネットワークとの会話が含まれるため、組織との間で送受信されるメッセージやファイルを、完全にお客様の管理下にあるプライベートデータストアに保持でき、オーストラリア政府の記録管理義務への準拠をサポートします。

Wickr は、Information Security Registered Assessors Program (IRAP: 情報セキュリティ登録評価者プログラム) プロセスに基づき、独立した評価者による監査を受け、 Information Security Manual PROTECTED (ISM: 情報セキュリティマニュアル準拠) レベルの要件を満たしていることを認定されました。この認定により、各省庁は、Wickr の使用に関して、情報管理および記録保持の要件に加えて、PROTECTED セキュリティ分類までの情報の取り扱いに関する要件を満たすことができます。

Wickr は、ユーザーやチームが他の組織の Wickr ネットワーク内のユーザーとセキュアに通信できるよう、ネットワークフェデレーションを提供します。ユーザーグループを特定のフェデレーションルールに割り当て、選択した機関やパートナーへのアクセスを制限し、個々のセキュリティグループに対してゲストユーザーアクセス機能を許可または無効にできます。

Wickr は現在、アジアパシフィック (シンガポール、シドニー、東京)、カナダ (中部)、ヨーロッパ (フランクフルト、ロンドン)、および米国の米国東部 (バージニア北部) リージョンの AWS リージョンで利用可能であり、2024 年には追加のリージョンが開始される予定です。これにより、確立された同盟国・同志国、新興パートナーとのセキュアなコラボレーションを迅速かつ簡単に設定できます。例えば、次の図に示すように、オーストラリア政府機関は、英国、米国、日本政府の対応機関と Wickr ネットワークフェデレーションを設定できます。

図 1. AWS シドニー、ロンドン、東京、バージニア北部リージョン間の Wickr フェデレーション

コミュニケーションを保護する

従業員は今後も、友人や家族とのチャットや職場での生産性向上のためにメッセージングアプリを使い続けるでしょう。これらのアプリの多くは政府機関にリスクをもたらしますが、Wickr はエンドツーエンド暗号化と管理制御、データ保持、データレジデンシー制御を組み合わせることで、お客様の目標達成と、内部およびオーストラリアの主要セキュリティパートナーとの安全なコミュニケーションを支援します。

詳細については、AWS Wickr のウェブページをご覧になるか、メールにてお問い合わせください。

著者について

Andrew McBride

Andrew McBride

Andrew は オーストラリアのキャンベラを拠点に、国家安全保障・防衛 (NSD) セクターのお客様を担当する AWS のシニアソリューションアーキテクトです。Andrew は 20 年以上の経験を持ち、実践的なアナリストやソフトウェア開発者から戦略的計画まで幅広く携わってきました。オーストラリア国立大学の National Security College にて国家安全保障政策の修士号を取得しています。

このブログは WWPS Proposal Writer 中村昌幸が翻訳しました。

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