旺盛な国内需要や豊富な人材をバネに、インド半導体産業が動き出した。脱中国依存を進める欧米企業の需要獲得を狙っている。

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「前世紀の世界を形作ったのは石油だが、21世紀の力は小さなチップに集約されている。半導体は、国家の富と未来を象徴する『デジタル・ダイヤモンド』だ」──。

 インドの首都ニューデリーで今年9月に開かれた半導体の国際展示会で、モディ首相はこう演説し、「私たちは、包括的エコシステム(設計、製造、パッケージング、テストさらには装置・材料まで含む)を持つ半導体国家を目指している」と決意を述べた。

 インドは1960年代に、米半導体大手の旧フェアチャイルド・セミコンダクター(現オン・セミコンダクター)から、その後も米アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)から半導体工場設立の打診を受けた。しかし、当時の社会主義的な経済政策などが影響し、好機を逃してきた。

 一方、世界の半導体業界は2010年代から特定の地域、特に台湾への極端な生産集中が進んだ。しかし現在は地政学リスクの回避とともに、自然災害など非常事態への備えの観点からサプライチェーン(供給網)の多様化が課題になっている。

 インドはこうした環境変化を歴史的好機と捉え、モディ首相の強力なリーダーシップの下、半導体産業育成に取り組んでいる。その実行機関が、21年に設立された政府機関「インド半導体ミッション(ISM)」だ。7600億ルピー(約1兆3000億円)規模の支援制度を創設し、すでに10プロジェクトが承認されている(表)。

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世界の技術者の2割集中

 インドの国家戦略は、国内需要への対応と輸出拠点化という二つの目標を組み合わせている。米調査機関によると、24年時点でのインドの半導体消費額は自動車やモバイル機器を中心とした約240億ドルで、30年までには1000億ドルを超える見…



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