対戦車ミサイル「ジャベリン」の発射訓練を行う米海兵隊員(9月15日、大分県の陸上自衛隊・日出生台演習場で、米海兵隊のサイトより)

 ロシアは、多数の防空兵器、長距離監視レーダー、電子情報収集レーダー、衛星通信などの機能を含む衛星コントロールシステム、電波・電子情報収集機関をクリミアに配備してきた。

 クリミアでのロシア軍レーダー監視能力イメージは図1、クリミアでのロシア衛星コントロールシステムイメージは図2のとおりである。

図1 クリミアでのロシア軍レーダー監視能力のイメージ

出典:図はすべて、各種情報に基づき、筆者が作成したもの

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図2 クリミアでの衛星コントロールシステムのイメージ

 現在、ウクライナは、ロシアのあらゆる監視システムを破壊するために、無人機やミサイル攻撃を徹底的に行っている。

 本記事は、これらについて、考察するものである。

1.クリミア山頂にある施設群の破壊

 ウクライナは8月、クリミア南部のアイ・ペトリ山頂のレーダー監視施設(A)や衛星との通信施設群を、無人機で攻撃した。

 グーグルアースの写真(B)を見ると、山頂部に大型のレドームが8個、小型のものが3個ある。

 ウクライナが攻撃したレドーム(Radome=レーダーやアンテナを風雨から守り外から見えないようにするドーム状の構造物)の映像の一つに、「Nebo」長距離監視レーダー(C)があった。

写真1 アイ・ペトリ山頂のレドーム群

A:グーグルアースに写真掲載されているレドーム群、B:グーグルアースで見たアイ・ペトリ山頂のレドーム群、C: ウクライナがドローン攻撃時に撮影したレドーム群

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 特に、山頂にNeboレーダーが配備されていれば、監視距離が600(全域監視)~1800(局地監視)キロであることから、通常の状態で、ウクライナの南半分くらいにある空中目標が見え、局地監視であればウクライナ全域が見えると考えられる。

 他のレドームには、衛星からの情報を受信しコントロールするアンテナ、電子情報収集用のレーダー、低高度監視レーダーおよび監視レーダーの予備が入っているとみてよい。

 ここは、各種情報収集機器が多数集められている基地である。

 ウクライナが、いくつ破壊したかは不明だが、全体のコントロール施設を破壊したとみてよいだろう。

 これらの破壊を受けて現在、この施設は機能していないと思われる。

 すなわち、ウクライナ領土内や黒海、特にクリミア南部を飛翔するミサイルや無人機の情報を、リアルタイムで入手できなくなっているということである。

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