タイのリゾート地を訪れるロシア人観光客(写真:ロイター/アフロ)
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
主要国とロシアは事実上、断交しているが、一方で東南アジアの多くの国は中立外交を掲げ、ロシアとも関係を維持している。
そうした国の一つに、タイがある。タイを訪問するロシア人観光客は、主要国による経済・金融制裁でロシア経済が圧迫されているにもかかわらず、月平均15万人、年間180万人レベルと過去最高を更新している(図表1)。
【図表1 タイに入国するロシア人観光客数】
(出所)タイ観光・スポーツ省
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両国の首都であるモスクワとバンコクを結ぶ直行便を運行しているのは、ロシアの半官半民の航空会社アエロフロートだ。また、同社とLCC(イカル航空)が、モスクワからタイ有数の観光地プーケットを結ぶ直行便を就航している。さらに、アエロフロートは10月から、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクとバンコクを結ぶ直行便を就航させるという。
こうしたロシアとタイを結ぶ航路は、いずれもロシア側の航空会社によるオペレーションだ。タイのフラッグキャリアであるタイ国際航空は、ロシア便の就航を見合わせている。恐らくはタイが、中立外交の観点から、ロシアと敵対する主要国に配慮しているためだろう。
なお、中国を経由してタイに入国するロシア人観光客も多いと考えられる。
タイのロシアへの姿勢は寛容だが、同時に消極的でもある。少なくとも、ロシア人観光客を熱心に勧誘しているようには見受けられない。主要国との関係の悪化で行き場がなくなったロシア人が、消去法的にタイに押し寄せているという側面も大きいように思われる。
ここで問題となるのが、ロシアの通貨ルーブルの「交換可能性」である。
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