ReGACY Innovation Group株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:成瀬 功一、以下:ReGACY)は、国立大学法人東京科学大学(所在地:東京都目黒区、学長:田中 雄二郎、以下:東京科学大学)と連携することで、東京都主催の東京都発のスタートアップの創出を促進する「TOKYO SUTEAM」事業に参画し、ライフサイエンス・ヘルスケアに係る技術シーズの事業化支援を通じて、国内外の大学のモデルとなるスキーム構築を進めています。

本記事では、東京科学大学内でライフサイエンス・ヘルスケアシーズの社会実装推進を担当する医療イノベーション機構の松浦昌宏 特任教授にこれまでの取り組みと今後への期待についてインタビューしました。

話手紹介

国立大学法人東京科学大学 医療イノベーション機構 特任教授 松浦昌宏

ReGACY Innovation Group株式会社 Director田中慶利

―これまでの医療イノベーション機構の取り組みについて

(田中)東京医科歯科大学時代から、技術シーズの社会実装に積極的に取り組んでこられている認識ですが、これまでの活動をご紹介いただけますでしょうか。

(松浦)東京工業大学との統合前は、東京医科歯科大学オープンイノベーション機構として、医歯学系医療分野の産学連携・知財マネジメントおよびスタートアップ支援活動を展開し、学内の研究シーズの社会実装に向けて研究者と企業との連携・ライセンシング・起業支援を行ってきました。研究者や企業との密な連携を図るためにtipというコミュニティを組織し、Wetな実験もできるインキュベーション施設も整備してスタートアップ創出の基盤を築いてきました。

(田中)社会実装活動支援と並行して、スタートアップ創出に向けた環境整備も進められてきたのですね。その後、東京工業大学と統合された後は、組織や活動は変化しましたか。

(松浦)2024年10月に東京工業大学との統合により東京科学大学となりましたが、その医歯学系の産学連携部門として医療イノベーション機構が設置され、引き続き産学連携や起業に向けた相談を受けるオフィスアワーや起業支援サポーターなどの取り組みも進めてきましたが、具体的な研究シーズのソーシングや起業を含む社会実装に向けた伴走支援については十分な取り組みはできていませんでした。

―TOKYO  SUTEAMの取り組み内容について

(田中)そのような中、弊社とタッグを組む形でTOKYO SUTEAMに参画することが決定しましたが、これまでの活用を振り返っていただけますでしょうか。

(松浦)上記のような課題感があったことから、ReGACY様と討議・協同させていただきながら、

①シーズリスト作成
②起業志向を有する研究者のスクリーニング
③GAPファンドプログラム参加者の選抜

に取り組みました。

(田中)事前に討議させていただく中で、「シーズ情報が十分かつ効果的に管理されていない」ことが社会実装支援活動のボトルネックになっていることを共通認識化したうえで、まずはシーズリストを作成させていただきましたが、最終的にGAPファンドプログラム参加者の選抜までを進めていく中で、松浦先生ご自身が新たに気付かれた点や今後改善すべき点などはございましたでしょうか。

(松浦)シーズリスト作成にあたっては、科研費等の公開情報を基に社会実装を目指している研究テーマのロングリスト(網羅的なシーズリスト:700件)を作成したうえで、市場性・知財の視点で絞り込み、ショートリスト(社会実装に有望なシーズリスト:66件)を作成しました。このシステマティックな取り組みは仕組み作りとしては良かったと思いますが、情報が公開情報に限られていたことで、古い情報が含まれていることもあり、もう少し生きた情報の収集が必要だと感じました。

次に、ショートリストの研究者について、まずは社会実装に対する志向を確認するために、個別での短時間のヒアリングを実施し、ご本人の意向や熱意を会話の中から汲み取り、その中でも起業志向を有する研究者を絞り込みました。その後、絞り込んだ研究者に対して、更に深いレベルでのヒアリングを実施し、研究テーマの実現性などを推定することで、テーマ・研究者を選定しました。2段階に分けたヒアリングでは、ヒアリングする側もされる側も労力は要しましたが、最初から深い内容を聞いて選定するよりも、結果的には起業志向の研究者と研究シーズを選定するという意味では効率的であったと感じています。

最後に、上記の段階でもGAPファンドを付与するかどうかの判断は明確にはつけにくい状況でもあったため、公募という形式ではありませんでしたが、テーマ(技術)の内容や市場性、研究計画や研究費の妥当性などを詳細に記述してもらう形で申請書を作成・提出を求め、外部審査員による審査を経て、GAPファンドの付与および付与額を決定しました。公募という形をとらなかったので、一見不公平感があるように思われる取り組みですが、一連の過程の中で、複数回同じ研究者にヒアリングする中で、適切なGAPファンドプログラム参加者を選抜できたと考えています。

(田中)クローズドな環境でGAPファンドプログラムの公募から採択までを進めたものの、弊社としましては他大学でも活用可能なソーシングモデルを構築できたと考えていますし、松浦先生も同様のお考えを持たれているということで、安堵しております。

(松浦)基本的なコンセプトは理解していて同様な取り組みは実施してきたつもりでしたが、GAPファンドの規模や採択までのシステマティックなプロセス、伴走支援の在り方など、今回取り組んだTOKYO SUTEAM事業は、起業志向の研究者だけでなく、それを支援する支援者側に対しても非常に有益なプログラムであったと考えています。

―TOKYO  SUTEAMへの今後の期待について

(田中)では最後に、残りの期間に対する期待について、お話しいただいてもよろしいでしょうか。

(松浦)今回のような規模の大学独自のGAPファンドの組成はすぐには難しいところもありますが、今回の取り組みによりスタートアップの創出という成果をアピールすることができれば、外部からの資金調達で継続したGAPファンドの組成が可能となり、スタートアップ創出のエコシステムが構築できると考えています。

医療/ライフサイエンス系のスタートアップ創出が本学から継続的にできるように、今回のTOKYO SUTEAM事業の成果を活かしていきたいと考えています。

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