オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は7月23日、ゲノムトラッカーと呼ばれるツールによって、オーストラリアの25万種を超える種の全ゲノム配列決定の進捗状況を追跡できるようになったと発表した。
タスマニアデビル(Sarcophilus harrisii)
Image credit: Brett Vercoe (出典:CSIRO)
ゲノムトラッカーは、アトラス・オブ・リビング・オーストラリア、バイオプラットフォーム・オーストラリア、オーストラリア・バイオコモンズ、オーストラリア・リサーチ・データ・コモンズを通じて提供されるオーストラリア・リファレンス・ゲノム・アトラス(ARGA)の一部である。このツールによって、オーストラリアでカタログ化された種のうち、ゲノム配列決定が少なくとも1回は行われた種が全体の2%であることが明らかにされた。
CSIROのARGAプロジェクトリーダーのキャサリン・ホール(Kathryn Hall)博士は、ゲノムトラッカーは、ゲノムデータのカバレッジの追跡や評価、優先順位付けにおける大きな変革であると述べた。この最終的な目標は、ゲノムデータを通じて、オーストラリアの生物多様性の幅広い情報を公開することである。
同博士は、「ゲノムは、種が環境に適応した独自の特性や、どのように進化しているかを理解するのに役立ちます」と述べ、「生命の系統樹の上位の枝は、古いゲノムの分岐を表しています」と付け加えた。ゲノムトラッカーによると、古代の系統のゲノムカバレッジは32%に過ぎない。これらの系統のカバレッジを向上させることは、種が時間の経過とともにどのように多様化し、進化してきたかについての理解を深める。
ゲノムトラッカーの分類学的記述や種の分布記録、エコタイプのレイヤー化により、研究者はARGAを用いてインデックス化されたゲノムデータのフィルタリングや検索を可能にし、オーストラリアの全ての種の追跡が行えるようになった。同博士は、「今は生物学にとってエキサイティングな時代です。ゲノムは、生命がどのようにして今日に至ったのか、そしてその知識を活用して今後何世代にもわたって生命を守る方法を追跡するためのロードマップを与えてくれます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
WACOCA: People, Life, Style.