洗練された空間と素材の味を最大限に引き出す匠の技で、ミシュランガイド和歌山2022の1つ星を獲得。岩出市と和歌山市黒田の店を経て一昨年、水軒口交差点南西に板前割烹「割烹 戎」をオープンしました。カウンター越しの柔和な笑顔がお客様を迎えます。
職人技に憧れて
──料理人歴は?
「高校を卒業して大阪の調理師専門学校で学び、大阪・北新地と和歌山市内の割烹で修行した後、30歳で独立。岩出に『日本料理 恵比寿』をオープンしました」
──なぜ日本料理の道に?
「ルーツは小学生のころ、食通の父に連れられて行った寿司屋の板前さんに憧れたことと、おばあちゃん子で、ハイカラな料理よりも煮しめなどが好きだったことでしょうか。当時から畳屋さんの作業や建築現場を飽きずに眺めていたほどものづくり、職人技が好きでした」
──こだわりは?
絶対的に〝だし〟です。まさに料理の要。敷地内の井戸から汲んだ水と天然の真昆布、本枯節で引いています。鰹節は削って30分以内のものしか使いません。自分で削っていますから、風味が全く違います。だからこそ、私が主役級だと考えているのがお椀もの。夏にお出しする『鱧とじゅんさいのお吸い物』(写真下)は、季節を先取る『走りのもの』、旬のピークを迎える『盛りのもの』、季節の最後にかかった『名残のもの』を合わせた一杯です。お吸い物はあえてカウンターで調理せず、裏で仕込みます。蓋の中に閉じ込められた湯気、木の芽や柚子の香りなどを、開けた瞬間に楽しんでもらいたいですね」
――店全体に哲学を感じます。
「より自然な状態を心がけています。ガスで焼くより紀州備長炭で焼くほうがおいしいし、氷室の冷蔵庫は食材が乾きにくいので、次にお出しするものを冷やす際などに使います。開業から25年かけて、少しずつ道理に合うと思うものに改良を重ねて今の形になりました」
食材は 走り集める
──メニューは、おまかせのみですか?
「開店当初は、お品書きからお好きなものをご注文いただくスタイルでしたが、『おいしいものを適当に出してよ』といったご要望が増えてきたんです。そこで、食材を無駄にせずいい状態でご提供するためにも、全てこちらで準備する形に変えました」
──食材の目利きは?
「『ご馳走』の言葉どおり、来てくださる方ために『走り集める』のが仕事だと思っています。地産地消にはあえて固執せず、できるだけ産地を訪ねて話を聞くようにしています。夏の看板料理「活鮎の塩焼き」は敷地内の井戸水を掛け流しにして鮎を泳がせており、活きたまま紀州備長炭で焼き上げます。白浜の『緒方の鮎』を仕入れさせていただいてます」
──ご苦労はありましたか。
「修行時代には、技術云々よりも心構えや心配りなどを学ばせていただきました。近年ではコロナ禍ですね。しかしあの数年間は、視点を変えて店のあり方を振り返ったり、より真摯に料理に向き合うために熟慮を重ねる貴重な機会になったと感じています」
──今後は?
「お料理を口に運んだ瞬間、私の〝一食に対する心構え〟を感じ取っていただけるお客様のために、私の想いを込めてお料理いたします」
【割烹 戎】
和歌山市秋葉町2-1
◇電話 073・488・9451
◇営業時間 18:00~最終入店21:00 ※日曜は11:30~ 最終入店12:00
◇定休日 月曜・第4日曜
(ニュース和歌山/2025年8月23日更新)
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