約1万8000人の踊り子たちが高知の夏を彩った今年のよさこい祭り。その中で初出場のチームの中に石川県から参加したチームがありました。
震災を乗り越えて念願の高知で舞った踊り子たちの思いに迫りました。
■よさこい祭り口上
「ご来場の皆様方、これが能登の国のよさこい踊りでございます」
華麗でダイナミックな演舞を見せる踊り子たち。
石川県七尾市のよさこいチーム「舞幻(むげん)」です。能登半島地震を乗り越え、念願の高知のよさこい祭り初出場を果たしました。
■初見さん
「憧れの舞台でこんだけあたたかい声援の中で踊れた2日間だったので、もう一生の想い出です」
■中山さん
「この楽しかった思い出をまた大切にしながら一歩一歩前に進んでいけたらなと思ってます」
感謝の気持ちを踊りにのせて。よさこい祭りを熱く駆け抜けた能登の踊り子たちを追いました。
8月10日。よさこい祭り本祭初日の高知駅前競演場で石川県から初出場のよさこいチーム「舞幻」が踊り初めを迎えようとしていました。
■踊り子
「緊張してます…憧れの場所だったので。踊りたいなとはずっと思っていました」「大好きな皆と大好きな高知で踊れるのがすごい嬉しいので、緊張しているんですけど楽しみたいなと思います」「地震を乗り越えられたのも皆さんのおかげだと思っているので、ここに立ててるのも皆さんのおかげなので。それを感謝を込めて精一杯踊ってきます」
踊りのテーマは一瞬の輝きを見せるという思いで名付けた「瞬輝無心(しゅんきむしん)」。46人の踊り子たちは鳴子と和傘を使い分けながら華麗な舞を披露していました。
■踊り子
「ようやく皆と心を1つにして高知で踊る事ができたなと思って感無量です」「能登はああいう震災がありましたけど、皆で頑張ってるよという姿を高知をはじめとした全国の皆さんに見ていただきたいなと思う」
■中山智至さん
「ひと演舞ひと演舞大切に精一杯全力で笑顔で踊ってください。最高の想い出作りましょう!いくぞー!」
「舞幻」の代表をつとめる中山智至さん(41)です。よさこい祭り発祥の地・高知に仲間たちと来る事を夢に活動してきました。隊列の前や地方車の上から踊り子たちを励ましながら、チームを支えます。
■中山さん
「最高です。来てよかったなって思います。」
「舞幻」は石川県七尾市の和倉温泉を拠点に2009年に結成。地元の能登よさこい祭りでは準大賞や金賞などを獲得したこともある実力派チームです。2016年に一度活動を休止しましたが、 高知で踊る事を目標に、2023年12月に復活。準備を始めた矢先に起こったのが能登半島地震でした。
石川県など各地に甚大な被害をもたらしたこの地震で、「舞幻」の拠点・七尾市も最大震度6強を観測。中山さんを始め仲間の多くが住宅損壊や断水などの被害をうけ、高知への遠征を断念しました。
■中山さん
「気持ちが落ち込んでしまって。本当に何かこう…よさこいっていう話題を出すこと自体が悪い事なんじゃないかっていうぐらい、よさこいから気持ちを離さなきゃいけないくらいの気持ちがありました」
日々の生活を取り戻す中で力の1つとなったのが高知からの支援物資です。能登よさこい祭りをきっかけにつながった多くの人たちからの飲料水が中山さんたちの元に届けられました。支援を受ける中、よさこいを続けることが能登の復興、自分たちの気持ちの復興につながるのではないかと考えた中山さん。高知で踊る事を目標にかかげ去年10月、チームの活動を再開しました。
■中山さん
「よさこいを通じて作られた絆っていうのをすごく感じた震災の経験でしたね。メンバー全員で来れた訳ではないんですけど今いるメンバーと、あの時はありがとうと。能登は元気だよと頑張ってるよっていう気持ちをお伝えできればと思ってます」
初見こころさん(29)。10年以上に渡りチームを支えてきた踊り子のリーダー的存在です。
七尾市にある実家が全壊するなど舞幻のメンバーの中でも一番の被害を受けたという初見さん。発災当時、息子・來(くるり)くんがお腹の中にいました。
■初見さん
「妊娠がわかってすぐの震災だったので。私も初めての子どもで不安な状態のまま震災でもう本当にどうしようかと思って。今から生きるのをどうしよう、どうしたらいいんだろうっていう状態になってしまったんですけど」
その後、まわりのサポートなどもあり無事、來くんを出産した初見さん。長く続いた断水や初めての育児などで不安ばかりの中、高知からの応援の声が励みになったといいます。
■初見さん
「お水もそうですし、頑張ってねっていうような声もあって、私たちは今普通に生活できているので感謝の気持ちを踊りでお返しできたら」
よさこいでつながった絆の力で前を向けるようになった初見さん。初見さんは來くんや夫の賢也さんが見守る中、感謝の気持ちを伝えたいとエネルギッシュな舞を披露しました。雨にも負けず踊るその胸にはメダルが輝きます。
■初見さん
「嬉しいです。ありがとうございます。観客の皆さんもすごいあたたかく応援してくださって嬉しい限りです」
本祭2日目、最後の締めくくりの場となったのは追手筋本部競演場です。能登半島地震を乗り越え高知に初めてやってきた「舞幻」の熱い2日間が終わりました。
■踊り子
「本当に最高に楽しかったです。石川に帰ってもまた頑張りたいと思います」
■初見さん
「最高でした、本当に最高でした。憧れの舞台でこんだけあたたかい声援の中で踊れた2日間だったので。もう一生の想い出です。能登に帰っても、能登よさこい祭りが一刻も早く復旧できるように私たちもできる事はお手伝いして盛り上げていきたい。能登も盛り上げていきたいと思ってます」
中山さんは仲間たちとともに夢を成し遂げた充実感に満ちていました。
■中山さん
「準備は大変だったんですけれども踊り子が楽しそうに笑顔で高知で踊ってるっていうのを見れて、何にもかえがたいご褒美というか、全ての疲れが吹っ飛んだ。そんな気持ちでした。すごく感動しました。この気持ちは一生忘れないと思うので、この楽しかった思い出をまた大切にしながら一歩一歩前に進んでいけたらなと思ってます」
石川県七尾市のよさこいチーム「舞幻」。よさこいでつながった絆を胸に、これからも舞い続けます。
「高知最高!よさこい最高!」
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