今季の残り16試合に向けてトップチームにエールをお願いすると「栃木シティ戦がすべて」だといい、「もっと熱量を出すこと」を最重要課題として求めていた。

 

栃木SC OBの廣瀬浩二さんがサマーユニフォームを着ながら『飛び込み営業』に勤しむわけ。【インタビュー前編】(25.8.8)

 

▼もっと熱量を出してやる必要がある

――ここからはトップチームへエールをください。今シーズンも残りは16試合になり、昇格に向けて瀬戸際だと思います。思うところを話してもらえますか?

「もう栃木シティ戦がすべてだと思うんです。あれだけ全員がファイトし、勝ったときにあれだけみんなが喜んでいたことがすべてです。僕は2010年に栃木SCにやってきて10年間プレーしましたが、うまい選手たちがスマートにサッカーをする、なんて時代は一度もないですから」

――僕はその前のJFL時代から取材をしていますが、正直、そんな時代は一度もありません。

「勝つためにみんなが泥臭く身体を張って、みんながファイトする。だから僕みたいな選手がすごく応援されるわけで、菅(和範、栃木SCには2012年から2020年まで9年間在籍)みたいにサッカーがそれほどうまくなかったとしても、あれだけ身体を張って、勝つためにチームを鼓舞できる選手が、栃木SCでは『いいよね』と言われて来たんです。今の選手たちはめちゃくちゃうまいけれど、同時に、もっと熱量を出してやる必要がある。だから、栃木シティ戦のような熱量を出してできれば、残り試合も負けることはないと思うんです。ただ、あれだけのゲームをやり続けることもめちゃくちゃ大変だし、でもそれをやるのが選手の仕事なんです。ミスがどうこうではなく、ミスをしたらダッシュで戻ればいい。それを高いレベルでやれるからプロなんです。誰かがピンチを招いたらカバーする。『俺のポジションはここだ』というスタンスではなく、今は何が危ないのか、それらを瞬時に判断し、味方が危ういならば察知してすぐに行動に移す。そういう繋がりがあることがチームだと思うんです。それぞれが感じ取って繋がってやっていくからチームなんです」

――今年のチームは若い選手が多いのですが、今、廣瀬さんのおっしゃった考え方を深いところで理解し、やろうとしている選手もいると思います。

「そうですね。今でも何人かとご飯を食べに行って話すこともあります。栃木シティ戦では後半の途中から(矢野)貴章が入って雰囲気が変わりました。貴章は前線であれだけやってくれるし、若い選手たちが『貴章さん、お願いします』となってしまう気持ちも分かりますが、貴章がやっているプレーを見ながら、一緒にやりながら勉強することで早く吸収できる。そういうことを大事にしてほしいんですよね」

――確かに。

「『貴章さんは年齢を重ねているのにすげえな』という感想を持つだけではあまりにもったいない。(佐藤)祥は今、年齢的に32歳になって、チームを引っ張って頑張ろうとしていますが、ただ、キャプテンとして使命感を持ちすぎると自分自身のプレーに集中しづらくなるときもあるんです。祥は今季、まだ自分のプレーに満足していないし、ケガから戻ってきて四苦八苦しているところでしょうからね。そういう状況で、どの年代の選手が頑張るかといえば、28歳の(中野)克哉が一人だと思うんです。克哉は大宮から完全移籍でやって来て、キャラクター的にも周りを鼓舞するタイプではないのはすごく分かりますが、やらないといけないときはビシッとやらないといけない。僕は以前、克哉に『年齢的にももう一つ成長できるよ』という話をしたのですが、その後に栃木シティ戦を迎えて、そうしたら克哉が本当に気持ちを見せてくれたことが嬉しかった。攻撃は黙っていてもある程度やってくれる選手ですが、あれだけ守備を頑張っていたし、まだまだ成長しようとしている姿勢が見えたんですよね」

▼賢いバカができる選手がいない

――中野選手もすごかったし、内田航平選手の加入も大きいですよね。

「あ、そうですよね。(内田)航平もすごかった。誰が見ても分かると思うんですけど、あれだけの熱量を持ってチームを盛り上げられる選手はすごく貴重なんです。言い方が相応しいかわかりませんが、“賢いバカ”をできる選手だと思います」

――賢いバカ。

(残り 3200文字/全文: 5045文字)

この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

タグマ!アカウントでログイン

WACOCA: People, Life, Style.