エジプトのスエズ運河橋とコンテナ船

写真提供:ロイター/共同通信イメージズ

 インドとその周辺国で形成される「環インド洋経済圏」は、急速な人口増加と経済成長を背景に国際社会での存在感を高めつつある。本稿では『日本人は知らない!地理で読み解く「環インド洋経済圏」の潜在力』(宮路秀作著/ビジネス社)から内容の一部を抜粋・再編集。この海域で今何が起きているのかを明らかにし、市場拡大の可能性を考察する。

「海のシルクロード」を築くべく、インド洋沿岸諸国で港湾整備を進める中国。その投資を受け入れる各国の経済戦略とは?

中東で産出される石油や天然ガスの交易路

 インド洋は、アフリカ大陸東岸・中東・南アジア・東南アジアを大きく結びつける広大な海域です。

 古代から交易ルートが絶えず拡張されてきた結果、今日では輸送量の多さや複数の重要ルートが集中的に交差する性質から、多くの国々にとって戦略的に非常に重要な海域だという位置づけに対して疑う余地はありません。前節までに触れたように、この広い海で育まれた交易ネットワークは、歴史的な経緯と結びつきながら段階的に拡大してきました。

 近年の具体例として挙げられるのは、中国が提唱した「一帯一路」構想のなかでインド洋航路が「海のシルクロード(海上シルクロード)」として扱われている点です。中国はアジアとアフリカ、欧州を結ぶ海上物流をさらに活性化するためのインフラ投資を世界規模で進めていて、その一部がこの海域における港湾開発などに向けられています。

 国連貿易開発会議(UNCTAD)の『Review of Maritime Transport』(2022年)などの報告によれば、世界の貨物貿易全体のおよそ8割が海上輸送に頼っているとされます。そのうち、アジア・欧州・中東・アフリカ間でやり取りされる規模は非常に大きく、インド洋に面したルートへの比重が非常に大きいことは容易に想像できます。

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