特集:うちの大学、ここに注目 2025
立命スポーツ編集局2年 酒井涼太朗
2025/07/21
(最終更新:2025/07/21)
#うちの大学、ここに注目 2025
#立命館大学
2年目からスターターの座をつかんだ立命館大QB竹田剛(すべて撮影・立命スポーツ編集局)
昨年、9年ぶりの日本一に輝いた立命館大学パンサーズ。新チームとなったこの春、「日本のフットボールを引っ張るチームを目指す」というビジョンを掲げた高橋健太郎監督のもと、6月15日には社会人・エレコム神戸との死闘を繰り広げた。試合終了間際の失点で惜敗したが、多くの収穫と課題を得て夏を迎える。
連覇に向け、人一倍強い思いでリーグ戦の開幕を待つのが、エースQBの竹田剛(ごう、4年、大産大附)だ。2年の秋からスターターの座をつかみ、昨季は関西学生リーグ1部の優秀攻撃選手賞も獲得した。まさに立命館オフェンスの要だ。
「日本のフットボールを引っ張るチームを目指す」ビジョンの要となる存在だ
「今でも山嵜先生の言っていたことが脳裏に」
竹田は大阪府大東市で、3人兄弟の末っ子として生まれた。中学までは昨秋のプロ野球ドラフト会議で横浜DeNAベイスターズから1位指名を受けた竹田祐投手の影響もあり、野球に打ち込んだ。同時に元アメフト選手の父の影響で、幼い頃から父の現役時代を見てきた。アメフトにも興味を持ち、父の知人がコーチを務めていた縁もあって、大産大附属高校への入学を決意した。
「山嵜隆夫監督(現・総監督)はアメフト界のレジェンドのような人。ものすごい経験論で指導していただいたし、今の時代にはいない強く怒ってくれる人だった。年齢が上がるほど指摘してくれる人もいない中、今でも山嵜先生の言っていたことが脳裏によみがえり、言われたことがすべて体に染み込んでいる」
右も左もわからずに飛び込んだアメフトの世界で、メキメキと成長を遂げた。高校2年になり、大学でも先輩となる山嵜大央(だいち、現・富士通)や木坂太一(現・富士通)らとともに猛練習を積み、全国へとつながる関西地区大会決勝まで上り詰めた。しかし関西学院高等部を相手に、8-20で敗れた。
昨年の甲子園ボウルで、エースRB山嵜大央にボールを渡す竹田
「DBをしていた自分のミスもあって試合展開が苦しくなり、アメフトへの理解度が低かった。高校で最も記憶に残っている試合」と竹田は振り返る。3年になると、野球で培った肩の強さを武器に、本格的にQBへ転向。「初めての試合はパスもランもうまくいかず、何もできなかった。わからないことしかなかった」。現在もチームメートで、「友達以上家族未満」とも表現する橋本龍人らと切磋琢磨(せっさたくま)してきたが、秋の関西地区大会で再び関西学院に敗れ、悔しい思いを抱えたまま、高校生活は幕を閉じた。
長谷川昌泳コーチと歩んだ、エースQBへの道
大学では「日本一」を誓い、立命館大の門をたたいた。その選択の裏には、ある人物の存在があった。当時の立命館でオフェンスコーディネーター(OC)を務めていた長谷川昌泳コーチ(現・大産大附高監督)だ。竹田は〝師匠〟と呼んで慕っている。「昌泳さんが自分を立命館に引っ張ってくれたし、昌泳さんというすごい人のもとでアメフトをやりたかった」
オフェンスコーディネーターを務めていた長谷川昌泳コーチに引っ張られ、立命館に進んだ
ただ、1年生の頃は時間の使い方が良くなく、先輩とコミュニケーションが取れずに苦しんだ。「このままでは平凡な4年間になってしまう」。危機感を覚えた竹田は、2年生になって行動を変えた。すると春から出場機会が増え、秋には成長を評価されてスターターを任された。リーグ戦の期間中は、長谷川コーチとほぼ毎日、動画を見て相手を研究し、考えた対策を練習で体に染みこませた。
すべてはチームを勝たせるため。そして、自分を信じてくれた長谷川コーチの思いに応えるためだった。しかし、ライバルの関西学院大に10-31で敗れ、甲子園ボウル制覇への道も逃した。「昌泳さんが最後だったのは分かっていたし、絶対に勝たなければと思っていた。最後に情けない姿を見せてしまった」。悔しさであふれた1年となった。
「このままでは平凡な4年間になってしまう」。危機感が竹田を変えた
高橋健太郎監督と出会い、変化したコミュニケーション
長谷川コーチがチームを去り、新たな指導者として、高橋健太郎監督がやってきた。竹田は高橋監督の就任当初、こう声をかけられたという。「なんでそんなにガチガチやねん。QBは一人だけのポジションなんやから、もっと楽しめよ」
これによって、アメフトへの取り組み方が変わった。「楽しむには、もちろん自信も必要。OCで来てくれた山口慶人コーチが基礎から教えてくれて自信もつき、考え方も変わって結果もついてくるようになった」。他の部員との関わり方も変えた。「試合に出ている子も、出ていない子も、ポジションも関係なく、うざいぐらい人に話しかけにいった。上も下も関係なく仲良くなれたし、それがプレーでの連係にもつながった」
3年目の竹田にとっては昨年の主将、山嵜の存在も大きかった。「大央さんだけは、いつも厳しく接してくれた。QBとしての責任、大切なものをすべて指摘してくれて、あの人のおかげでQBをやり続けられた」と感謝の念は尽きない。秋のリーグ戦では24-14で関西学院大にリベンジを果たして優勝。全日本大学選手権のトーナメントも勝ち上がり、決勝の甲子園ボウルでも鍛え上げた成果を発揮した。
「試合前から、甲子園で花形のQBとしてプレーできるのがうれしくて仕方なかったし、試合もずっと楽しかった。気付けば第4クオーター終盤で『楽しすぎてやばい』と思ったまま終わってしまった。最高の舞台だった」
初めて挑んだ甲子園ボウルは「楽しすぎてやばい」と思ったまま終わってしまった
フォロワーシップを大事に、全員で引っ張る
ラストイヤーは今田甚太郎主将(4年、駒場学園)のもとで連覇を目指す。多くの4年生が「フォロワーシップを大事に、全員で引っ張る」と口にし、竹田もオフェンスリーダーとして重要な立場を任されている。
今春の試合運びについては「出ていた選手が〝全員MVP〟と言えるくらい頑張っていたし、サイドラインでも情報伝達ができていて、チームとして良いオフェンスになってきた」と手応えを感じている。これからチームはトレーニング期間と合宿を迎え、勝負の秋に向けて仕上げていく。「去年は『大央さんがいたから勝った』と思われているところもある。今年連覇して『立命館は全員でやればこんなに強いんや』というところを見せたい。そして今年のメンバーでもう一度、最高の景色を見たい」。絶対的な司令塔として、再び聖地へ。そしてその先の栄冠へ。ラストイヤーにすべてをぶつける。
もう一度、最高の景色を見るために。ラストイヤーの竹田に注目だ
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