イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相をホワイトハウスでの夕食会に招いた際のトランプ大統領(2025年1月7日、後ろはピート・ヘグセス国防長官、写真:ロイター/アフロ)

 トランプの名の下にできないことはない――。

 ドナルド・トランプ米大統領の「MAGA」(米国を再び偉大に)政治に拍車がかかっている。

 同氏は、選挙公約を盛り込んだ「大きくて美しい法案」(BBB)を立法化した。

「トランピズム」が法律となり、トランプ氏が米国を偉大な国にするという夢がかなう下地ができた。

 対外的には高関税、同盟関係軽視のスタンス、国内的には政治の仕組みや慣行を強引にぶち壊し、強権を発動し、反対する者や裏切り者は徹底的に打ちのめす「マフィア的手法」(米保守派コラムニスト、デイビッド・フラム氏)を臆面もなく、見事なまでに取り入れている。

 これだけのことを79歳のトランプ氏一人でできるわけがない。

 2020年の大統領選に敗れ、野に下っている間に結集されたMAGA忠臣たちが準備してきた諸政策を「トランプの名の下に」打ち出し、トランプ氏はサインしているだけだと皮肉る向きもある。

 メディアは連日、トランプ氏が機関銃を撃つようにSNSを通じて流す「出まかせ発言」(?)を一つひとつ精査する時間的余裕もないまま、「大本営発表」記事として報じている。

 そうした中、「遅きに失した」(A day late and a dollar short)感すらあるが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)論説委員会が長い眠りから目覚めた。

 同紙が、7月6日付の紙面でトランプ氏の独断的政策をこれまでにないような過激な表現で批判したのだ。

「トランプ氏が米連邦捜査局(FBI)に政治干渉(Politicized)し、米国民の安全度を弱めている」

 政敵の政策を批判する際に自らの政策を「武器化する」(Weaponized)という表現はしばしば使われる。

 一方、「政治干渉(政治化)」(Politicized)するとは、政策を自らの政治的野心を実現するために使う行為を指している。

 NYTの主張は、こうだ。

「トランプ氏は就任後11日の間にFBIの反トランプ派8人をパージし、いくつかの部門の機能を弱体化させた。さらに、就任後5か月間で国家安全保障対策のエキスパートを排除した」

「数百人にも及ぶFBI職員がトランプ氏の要求に従うことを拒否して辞任した」

「トランプ氏は、FBIをMAGAのアプリオリを実践する法執行機関に塗り替え、反トランプ分子を見つけ出し、追い出した」

「その後釜に親トランプ派を据え、知人たちやトランプ派に対してFBIが行ってきた捜査を差し止め、トランプ氏に批判的な職員に恐怖心を植え付けてきた」

「その好例が、FBIを長年にわたって批判してきた検察官出身のカシュ・パテル氏をFBI長官に据え、ダン・ボンジーノ氏を副長官に配置した人事だ」

「こうした公的機関の政治化はFBIだけでなく、司法省全体に及んでいる」

「その影響は中東での紛争に始まり、米国にとっての脅威となっているテロ、スパイ、生物兵器、サイバー攻撃、組織犯罪、ホワイトカラー犯罪、麻薬の密輸などの捜査に重大な影響を及ぼし始めている」

(Opinion | Trump’s Politicized F.B.I. Has Made Americans Less Safe – The New York Times)

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