サッカー日本代表の評判はヨーロッパ各国で高まっており、権威的専門誌で知られる『フランス・フットボール』誌が昨夏に日本サッカー特集を組んだ。3月に掲載した久保建英インタビューに続き、レジェンド三浦知良(58歳)のインタビューと森保一監督が「W杯ドイツ戦勝利」について語った記事を抜粋して紹介する。〈全6回/第5回につづく〉
フランスフットボール誌(以下FF誌)による日本特集の第4回である。
久保建英のロングインタビューに続くのが、選手が自分自身を語る「Autoportrait」という連載ページである。取材対象に選ばれたのは三浦知良(以下カズ/当時57歳)。ちなみにこのカズのページと、第5回で詳しく述べる「Au tableau!」 (監督自身がボードを使って過去のビッグゲームを振り返る連載。本号では森保一日本代表監督がカタールW杯のドイツ戦を詳細に説明した)のふたつは、筆者が取材と執筆を担当した。
クボと違った意味で特別、クレージーだ
ヴァンサン・ガルシアFF誌編集長は、「カズのような存在をどう思いますか?」という筆者の問いにこう答えている。
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「彼もまた(久保とは違った意味で)特別な存在だ。その人生も歴史も特別だ」と。
そしてこう言葉をつづけた。
「ミウラがサッカーに情熱を傾けているのはよくわかる。日本の4部(=JFL。アトレチコ鈴鹿)でも大変であるのは間違いないが、昨シーズンまではポルトガルの2部(オリベイレンセ)でプレーしていた。信じられないことだ。
厳しい生活の規律と肉体のケア――トレーニングにしろ食事コントロールにしろ、誰にでもできることではない。若くして身体を壊すものもいるし、選手寿命が延びた今日でも、30代半ばまで現役を続けられる選手は少ない。たとえばアントワーヌ・グリーズマンは精神的な疲弊で代表を引退した。だがミウラは普通の選手の2倍以上の現役生活を送っている。メンタルとフィジカルのとてつもない強靭さが必要で、ちょっと想像を絶している。
ただミウラほどではないが、歳をとってもプレーを続ける選手がいる。クリスティアーノ・ロナウドは40歳だが、今もそれなりのレベルでプレーしている。だが目的はミウラとは異なる。ミウラは情熱に駆られての現役続行だが、ロナウドの目標は1000ゴールだ。すでにそう遠くないところまで来ている(※2024年9月に900ゴールを達成)。彼もまた、これだけ長く続けられるのは驚きだが、ミウラは58歳になっても続けている。クレイジーだ」
精神的にも肉体的にも鍛えられたポルトガル挑戦
FF誌がカズへの質問として立てたのは次の9項目だった。日本での少年時代。ブラジルの冒険。現役へのこだわり。知名度。キャプテン翼とのかかわり。日本代表とのつながり。フットサルの経験。ヨーロッパでの出来事。自身の将来。それぞれが自史を辿るに相応しいテーマではあるが、ここでは敢えてFF誌がそのほとんどを割愛したポルトガルでの経験に焦点を絞り、55歳の挑戦がカズにいったい何をもたらしたのかを、前後編の2回に分けて明らかにしたい。まずはその前編から。
「悔しさと楽しさ、喜び、幸せが混ざった1年半でした」
オリベイレンセで過ごした日々を、カズはそう表現した。
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