日豪サイバー政策協議に出席した両国政府関係者=2025年3月、オーストラリア・キャンベラ(オーストラリア外務貿易省提供、共同)
オーストラリアがサイバーセキュリティー分野で日本と連携を深めている。中国やロシアによるサイバー攻撃の脅威が増し、対策が急務となる中、実際に大規模な被害が発生。危機感が強まっていることが背景にある。オーストラリア政府筋は「地域の安定のために協力は不可欠」と訴えている。(共同通信=崎勘太郎)
「日本とオーストラリアが直面する脅威を共有することは、両国にとって大きな利益となる」。2025年3月、サイバーセキュリティーを担当するオーストラリア政府当局者は連携の意義を強調した。
オーストラリアでは2022年、通信会社や保険会社でそれぞれ約1千万人の顧客情報が流出する被害が相次いだ。サイバー攻撃は同国で「最も急速に拡大する安全保障上の脅威」(オニール前内相)となった。
2024年11月には特定の企業に対し、身代金要求型ウイルス「ランサムウエア」による被害を当局に報告する義務を定めた法律が成立。当局が復旧を支援するのに役立てるほか、攻撃の傾向を把握するのが目的で、政府は対策を急いでいる。
ロシアや中国による「国家支援型」のサイバー攻撃が、機密情報や知的財産を入手することを目的に、政府や重要インフラを標的としているとして、政府は警戒を強める。当局筋は、サイバー攻撃の数自体に最近は大きな変化はないものの「脅威の度合いは一層強まっている」と語る。
オーストラリア戦略政策研究所サイバー担当部門のジェームズ・コレラ部長は「中国やロシアといった国々が、経済・安全保障上の目的を達成し対抗する同盟の信用性を弱体化させるために、サイバー攻撃を含むあらゆる手段を行使している」と分析する。
オーストラリア政府は、中国国家安全部門から業務を請け負っているとして警戒を強めるハッカー集団「APT40」に関する注意喚起文書を作成。2024年7月、日本は米国や韓国などとともに共同で署名した。サイバー攻撃への関与が疑われる国や組織を名指しして被害抑止を狙う取り組みの一環だ。
また日豪両政府は「サイバー政策協議」を2015年に始め、2025年3月には6回目を実施。日本政府関係者は「他にも複数のレベルで定期的に情報を共有している」と説明する。
オーストラリア外交筋は、日本を「地域の安定を築き、維持するための重要なパートナー」だと強調。サイバー攻撃による被害状況や対策について、日本との情報共有を今後も重視する考えを示した。豪、サイバー分野で日本と連携深める
オーストラリア・キャンベラ
オーストラリアのアルバニージー首相(右)と握手する石破首相=2024年10月、ラオス・ビエンチャン(共同)
オーストラリア通信情報局でサイバーセキュリティーの業務に従事する職員ら=キャンベラ(オーストラリア通信情報局提供、共同)
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