アルバニアでの3日間を経て、イタリア本土へ上陸した第108回ジロ・デ・イタリア。第4ステージはピュアスプリンターを含む集団スプリントで争われ、グランツールデビューのカスペル・ファンウーデン(オランダ、ピクニック・ポストNL)が金星を挙げた。
チッコーネとじゃれ合うピーダスン photo:RCS Sportイタリア本土に踏む入れたプリモシュ・ログリッチ photo:RCS Sport

トゥルッロという伝統的な家屋が美しいアルベロベッロ photo:RCS Sport
ジロ・デ・イタリア第4ステージ コースプロフィール photo:RCS Sportアルバニアでの3日間を終えた選手たちは、移動日を挟み、イタリア本土に上陸。第108回ジロ・デ・イタリアは「長靴の踵」であるサレント半島から再スタートを切り、その舞台はアルベロベッロからレッチェに向かう189kmの平坦路だ。

カテゴリー山岳は序盤の4級山岳だけ。終盤はレッチェに設定された12kmコースを2周し、残り500mの鋭角な左コーナーを経て、選手たちはフィニッシュに飛び込む。もちろん予想は集団スプリント。しかし市街地コースにはコーナーやラウンドアバウトなど、トレイン崩壊を誘う要素が点在するため、単純なスプリントバトルとはならなかった。

大会初日に落車し、椎骨を骨折したミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ)ら2名を除く182名がスタート。第3ステージで奪い返したマリアローザを纏うマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)を先頭にした集団からは、フランシスコ・ムニョス(スペイン、ポルティ・ビジットマルタ)が飛び出す。逃げ切りの可能性が低いステージのため追従する選手は現れず、単独でのエスケープとなった。

アルベロベッロのトゥルッリの間を走る選手たち photo:RCS Sport
単独逃げとなったフランシスコ・ムニョス(スペイン、ポルティ・ビジットマルタ) photo:CorVos
下部チームから2024年にプロデビューを果たしたムニョスは23歳のパンチャー。2度目となるジロ出場で最大のアピールチャンスを掴んだムニョスは4級山岳を越え、最大5分のリードを得る。ムニョスが先頭で通過したこの日最初の中間スプリントでは、イェンセン・プロウライト(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が2位を取り、オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)とマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)といった主役候補たちが続いた。

ジロの訪れを町が一丸となって迎い入れる photo:RCS Sport
メイン集団を牽引したのは、それぞれエーススプリンターを擁するアルペシンやヴィスマ、リドルといったチームだった。沿道を埋め尽くすピンク色の旗を振る観客の前で、プロトンでは約10名が絡む落車が発生。ピーダスンやジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)などビッグネームが巻き込まれながらも再スタートを切るなか、ニコラス・ズコウスキー(カナダ、Q36.5プロサイクリング)は鎖骨を骨折しリタイアという悔しいグランツールデビューとなった。

残り104.8km地点に設定されたボーナスタイム付きの「レッドブルKM」を、ニョスが先頭通過した時点で後続との差は3分25秒。プロトンでは直前の登り区間でエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)がアタックし、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)やUAEチームエミレーツXRGの面々がこれに反応する。結果的に、イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)が2位通過で4秒のボーナスタイムを獲得。3位通過のログリッチは2秒を獲得し、タイムロスを最小限に抑えた。

残り56.6km地点で吸収されたフランシスコ・ムニョス(スペイン、ポルティ・ビジットマルタ) photo:CorVos
中間スプリントでピーダスンを退けたオラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:RCS Sport
大会初日に2位に入ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が、エーススプリンターのオラフ・コーイ(オランダ)のためボトル運びをするシーンも。そして残り56.6km地点でムニョスは吸収され、集団はこの日2度目の中間スプリントへ。フィニッシュスプリントの前哨戦となった争いは、コーイがピーダスンを抑えて1位通過し、3位にはカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が入った。

そして集団は、フィニッシュ地点レッチェの市街地に入っていく。スプリンターチームだけでなく、総合上位勢も加わった激しいポジション争いが繰り広げられるなか、ラウンドアバウト手前の中央分離帯が落車を誘発する。残り22km地点で発生したこの落車ではムニョスとセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、リドル・トレック)が地面に倒れ、両名はレースに復帰して完走したものの、クラーウアナスンは左手首の骨折によりリタイアとなった。

アルバニアではリードアウトとして活躍した総合エース、ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)が遅れる場面もありながら、チームメイトのアシストによって集団復帰する。そして最終周回の鐘が鳴り、総合チームは3kmから5kmへと延長された救済措置区間を目指す。身長198cmのダーン・ホーレ(オランダ、リドル・トレック)がピーダスンを集団前方に引き上げ、白いマリアビアンカ(ヤングライダー賞ジャージ)を着るマティアス・ヴァチェク(チェコ)と合流。リドルが集団スプリントへの態勢を整えた。

しかし細い連続コーナーを抜け、先頭で最終ストレートに入ったのはピクニック・ポストNLだった。

スプリント勝利したカスペル・ファンウーデン(オランダ、ピクニック・ポストNL) photo:RCS Sport
共にタイムトライアル用のヘルメットを被るブラム・ウェルテンの背後から、カスペル・ファンウーデン(共にオランダ、ピクニック・ポストNL)が先んじてスプリントを開始。これがグランツールデビューの23歳はトップスピードに乗ると、右から迫るピーダスン、左から追い上げるマイケル・ゼイラート(オランダ、チューダー・プロサイクリング)に並ぶことを許さない。そして猛追するコーイも退けたファンウーデンが、先頭でフィニッシュラインを駆け抜け、雄叫びを上げた。

グランツールデビューで見事勝利を飾ったカスペル・ファンウーデン(オランダ、ピクニック・ポストNL) photo:CorVos
2023年に下部チームから昇格し、プロ3年目で掴んだ念願のグランツールデビュー戦で結果を残したファンウーデン。「これは僕1人で達成したことではなく、チーム全体で掴んだ勝利。残り200mまで風を一切受けることなく、全力で得意なロングスプリントを披露した。今シーズンは良いリードアウトを受けながらも勝利を逃していたので、こうして彼らに報いることができて本当に嬉しい」と、ファンウーデンは仲間への感謝を口にした。

2位にはコーイが入り、3位はゼイラート。マリア・ローザを着るピーダスンは終盤で一時集団から遅れたことが響いたのか、スプリントが伸びずに4位終わり、ボーナスタイム獲得を逃した。また、5位でフィニッシュしたマックス・カンター(ドイツ、XDSアスタナ)は、スプリント中の斜行により103位への降格処分が下されている。

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