WR-Vは女性ユーザー多し
導入当初からホンダ関係者が「とにかく競争力のある価格設定にしたい」とコメントしているように、WR-Vはスクエアで分厚く力強いSUVテイストのエクステリアと、ゆとりあるキャビン、しっかりと荷物が積めるラゲッジスペースを有しながら、250万円前後の手が届きやすい価格を実現した。ただ、その割り切りは、フロンクスの登場によって揺らいだ。フロンクスが思いのほか“装備マシマシ”できたからだ。
WR-Vの一部改良モデルでは前述のとおりZとZ+グレードのインパネ下部とリアドアのインナーパネルにソフトパッドを追加し内装の質感を向上させた。これはもともとのインド仕様車「エレベイト」には採用されていたもので、今回の一部改良のための新規ものではない。とはいえ、導入当初はコストを優先し省かれた、あるいは「なくてもイケるか」と考えられたアイテムだ。これは「まずはできるだけ安く」から、「安くても見栄えと質感の底上げを図る」への方向転換であり、同時にさらなる商品力のアップが定番特別仕様車のいち早い設定につながったはずだ。
もっとも、WR-Vにブラックスタイルが追加設定されるのは既定路線。それが導入からわずか1年で設定されたというところに、ホンダの「フロンクスではなくWR-Vに注目してもらいたい」という強い意志を感じるのである。
WR-Vのユーザープロフィールを聞くと、その約半数がこれまでホンダ車以外に乗っていた新規顧客で、8割近くが純ガソリン車からの買い替えであるという。購入動機の1位がスタイルや外観デザインを挙げ、2位に車両価格が入っていた。ミニバン卒業組の子離れ夫婦を筆頭に、20代から30代の女性からの支持も多いそうだ。「力強いデザインが特徴のSUVにこの価格で乗れるのなら」が決め手になったことは想像に難くない。ちなみに「ヴェゼル」よりも女性比率は高いという。
発売から約2週間で1万台の受注を突破したフロンクスの目標販売台数は月間1000台。対するWR-Vは、導入当初の目標販売台数は月間3000台である。フロンクスは2024年10月16日の販売開始から2025年3月までの約5カ月間の新車登録台数が目標を軽く超える1万0792台、WR-Vは2024年4月から2025年3月までの新車登録台数が3万9069台と順当である(いずれも自販連調べ)。果たしてこの対決の行方やいかに。両モデルとも「インドでつくっていて大丈夫?」と聞かれることが多いけれど、フロンクスはまぎれもなくスズキの、WR-Vはしっかりとホンダのクオリティーを感じる仕上がりなので、ご安心を。
(文=櫻井健一/写真=本田技研工業、スズキ/編集=櫻井健一)
スズキ フロンクス 公式サイト
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